45 宇宙戦争
夢の世界を強烈な光が包み込み、次の瞬間には草原が灼熱の火の海に変わる。
宇宙人の攻撃だ。大気圏外から、特大のビームのような物を地上に放ったのだ。
その攻撃で辺りは炎と煙しか無い空間となり、煙が落ち着いて来た頃には、純菜と蒼正が居た場所には巨大なクレーターが作られていた……
「もお~……なんでこんな時に~」
「アレだ。またフラグ踏んじゃったね」
その時、苛立つ純菜と呆れ気味の蒼正の声が聞こえた。場所は、クレーターの中心。そこだけ不自然な円柱が立っており、その上には無傷のベッドで抱き合う二人の姿が見えて来た。
「フラグって、大気圏外からの攻撃のこと? これで回収したって事か~……」
「それもあるけど、前にもあったじゃん? イチャイチャしようとして邪魔されたでしょ? アイツら、リア充爆発しろとか思ってんだよ」
これほど凄まじい攻撃をされたのに、二人はどうでもいい会話。甘い一時を邪魔されたから、ムカつきが勝るらしい。
「それにしても、このバリア凄いね。熱も感じ無かったよ」
「そりゃ二人で考えたバリアだもん。純のアイデアが無かったら、最初の光で目が潰れてたんじゃない?」
ここでようやく二人が助かった理由の説明。元々蒼正は、大気圏外からの攻撃を懸念していたので、無防備でいる訳が無い。
そこで用意したネタは、SF漫画に出て来るようなバリア。宇宙人にバレ無いように、透明のバリアで辺りを包んでいたのだ。
ただし、バリアだけでは様々な不安がある。強度が足りるのか、光や音や放射能でもダメージを受けるとか、熱を防が無いと耐えられ無いとか、毒が含まれていた場合は空気をどうするか等々。
それらを耐えられるように各種対策をしたバリアを何枚も重ね、極め付けは時間停止させたバリアを真ん中と一番内側に仕込み、空気を作り出す謎機械も設置。
その結果は、一枚もバリアは割れていないので、その他のバリアは無駄になっている。
「そろそろ煙が晴れそうだね」
「二射目に備えよっか」
しばしお喋りしていたら上空に昇った煙が晴れて来たので、二人は次の準備。しかし完全に煙が晴れても中々攻撃が来無いので諦めたのかと話をしていたら、辺り一面が光に包まれた。
「う~ん……リフレクト作戦は失敗っぽいな」
「ほとんど押し潰されちゃったね」
蒼正が狙っていたのは、魔法でビームを跳ね返して大気圏外にある宇宙船を狙うこと。
太いビームを少ない面積で跳ね返しては、後から届くビームとぶつかって搔き消されるし、最後の方になんとか真っすぐ跳ね返ったビームも威力が無いから、宇宙空間に届く前に消滅してしまったのだ。
「仕方無い。プランBに移行しよう」
「プランBって言いたいだけでしょ?」
「もうその話は散々やったでしょ~」
蒼正が格好付けて言った台詞、純菜に茶化されたので台無し。作戦を考える時も、第二案の呼び方を茶化されたので蒼正は涙目だ。
ただ、そんな事をしている時間も無いので純菜はすぐに謝って、次の準備。自分達に似た人形をベッドに置いてから魔法陣の上に立つと、二人の姿は消えるのであった……
「アレじゃない?」
「デッカ……」
純菜が指差し蒼正が驚いている場所は、宇宙船の中。そう、プランBの内容は、戦艦のような宇宙船に乗って、宇宙人の乗り物を直接叩く作戦だ。
先程の魔法陣はテレポート装置で、地球の裏の宇宙空間に待機させていた戦艦の中に瞬間移動したと言う訳だ。
しかし、宇宙人の乗り物はなんとかドーム何十個分も有りそうな鉄色の球体。用意した戦艦より数百倍は大きいので、純菜は不安になる。
「これで勝てるかな?」
「どうだろう……宇宙空間の戦いなんて初めてだから、やってみない事には分から無い。とりあえず主砲のイメージだけ強化して、最悪、あの中で暴れてやろう。白兵戦なら僕達に勝て無いよ」
「うん……分かった!」
純菜の戦意が戻った所で、戦艦は全速前進。球体に近付くと光の線が地上に向かって行ったので、蒼正達はまだ気付いて無いんだと笑ってる。
そうして主砲の射程に入ったら、蒼正と純菜は一緒のレバーを握って同時に引き金に力を入れた。
「「行け~~~!!」」
戦艦の先端から飛び出す青白い光。その聖属性の乗った太い光線は、球体のド真ん中に当たって火花を散らした。
「わ~。アレ、効いてるよね?」
「うん。純はそのまま撃ちまくって! 僕は他の砲台で撃ちまくる!!」
「うん!」
それを機に、戦艦は前進しながら一斉射撃。主砲の太い光線に加え、いくつもある大型の砲台からも青白い光線が乱れ飛ぶ。
その光線が着弾して炎を上げる中、球体は制御不能になっているのか反撃は来無い。事実は、主砲に使ったビームのせいでエネルギー不足になっているから。
地球には宇宙空間での戦闘が出来る兵器が無いから、反撃して来るとは想定していなかった宇宙人の大誤算だ。
そのまま蒼正と純菜が乱射し続けると、球体はボロボロになり、次第に地球の引力に引き寄せられ、大気圏に触れると真っ赤になって墜落した。
「これ、現実だと大惨事になってたね……」
「うん……中国に大穴開いちゃったね……」
球体は地上衝突まで質量を保っていたからには、地球は大ダメージ。大気圏からでも見える大きなクレーターが作られ、雲が地球を覆ったので、氷河期が来るのでは無いかと顔を青くする蒼正と純菜であった……




