マリモ:夢
雰囲気変わるかも。マリモがはっちゃけてるのは夢だからです。
「姉ちゃん、逃げるんだ! やつらは本気だ! マリモ狩りだ!」
なにか、体がとても暑い。ん、りゅーちゃん? 私の弟の流人ちゃん、りゅーちゃんが慌てている。
どうしたの、そんなに慌てて。大丈夫だよ。
りゅーちゃんは昔から怖がりだねえ。恋人もできたのに落ち着きがない。ぷくくー。
「ねーちゃん……俺だって男だよ? プライドあるんだよ? 男のプライドがさ」
時代遅れだよりゅーちゃんは。でも熱血なりゅーちゃんが嫌いじゃないな。
でもなんか、りゅーちゃん? 女の子になってない?
「そんなのどうだっていいから! ほら、マリモ狩りがそこまで来てるんだって!」
「Sランク冒険者としてマリモを狩ってみせるぞー!」
「シータさん?! おのれ、うらぎったか!」
「せんせーモフっていいから! モフっていいから!」
「ガウルさんも?! モフりの対価に常世の果実は望みすぎじゃないかなぁー?!」
なんか、シータさんと、ガウルさんも襲いかかってきた。ガウルさんのあとからモフられメンバーも飛び出してきて踊り出す。シュール。
ん、夢だ。夢なのがわかるけどなんだこのリアリティー。いったいなにが起こってるんです?
「マリモ先生! 美味しそうです!」
「シータさんが肉食獣! こわひ!」
「先生も肉食じゃないっすかー! 土竜鳥が鳴いてますよー!」
「クッキリポーン!」
「土竜鳥の鳴き声がひどい!?」
ガウルさんは土竜鳥にまたがっている。だが土竜鳥、お前は唐揚げだーっ!
今回はジューシーさを生かすように黒胡椒と塩だけで味付けしてある! シンプル・イズ・ベストは料理の鉄則だー! れっつ、くっきん! 三分間!
ところでなんでガウルさんは白いゴスロリドレス着てるの?! わははっ! このゆめたのしーな!
あ、ドーナツも召喚しよう。今回はリングドーナツしか召喚できない制限を撤廃して、まんまるなあんドーナツを呼ぶ!
リングドーナツでもクルーラーならアンコと生クリーム挟んでもいいとは思うけどっ!
あー、この夢いつ覚めるのー?
嫉妬深いリングドーナツが飛んで襲ってくるー!
「我輩も活躍したいですぞーッ!」
「ドーナツがタキシード着て襲いかかってきたー!」
逃げた先は崖。いつしかクリスマスに食べたアイスチーズケーキを三メートルくらいの直径のホールで用意して全身でダイブだ! 夢なんだからこれくらいいいよねー!?
「だからねーちゃん、マリモ狩りが来てるんだって! バンパイアは皆殺しだろ!」
「ん? なんでバンパイア?」
そういえば昨日は魔人とデーモンが違うって話でバンパイアの話が出てたなー。
だからなんでバンパイア? りゅーちゃんはバンパイアが嫌いなの?
「あいつらは糞だ。人間を食料とか道具としか思っていない」
「りゅーちゃん?」
どうしたんだろう。りゅーちゃんはこんなに怖い子ではなかったはずなのに。
そもそもりゅーちゃんは男の子なのに、目の前の子は小学生くらいの女の子なんだよね。
りゅーちゃんはロリコンじゃなかったはずなんだけどなぁ。りゅーちゃんの恋人はおっぱいの大きいあずさちゃんだし。私は小さいよ。ごめんねりゅーちゃん。
あれ、二人はどうなったんだっけ。ああ、私が入院したから、二人は上手くいかなくなって。
ごめん、ごめんね、りゅーちゃん。
「そんなことよりマリモ狩りだ! ハッスルハッスル!」
「意味が分からないよ?! あれ? モフられし者の狼獣人のムーグルさんじゃないですか! そんなキャラだっけ?」
「確かにマッチョですけどそんなに積極的じゃないです。だから夢の中くらいはっちゃけたいようです。俺もです」
「どうしたのキックルさん?! 無口なネズミ獣人だったのにおしゃべり! モフられし者のみんなが変なもの食べたみたい?」
「夢を支配する羊魔法! 相手は死ぬ!」
「メームーさんもおかしいよ!?」
どうも夢を見ているのはわかるのだが、最近知り合ったような人がキャラを掴めなくて暴走してるのは夢だからありがちなんだけど、
なんでりゅーちゃんは女の子になってるの? うーん、深層心理で妹が欲しかったとかだろうか。
変だなー。りゅーちゃんが恋人と上手くいってるのを、私はすごく嬉しく感じていたはずなのに。
それこそ深層心理ってこと? 二人のことをよく思ってなかったのかなあ?
とにかく。
「マリモ狩りじゃあああー!!」
「シータさんは正気に戻るべき!」
「マリモ狩りで明日からSランクなんじゃああああっ!!」
「シータさんの欲望が形になっているの?!」
これ、デーモンが絡んでるとかじゃないよね。
それにしてもおかしな夢だ。そもそもシータさんはもうSランクなんだから私を襲う意味ないしね。
潜在的な私の恐怖が形になってる可能性はあるな。
そうだよね、シータさんクラスの人が私を狩ればあっさりSランク、となれば、緑竜さんと戦いつつ緑竜さんは倒さずにお婆ちゃんから常世の果実を採って逃げる、そんな危ないことする必要ないんだもの。私なら果実くらいちょっと痛いけどあげるもん。
怖いのか。この世界が。
いつゴブリンやオークやオーガやデーモンや、戦争や呪いに蹂躙されるかもわからない、
病に冒された元の世界ではないのに、相変わらず襲ってくる、この死と消滅の恐怖が。
今も、私は恐れている。
すべてを失った、あの病を。
「姉ちゃん、大丈夫だよ。俺が守ってやるからさ」
「りゅーちゃん……」
でも、りゅーちゃんには守らなければならない人がいたじゃないか。
どうして、りゅーちゃん。あなたは……。
……はは、ひどい夢。とりとめもなく、大切になった人たちが襲ってきて。
そんなこと絶対にないと思ってるからどこか可笑しくて。ちょっと楽しいとすら思ったのに。
なぜ?
りゅーちゃんは、私の最愛の弟は、愛を捨ててしまったんだろうか。
こんなのは夢だ。ただの。
この物語は私の苦手なものを入れてます。
ドーナツが大虐殺!
とか、
ドーナツが隕石!
とか、
ドーナツがゾンビ!
とか、
うん、さすがにその展開はないかな。
まずドーナツが活躍しません。
ドーナツ「!?」
嘘ですよ。




