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35 ユーリジアからの脱出

ペガサスとユニコーンに声をかけ、仲裁に入ると。今度は私の肩にいるリンを見て一言。


「あらっ? 不思議な感じと匂いは『愛し子』だったからなのね」


「おぉ、やはり愛し子だったのだな」


「私達の里で休んで行って?」


「アンジュ、お言葉に甘えようではないか」


「うん、宜しくお願い致します」


フェンリルの背にルルとグリも一緒に乗り、リンは私の肩に乗って足をブラブラさせている。


その様子を見たオスのユニコーンが私に話しかけて来た。


「レディ、俺の背に乗らないかい?

フェンリルなんかより乗り心地が良いぜ……痛てぇーー! ハニー? もう何もしません。許してーー!」


白馬の追いかけっこ……白馬ではなくてユニコーンだね。


喧嘩するほど仲がいいって言うし。


追いかけっこのあとはお互いの首の部分をスリスリしてる。ラブラブだ。




霧がかった中に入ると、別空間のような感覚がしたが、これも結界のようだった。


私達はペガサスやユニコーンに、見たことはないけど美味しそうな果物と透き通るような水。


私は透き通るような水を一口飲むと……甘くて美味しい!


じゃあ果物は……。


「甘ーーい! お水も果物も甘くてほっぺが落ちそうになっちゃったよ」


「お口に合って良かったです。今日はここでゆーーっくりと体を休めてくださいね? 分かりましたね、フェンリルさん!」


「おいっ…………あ、あぁ……」


フェンどうしたんだろう?


ユニコーンとペガサスがいない時にこっそり聞いてみよ。それにしても、なんだか眠い。眠くて……まぶたが……。


リン、ルル、グリも一緒に眠ってしまった。眠ったあとのことは覚えていないけど……フェンはどうしたんだろう。眠ったのかな?


ふわふわした感触と起きろと急かされているような感覚が混ざり、私は重いまぶたを無理矢理開けた。


「フェン?」


「アンジュ!! 良かった! このまま目覚めなかったらユニコーンのオモチャにされるところだったぞ……言いにくいが、あれから6年もたっている」


「ろ、6年!」


「大きな声を出すな! アイツらに気付かれる前にユーリジアを出て、ポーラスカへ行くぞ」


「アンジュ、大きくなってる。凄く可愛いよ」


「フェン、気付かれずに脱出出来る?」


「ふん、お易い御用だ。乗れ! 行くぞ!!」



私達はペガサスとユニコーンが眠ったと同時に、霧から抜け。ポーラスカまで休みなく進んだ。


ここがユーリジアとポーラスカの国境。


ここを出れば、ユニコーンとペガサスは追っては来れない。ユニコーンとペガサスはそういう掟があるのだとか。




後ろを振り向かず、フェンにしがみついたままポーラスカへ無事に到着した。


そして気になる私はというと12歳になっていた。アイテムボックスから鏡を出して覗き見ると、これが私なの?


6年たってるってことは、みんなは?


「ルル、お願い王宮のベルに! 早く!!」


「アンジュ落ち着いて。私達はアンジュが眠らされていた間、毎日連絡とってたから大丈夫だよ。ウィリアム王子様も変わりなく大丈夫」


「アンジュが心配なのは、大好きなウィリアム王子様のことなんでしょう? 別世界から無断で侵入して来た聖女とか呼ばれてる女が気になるんでしょ?」


「うん、気になるから声が聞きたいし。ウィリアム王子様の口から聞きたいの」


私は真剣な表情でルルとリンにお願いをした。


ルルは「いいよ」と一言。


「ベル、ウィリアム王子はいる? アンジュが目覚めたよ」


「アンジューー! 父様だよ。体は大丈夫か? ユニコーンに酷いことされていないか? 俺の大事な娘に……いでぇ……」


きっとアナお祖母様かシャル姉様になにかされたんだろうなと思っていると。


聞きたいと願っていた大好きなあの人の声が聞こえた。


私は嬉しくて涙がポロポロと自然とこぼれ落ちていく。ずっと聞きたかった。

「面白かった!」


「続きが気になる!」


「早く読みたい!」


と思ってくれたら


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