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人魚と姫 〜私達が結婚すると、世界が救われる!?〜  作者:
第五章 メイドたちの絆

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084. 夜の魔力制御訓練

「そんなかんじで、キウイとの練習、とってもむずかしいんだよ〜!」

「ふふ……ルリ、頑張ってるのね」


 懸命に話すルリに、サクラがふわりと優しい笑みをこぼす。

 二人は煌々とした月明かりに照らされながら、柔らかなネグリジェを身に纏い、寄り添うようにベッドに並んで座っていた。


「うん、むずかしいけど……でも、わたし、がんばるから。サクラとずっと、いっしょにいたくて……サクラにはずっと、わらっててほしいの」


 ルリはそう言うと、自分の手を、サクラの手の上にそっと重ねた。

 本当は、この胸の衝動のまま、サクラの身体をめいっぱい、ぎゅっと抱きしめたかった。

 だが、サクラの身体を傷つけるかもしれないという恐怖を感じて、踏み出せなかった。


「……ルリ、そろそろ……いつもの魔力譲渡のキスをしましょう?」

「そう、ね……。うん、よろしく、サクラ……」


 ルリは、サクラの誘いに一瞬言葉を詰まらせた。

 サクラを傷つけてしまった夜からずっと、ルリにとって魔力譲渡は、身体が求める不可欠な行為でありながら、大きな不安を伴うものだった。

 また、魔力譲渡のキスをきっかけに、理性を失い、衝動のままにサクラを押し倒してしまうかもしれないという恐怖が、ルリの背筋に戦慄となって走る。

 ルリは頭を振って、必死にその不安を振り払った。


「じゃあ……」

「あっ、まって、サクラ。キウイから、宿題を出されてるんだ」


 すぐさまキスをしようとするサクラを、ルリが制止する。


「宿題?」

「うん。サクラの魔力を使わないようにするために……キスのときにもらうサクラの魔力が、わたしの中のどこにあるか、感じてみて……だって」


 ルリの特訓の最終目標は、ルリの中のサクラの魔力を、使わないようにすることだ。

 そのためには、ルリの中でサクラの魔力がどのように存在し、ルリが魔力を消費する時にそれを使用しないよう、厳に管理しないといけない。

 ひとまずルリの中のサクラの魔力だけを識別できるように、というのがキウイからの課題だった。


「だから、できるだけゆっくり魔力をもらいたいんだけど……」


 魔力をゆっくりもらえば、観測しやすくなるかもしれない。

 そう思ったルリが提案した言葉に、サクラは困ったような顔をした。


「そうなのね……協力したいのだけど、私、そこまで厳密に魔力の流れの制御ができないわ……」


 キウイがコーグ公国で行った、サクラへの魔力譲渡。

 それは、キウイの高度な技術による、繊細な魔力制御だった。

 サクラは、魔力譲渡のためにルリとキスをした際に、接触した粘膜から、魔力を移動させるため、魔力を留める堰を開放しているような感覚しかなかった。

 そこからどのぐらいの魔力を、どのぐらいの早さで流すかは、サクラの制御下ではなかった。


「じゃあ今日は、わたしから……サクラの魔力をもらうよ。わたしなら、ゆっくりにできると思う」


 事実、ルリはサクラより魔力制御の才能に長けていた。

 サクラもルリならできるだろうという感覚があった。


 しかし、今までルリが主体になって魔力を吸い上げるというのは、自制が利かない極度の興奮状態で、ルリが早く魔力を欲しくなってたまらなくなった時だけの話だった。

 ルリに任せる行為に、サクラの胸中に全くの不安がないわけではなかった。

 だが、サクラはルリの健気な決意を応援するためにも、自身の不安は押し殺し、ルリを信用することに決めた。


「わかったわ。じゃあルリ……来て」


 サクラの声に誘われるように、ルリは唇をサクラの顔に寄せた。

 ルリ自身も、自分を見失ってしまうかもしれないという不安を抱えていた。

 しかし、サクラのために、サクラの笑顔を守るために頑張ると決めた。

 ルリは不安を鎮めるように息を深く吐くと、意を決して唇を重ねた。


 ルリは粘膜越しに感じる魔力を、自分の意志で引き寄せるようにして受け入れた。

 できるだけゆっくりとサクラの魔力を吸い上げるように、ルリは集中する。

 同時に、自分の中に広がっていくサクラの魔力を感じ取った。

 自分のものとは明らかに違う、サクラの温かい魔力が、ルリの魔力をかき分けるように、じわりじわりと広がっていく。

 それはだんだんと、二色の光の靄が、ゆらゆらと絡み合うように、ルリの魔力と混じっていく。

 サクラの魔力が増えていくにつれ、その絡み合いは複雑になり、だんだんとルリには識別が難しくなっていった。

 確かに自分の中に二つの魔力があるのは感じるのに、サクラの魔力が、どこにどのような形状であるのかが、判別ができない。


 そうこうしていると、サクラの魔力が空になった。

 魔力譲渡の終了を感知したルリは、そっと唇を離した。


「んー……む……むずかしい……!」


 ルリが顔をしかめながら唸る。


「ルリ、大丈夫……?」


 難しい顔をしているルリに、サクラは心配そうに声をかけた。

 サクラはルリが暴走することなく魔力譲渡が終わったことに、深く安堵した。同時に、何事もなかったことに、少し拍子抜けしていた。

 サクラは思わず感じてしまった一瞬の寂しさに、自分の内なる気持ちを理解させられた。

 ルリに振り回される、刺激的な日々を、なんだかんだ楽しみにしていたのだ。

 そう自覚したサクラは、そっと頬を赤く染めた。


「キウイの練習より、ずっとむずかしいよ〜! ねぇ、サクラ……あっ……」


 ルリが、サクラを抱きしめようとして伸ばした手をぴくっと引っ込める。

 その顔には、サクラを傷つけてしまうかもしれないという不安が宿っていた。


「ルリ……ほら、もう魔力がいっぱいになって落ち着いたから、大丈夫よ。それに、もしまたあんな風になってしまったら、今度は私が……ルリのこと、ちゃんと止めるから」

「……っ、サクラ……」


 ルリは震える腕で、壊れ物を扱うかのように、サクラを優しく抱きしめた。


「……サクラ、すきっ、だいすきっ……」

「ふふ、私もルリのこと大好きよ」


 サクラはルリの髪を優しく撫でた。

 ルリの耳に響くサクラの優しい声が、ルリを温かく包み込むサクラの体温が、ルリの不安を溶かしていく。

 ルリの腕の震えは、いつの間にか止まっていた。


「ほら、大丈夫……大丈夫よ。ルリは優しいんだから」

「サクラ、ありがとう……」


 二人は吸い寄せられるかのように、唇を重ねる。

 それは、不安を拭い去るような、温かく、優しいキスだった。






やっぱこの二人はイチャイチャしてないと……ということで、イチャイチャ再開です。

基本は「ほのぼの」百合ファンタジーなので、女の子たちには幸せでいてほしいと思ってます。


※ムーンライトノベルズで、この後二人がどうなったのかの話を公開中です

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