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12 ブラックウルフ

宙に浮いた人物が笛を鳴らすと。


黒い影は私だけを見、後ろ脚で綺麗な花を散らしながら唸っている。

 

その魔獣をよく見ると巨大なブラックウルフだ。


……ブラック…………ウルフ……。


私を守り、庇って亡くなったお母さんとお父さん。


お父さんもお母さんも血を流して、ツラかったはずなのに亡くなる瞬間までずっと笑顔だった。


私を産み愛情をいっぱい注いでくれた両親を……。


熱い何かが体の中を回り巡っているような気がし、少し目眩がしたがなんとかもちこたえていた。


体内の血液がお湯になったかのような不思議な感覚がする。

 

お父さんとお母さんの事が、ふつふつと脳裏に蘇っている私の顔は、真っ赤で震えながら大声で叫んでいた。


「ゆるしゃない、おはな、ばりゃばりゃ。(ゆるさない、おはな、ばらばら)

おうじ、しゃま、に、こうげき、ゆるしゃない!!(おうじざまに、こうげき、ゆるさない!!)

ケル、ベル、ルル、ぺちん、ちて!!(ケル、ベル、ルル、やっつけて!!)」


「直ぐに終わるぜ……っと!!」


「ぱぁぱ、まぁま……ヒュゥッ、ヒュゥッ……」


私は、ブラックウルフから出ていた黒い穢れのような物を体に吸収すると、息するのが少し苦しくなってきた。


ブラックウルフを操っていた黒いローブの者は空気のように消えていた。


パパと騎士団が駆けつけて来たが、戦闘は終了していた。


ケルベロスは巨大なブラックウルフの喉元をひと噛みだ。


パパは私とウィリアム王子様の安否を確認し、安全な王宮内へ連れて行くよう騎士に命令していた。


「風の精霊のシンリー様、大切な娘と殿下を守ってくださりありがとうございました。

ケル、ベル、ルル、アンジュと殿下を守ってくれてありがとう」


「アンジュがオレたちのことを呼び、助けを求めた。だから守っただけだ」


「……気をつけなさい。

愛し子を亡き者にしようとしている者の仕業です。

魔物はその者の手によって、ここへ誘導させられていた。この先、何度も起こるわ。

だから……気をつけて」


シンリーは気がかりな事だけを伝え、フワリと消えた。


私はシンリーの言葉に、もっと強くなりたいと思いながら、ウィリアム王子様の服を強く握り締めている。


何か話したいのに声が出なかった。


真っ赤になっている私を見てパパは近付き、ゆっくりと背中を撫でてくれていた。


血まみれのお父さんとお母さんのカタキとったよ。


「ヒュゥッ、うっ、げほげほ……。

かたき、よ!!」


「……っ!!

アンジュ……あぁ、敵討ち出来た。えらかったな。

……魔力が不安定だな。ケビン、アンジュをグレンのところへ連れて行ってくれないか?」


「分かりました。

殿下、魔獣がまだいるやもしれません。急ぎましょう」


ウィリアム王子様は頷き、アンジュをギュッと抱きしめてグレン様とみんなの元へ、ケル、ベル、ルルと走り戻った。


魔力が不安定で、顔が真っ赤な私を見たママは、真っ先に駆けつけ抱き上げたあと、ウィリアム王子様と騎士副団長のケビンを心配そうな顔で見ている。


ウィリアム王子様は先ほど起こった事を話した。


「アンジュがバラを見たいと申したので、王族にしか立ち入れない花園に案内し、二人で見ていた時でした。

今まで見たこともないような巨大なブラックウルフが僕目掛けて飛び掛かって来たんだ。

……だが、アンジュが僕に体当たりをして助けてくれて……ケルベロスを呼んだと同時に風の精霊シンリー様が助けてくれました……」


「……はぁはぁ……ゲホゲホ!!」


「もう大丈夫よ。グレンお願い!」


「ヒュゥッ、ヒュゥッ……げほげほっ!」


「アンジュ様、お手を失礼致します。

魔力の巡りが不安定なので、流れを調整しますね。痛くありませんから大丈夫ですよ」


私の息は激しく、真っ赤な顔には汗が流れている。


みんなは私を心配そうな顔でみていた。

 

「急ぎフランクを呼んでください!」


グレン様の相方である。王宮治癒士のフランク様がメイド長のミリアに呼ばれた。


私を見たフランク様は、状況を把握したかのように急いで近付き。私の頭に手を乗せ、グレン様と共に魔力の巡りを調整してくれた。


やっと息が楽になった。


なんだか眠気が……。


「リーディア様、アンジュ様のことでお話が……」


「分かりました。

……アンジュを誰かに……」


「私が自室のベッドへ運び、アンジュの看病をします」


ウィリアム王子様は自ら発言をし、他の者に有無を言わせず颯爽と去っていく。




私は夢の中で地球のパパとママ、ムーンダストでのお父さんとお母さんに会った。


神様と女神様が特別に会わせてくれたの。


今の私はアンジュの体で、年齢は6歳くらいの大きさになっている。



二人のお母さんに抱きつき、私を産んでくれたお礼を言い。


お父さんとパパには、いつも私を大切に守ってくれたお礼を泣きながら伝え。


四人の両親に甘えた。


「お母さん、ママ……私を産んで愛してくれてありがとう。

もう……どこも痛く、ない?」


琴葉(ことは)……いいえアンジュ。私の方こそ娘として産まれてくれて、ありがとう。

私はもう痛くないから安心して」


「アンジュ、私の方こそありがとう。

えぇ、痛くないわ。アンジュ、今は幸せ?」


「うん。凄く大切にしてくれてる」


「その言葉を聞いて安心したわ」


「赤ちゃんであるアンジュを残したことが気がかりだったの。

でも……まだ小さいけれど、成長して幸せそうな貴女を見て安心したわ」


パパとお父さんの方を向き。


「パパ、お父さん……私を愛し大切に思いながら守ってくれて、ありがとう。

今、私は……凄く幸せだよ。もうどこも痛くない?」


琴葉(ことは)! 俺の……いや、俺達の娘に産まれてくれてありがとう。

あぁ、もう痛くないよ。これから困難なことが起こるだろうが、俺達はアンジュを見守っているからな」


「アンジュ、可愛いく成長したアンジュを抱きしめさせておくれ。もう痛くないから安心してほしい。

愛し子としていろんなことがあるだろうが、俺達はアンジュの胸の中にいるから頑張るんだよ」


「うん。私には六人の両親がいるんだもん……頑張るよ。

今は凄く幸せだから安心して。

私を愛してくれてありがとうございました!」



私は手を振り、虹色に照らされている方へと歩んだ。


四人の両親のすすり泣く小さな音が聞こえたが、振り向かずに手を上げて振った。



……夢から覚める……。



「面白かった!」


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