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アリスンとの合流

 喫茶店で部活の会議をして、ハロウィンや学園祭に向けての買い物をしてから六日。今週はテストがあり基本部活は禁止だったが、直近の関わる行事に向けて毎日三十分ずつは部室に集まり準備をした。

 ちなみに、僕のテストの出来映えは可もなく不可もない。せいぜいが理数系ではなく、英語も苦手なくらいで六割は正解しているくらいの手応え。うん、いつも通り。

 なにげに勉強出来るように見えるらしいけど、身体を動かす方が好きだし得意だからね。

 僕の衣装は元の素材となるレオタード部分に黒のフェイクファーを貼り合わせるだけだからすぐに完成した。チュチュ部分は黒なのでそのまま使用。

 あとは動く耳と尻尾を見せて貰って着けた、いや生えたけど恥ずかしいやらなんやら。動いてないと生えてることを忘れる位には違和感が無くなったけども。よく買えたねって思うし、よく僕が生やすと思ったね。

 商品名は長ったらしい漢字ばかりのジョークアイテムらしいけど、技術の無駄遣いって言うのかな。いまなら、嬉しいけども。

 【脳波感知駆動式頭部装着型ー獣乃耳・犬(黒色)】と【脳波受信駆動式臀部挿入型ー獣乃尾・犬(黒色)】という難しい名前で基本色が黒色で耳も尻尾も先端は白色。

 尻尾は犬耳の方から脳波を受信し、さらに体温と脈拍測定で補助するやたらハイテクなもので、どちらも脳波の揺れによって感情で動くようになっているらしい。VR機器の機能と同じ。ちなみに、らしいと言うのは生えてる間は高頻度で尻尾が忙しなく動いているから。嬉しいけども、こう動きっぱなしだと自分が思う以上に歓喜してるのかなって思う。みんなニマニマ見るし。

 どちらも小型バッテリーで六時間から八時間も動くみたいなので、ハロウィンでも学園祭でも生えっぱなしでいるように言われた。予備バッテリーもあるみたいなので、いざとなれば交換して一日中でも動くみたい。学園祭の宣伝も兼ねているが、隙間時間での公演なので何回も公演するし着替えが大変なので皆も一日中衣装のまま過ごす。迷子センター的な場所でも、その方が子どもの受けが良いらしい。

 ハロウィンも当然最初から最後までそのまま。ケーブルテレビでの広報や商店街やスーパー、保育所や学童保育施設への宣伝やビラ配りにもハロウィン使用の衣装でいることが多く、来週半ばからほとんど放課後や休日はこの衣装で過ごすことになる。

 それにしても、リアルでも首輪は落ち着くしリードを引かれると安心するってことはもうペットとして完全にアリスンに躾られてるね。だから、耳も尻尾もこんなに嬉しいって感情を出しているのは仕方がない。嬉ションだけはしないように気を付けないと。

 


 そして土曜日。ようやくアリスンとプリハで会うタイミングがあって、僕の家で久しぶりに顔を会わせた。

 ログインする度にお互いにメールを送りあっているけど、一緒に遊ぶタイミングがなかなか合わないのが辛い。もっとペットとしていたいのに、プリハはプリハで里長の仕事が何気に多いんだよね。


「なんだか大変みたいだね」

「うん。承認したり、開拓の相談とか会議とか。孤児院はプレイヤーと棟梁が優先してくれたからなんとか完成したけど」


 僕がログインしていない時の停滞が怖いので、移民団代表だったキンリーに頼んで里の副長になって貰った。これである程度は僕がいなくても開拓は進んで、プレイヤーの特に生産職が頑張って孤児院は完成した。

 今後も増える事を考えて予定よりも大きな建物で、一階がレンガ作りで2階が木造。さらに屋根裏収納付き。

 一階が広い食堂とリビングの続き間。男女の大浴場に三歳までの子どもと当直となる大人の部屋。各大人の四畳ほどの寝室と院長の執務室。

 二階が四歳から六歳までの六人部屋に七歳から九歳までの二人部屋。十歳からの一人部屋とそれぞれ数部屋ずつ。拡張を考えて日中の室内遊びは渡り廊下から行く遊戯室や図書館となる二階建ての別棟。外には畑以外に砂場や鉄棒、滑り台やジャングルジムなどの遊具と花壇に囲まれた園庭では走り回れる。


「リンゴに案内されたからだいたいは見て回ったけど、まだまだだって言ってた」


 アリスンが獣人領に来て早二週間。その間は約束通りに僕の家で暮らしていたけどプレイ時間が短いアリスンとはすれ違いばかり。そこでリンゴたち見守り隊に時間があれば相手になって欲しいと頼んでいた。

 人間領から獣人領へ移動した時に顔合わせは済んでいたので、みんな協力的に相手になってくれた。まあ、アリスンも始めに馴染むならリンゴたち会ったことのあるプレイヤーの方が良いと言ってくれたしね。

 そこで孤児院の中も見学して意見を聞かれたらしい。アリスンはとくに言わなかったけど、このままだと複合型遊園地になりそうな雰囲気だったらしいので、後でキンリーや院長に報告して皆に自重を頼まないと。

 現在、ギルドハウス建築様に土地は販売していないけどソロプレイヤーやギルドの先発組が個人用として土地を購入している。

 ギルド先発組は土地利用が心配だけども全部が全部拒否できないし、今は暫く招待制に切り替えている。

 それと言うのも、区画計画無視で土地販売をしつこく言ってきたプレイヤーや同じギルドが個人用に人海戦術で隣接地を購入しようとした件が問題になったため。

 やはり、プレイヤーが増えるとマナーが悪い人も出るよね。

 今は招待制でも審議もしているけど、基準が問題。そこで、生産者の里にしようと言う案さえある。素材などは、現在個人やギルドでクエストを対象から受けるシステムだが、小説などのように冒険者ギルドみたいなものを役所に併設して一括で受託報告するシステムを検討している。

