38 侵略部隊
蒼正と純菜が恋愛を先に進めるような話をしていたのに、空気を読まないティラノサウルスみたいな宇宙人が乱入して来たのだから、戦闘は回避不可能。
まずは蒼正が相手をして情報を引き出す。
「もう本体は到着したって事か?」
「まだだ。だが、この星の時間で計算すると、あと二十日程で着くだろう」
「ふ~ん……前回のヤツを倒してから誰も襲って来ないから、もう諦めたのかと思っていたよ」
「そんな訳無かろう。先遣隊の次は侵略に特化した部隊になるのは、この星でも歴史があるのでは無いか? つまり、我々は、武闘派の集合体だ! 実力も数も先遣隊とは比べる事も出来ん!!」
宇宙人は面白いくらい欲しい情報を教えてくれたので、蒼正は純菜を見る。純菜もこれだけ情報が手に入ったらもういいと頷いた。
その覚悟の目を確認した蒼正は、腰に差した剣を抜いて前に出た。
「もう一度聞くけど、僕達も仲間に入れてくれない? 役に立てると思うよ?」
でも、負け戦はほぼ決まっているので、自分から軍門に降ると胡麻を擂る。
「確かに力は認めるが……断る! 我々は仲間を傷付ける事は御法度だからだ!」
「やっぱり無理だって?」
「もっと殺したら私達の和解案に乗ってくれるんじゃ無いかな?」
「それしか無いか~」
断られては仕方が無い。今度こそ本当に蒼正と純菜は覚悟を決めて武器を持つ手に力が入った。
「貴様らの攻撃手段は知ってるぞ! これなら豆鉄砲等、効っか~~~ん!!」
それと同時に、宇宙人に黒い靄が百体程くっ付いて、みるみる内に巨大な怪獣へと変貌した。
「どうだ? この巨体は! クハハハハ」
もう勝負有りと勝ち誇る宇宙怪獣。大きな声で笑い続ける。
「おお~。怪獣だ。すごっ」
「そういえば怪獣物なんかやった事無かったね」
「純は流石に楽しめないと思って」
「う~ん……恋愛要素があるなら……」
「小さな男の子と大きなお友達用だから、無いかな?」
しかし、二人は驚きもしないでほのぼのした会話。声が小さい上に離れているから、宇宙怪獣には聞こえ無いらしい。
「それでどうやって戦う?」
「僕が押さえるから、純は足から削ってやって。デカイのはまだ取っておこう」
「オッケー!」
ここは夢の中。ならば、想像でなんとでもなる世界。
「ジョワッ!」
っと蒼正が叫ぶと、体がみるみる大きくなり、巨大な聖騎士の登場だ。
「な、なんで貴様まで……」
「さあ? 出来る物は出来るとしか言いようが無いね。てか、隙有り~!!」
驚く宇宙怪獣に蒼正が説明したのも束の間。喋っている場合じゃ無かったと、巨大な剣で袈裟斬りだ。
「グギャ~~~! 汚いぞ~~~!!」
「グッ……重っ……」
その痛みと怒りが合わさり、次は宇宙怪獣の手番。体当たりから引っ掻きに噛み付き。どの攻撃も蒼正は大盾で守れているが、体重の設定が甘かったから押し込まれる。
「ホーリーサークル! グランドクロス! 聖女の息吹!」
そんな中、純菜は横からチマチマ攻撃。聖属性の魔法を宇宙怪獣の右足に集中させ、たまに蒼正に聖属性の魔法を付与。
宇宙怪獣は最初は見向きもしなかったが、次第に嫌がる素振りを見せ、純菜が居る位置に視線を落とした。
「なんであんな豆鉄砲が……」
「また隙有り~~~!」
「グギャ~~~!!」
その隙に体重と態勢を整えた蒼正の斬り付け。純菜の前に立ち、宇宙怪獣を近付けさせ無い。
宇宙怪獣は二人の息の合った攻撃でほぼタコ殴り状態。チマチマした攻撃で右足が使い物にならなくなってからは、反撃もままならず攻撃を受け続ける宇宙怪獣であった……
「小さくなったね~?」
「百体分のエネルギーが消費されたって事かな?」
二時間も攻撃した結果、宇宙怪獣は人間サイズのティラノサウルスまで縮んでしまって虫の息。純菜と蒼正は分析しながらトドメを刺さんと近付いた。
「百体では足り無かったか……だが、我々はいくらでも居るぞ。今回のデータも送信済みだ」
「わ~。怖~い」
「流石に倍も居たら厳しいな~」
「我々の仇は必ず仲間が取ってくれるからな~~~!!」
「「もういいよ」」
ラストは、偽情報を掴ませてから合体魔法。その聖なる光に包まれた宇宙怪獣は塵となって消えるのであった。
「さっきの、ちょっとわざとらしかったかな?」
「そういうの疎そうだから、大丈夫じゃない?」
戦いが終わると反省会。かなり時間が掛かったから、純菜も蒼正も疲労があるみたいだ。なので、ファミレスを再現してその中でも喋り続ける。
「と、ところで……あの話、今からする?」
話が途切れた所で、宇宙人に邪魔された初体験の話を純菜から言い出したから、蒼正はドキドキし出した。
「も、もういいってこと?」
「う、うん……初めては現実がいいけど……」
「だよね。いつにする? って、こんなんじゃ雰囲気最悪だね。ゴメン!」
「まぁ……私もいつにするなんて言い出せ無いけど……」
双方合意は取れたけど、日取りを決めるのは難易度が高いらしい。気分が高まった時と蒼正は遠巻きの案を出してみたけど、場所が外だとどうなるのかと純菜に反論されて、決定的な日取りは決められずに目覚めてしまうのであった。