 リンゴからそんなことまでアリスンに話が行っているのには驚いた。


「リリの飼い主なら里の中心の事に触れる機会多いだろうって」


 里の案内がてらに色々と意見を聞かれたらしい。キンリーすらリリの飼い主ってことで一目置かれてるとか。

 そりゃ、アリスンは年齢にそぐわない利発さや落ち着きが見られる時があるからね。

 そして、僕やアリスンのテイマーとして動物が多く自然や温泉も豊かなので人間領から他のテイマー、エルフ領からエレメンタラーも多く訪れてお互いに交流できる土地となって、さらに動物や精霊が増えている。精霊にとっても浄化した土地なうえに【守護獣】としての特性で聖地のような居心地よい土地柄になっているみたい。

 そこで、アリスンには使役職の相互扶助的な場所の管理職はどうかと聞いたけど、即断拒否の結果になった。

 思い付きで動物ふれあいランドみたいなのが浮かんだから仕方がない。お互いに交流しながら、バイトで他のプレイヤーから有料でアニマルセラピーが出来る施設。良いと思ったけど、キンリーに持っていこう。


「リリはどうしたいの?」

「え? うーん、のんびりリラックスできる場所かな」


 この里のきっかけは孤児たち。故に孤児はこれからも受け入れる。心を癒し心身とも安心して成長できる場所が一番の目標。

 ここは温泉に薬草園と心身に良い物があり、家畜や僕含めて動物がいるのでアニマルセラピーにもいい。そこにテイマーやエレメンタラーの協力があれば尚良いように思う。

 次にダンジョン。ダンジョンマイスターの棟梁とマスターの僕でダンジョン特性がポイント内で弄れる。戦いならば概存の運営が用意したダンジョンがある。ここは薬草園や家畜がいて棟梁たちの準拠点にもなりつつある。ダンジョンを素材中心に変えれば、開拓目当てで集まった生産職が喜ぶ。戦えなくても役所で依頼を出してやり取りといちいち受け手を探す必要を減らす事が出来れば良い。

 これは要らないが、色物プレイヤーなど。僕の【ペット】やオリヒメの【ロリコン】、リンゴの【ストーカー】にヴィーナスの【露出狂】。そしてアリスンの【幼い調教師】など性格やプレイスタイルがマイノリティな者たちやギルド。行き場のない、または少ない者の受け皿。トラブルも増えるだろうけど、今現在はお互いに理解は出来なくても共生は出来ている。


「まずは孤児たちが安心出来る場所。プレイヤーとしてはテイマーやエレメンタラーの交流の場、生産職の発展場、マイノリティなプレイヤーやギルドの受け皿」

「……なら、それを目指せばいいんじゃない? 明確な特色になるし、さ」


 アリスンは本当に小学生なのだろうか。僕よりも断然大人だ。たまに小学生らしいことはあるけど、それよりも思考が大人でいる時間が多く感じる。天才とかなのかな。


「受け入れをそう絞れば……完全にそれだけはダメかもだけど。それで招待制の基準にして、そしたら意見も纏まりやすいかな」


 アリスンと合流して遊びたいけど、里のことばかりで申し訳ない。住民がいる以上停滞は許されなくて、でもなかなか纏まらない。当初の区画計画からも変更が出ている。

 悪いと思いながらもつい相談しちゃう。アリスンが僕より賢くてつい頼っちゃう。キンリーたちよりも話しやすく、安心もする。

 でも、アリスンはどうだろう。せっかく合流したのに、遊べずに里の開拓に協力してもらう形になっている。キンリーたちにも意見を聞かれる状態。


「ねえ、アリスンはここに来て楽しい?」


 獣人領に来たのに遊べず、里の事ばかり。漸く合流してもこうして相談をしてしまう。

 ふとした時のアリスンの眼は人間領にいた当初と変わらないように感じる。どこか寂しげで違う所を見るような眼。


「楽しくはないかな。でも、開拓は面白いし、今しか出来ないから大変だけどやっぱり楽しいのかな。じゃないとずっとここに居ないし。それに……」

「それに?」

「リリがこうやって頼ってくれるのは嬉しいからね。私に踏まれて悦ぶリリとは違う一面も見られて、やっぱり楽しいみたいだね」


 そうして笑いながら僕の顔を足でマッサージし始める。椅子に座ったアリスンと、床にお座りしている【仔犬化】している僕。顔はちょうど良い位置にあるからね。

 結局考えるのが馬鹿らしくなるほど、アリスンといられるだけで僕は幸せだし里のこともやりたいようにやれば良いと諭された。

 どっちが大人かは見れば分かるし、僕はペットでアリスンは飼い主。その繋がりが確かならアリスンも満更じゃないらしい。

 嬉ションしても止めてくれず、アリスンは強制ログアウトまでリアル時間二時間、プリハ時間で四時間も足で踏んだりつねったりとマッサージを続けた。

 「リリのバカ顔見れただけでもスッキリ」と言って居なくなったけど、骨抜きにされた僕が動けたのはさらにプリハ時間で二時間後だった。【マーキング】によって消えない池に浸かりながら。そして【おねしょアーティスト】によってこの状態が動画と写真に自動保存された。

 のちに高額でこのアートが購入さるとは恍惚な表情のLiLiは知る由もない。

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