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人魚と姫 〜私達が結婚すると、世界が救われる!?〜  作者:
第四章 ドワーフの国

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68. 火山の国の二重の危機

 その異変は、朝食後、カナ伯爵が合流してすぐ後に起こった。優れた感覚を持つキウイが、誰よりも早くその兆候を捉え、咄嗟に声を上げた。


「……っ、アヤメ様! この溢れ出る瘴気は……!」


 はっと顔を険しくし、焦った声を出すキウイに、アヤメもすぐに声を重ねる。


「ビュラン伯爵様の鍛冶場の方です……っ! 尋常ではないほどの濃度の瘴気が……っ」


 二人の会話に、私たちはただ事ではない空気を感じ取った。


「とにかくすぐに、ビュラン伯爵様の元に……」


 キウイが立ち上がろうとした瞬間、ルリが慌てた声で制止した。


「ま、まって、キウイ! なんか、おかしい!」


 ルリは怯えるように、キウイに伝える。


「ずっと、下の方を、水みたいに流れてた魔力が……あふれてるのっ……! キウイ……この魔力、とっても熱いんでしょう……? あふれたら、あぶないよ!」

「……っ!?」


 キウイはルリの言葉を聞いてすぐに、深く息を吸い込み、目を閉じて意識の全てを魔力感知に集中させた。その様子を、皆で息をのんで見守る。


「確かに、この国の魔力の源であるマグマが、流路の途中で詰まっている箇所があり……っ。源流から流路に流れるのに失敗したマグマが、制御不能のまま溢れて……いるようですっ。このままでは、マグマが街に……っ」


 切羽詰まった感情を乗せた声でそう言い終えると、キウイは弾かれたように目を開き、フォルナ公爵を真っ直ぐ見据える。


「フォルナ公爵様っ、この国のマグマの流れは、どのように管理されているのですか!?」


 珍しく冷静さを欠いたキウイの様子に、私は事態の深刻さを感じるほかなかった。フォルナ公爵が、苦い表情でキウイの問いに答える。


「あれは……古の巨大な制御装置にて、制御されているのです。申し訳ありません、子細な仕組みは現代に伝わっておらず……。とにかく、制御装置の場所に案内することはできます……っ」

「……っ。あちらもこちらも……っ!」


 キウイは頭に片手を当て、数秒間、深く思考を巡らせた。そのわずかな時間の沈黙に、緊迫した空気が走る。そしてすぐに、苦渋の表情のまま意を決したようにアヤメの方をまっすぐ見つめる。


「アヤメ様っ、私はそちらに、ビュラン伯爵様の元についていくことはできません。お側を離れることになり、大変申し訳ありませんっ。どうか、代わりに、これをっ……」


 キウイは懐から深い緑色の石を出すと、迷いなく自らの指を噛み切った。いつもは冗談ばかり言っているキウイの、真剣な眼差し。それは、皆の生命を背負う、宮廷魔術師としての覚悟の現れだった。

 滲み出た一滴の鮮血を、石の頂点に垂らしながら、魔力を練るのに集中するように、静かに目を閉じる。血液が触れた瞬間、石はその血を一気に吸い込んだ。次の瞬間、周囲を焼き払うような聖なる白光が放たれる。光は視界を奪うような強さで輝き、やがてその膨大な光は、すべて石の中に凝縮されていった。

 キウイが静かに目を開けたとき、手には淡い生命の光を放つ石が残った。


「アヤメ様、こちらは強力な守護の力を持つマカライトを核にした、私の魔術師としてのすべてを込めた結界です。コーグ公国の入国前にお渡ししたラピスラズリのペンダントは、瘴気を防ぐ効果しかありません。こちらのマカライトの石は一回限りですが、あらゆる危険から御身をお守りする、まさに私の『切り札』です。どうか、お持ちください」


 キウイは、淡い生命の光を放つその石を、アヤメの手にそっと握らせた。


「スフェーン様、私はあなたに指示する立場にないのですが……どうか、どうかアヤメ様をよろしくお願いいたします」

「言われなくても、アヤメは私が守るわ。安心して、あなたはあなたの仕事をなさいな」


 キウイの言葉にスフェーンさんは、その不安を打ち消すように、優しい声で答えた。


「フォルナ公爵様、どうか、すぐに私をマグマの制御装置の場所にお連れくださいっ! 全力で、必ずなんとかしてみせます……! サクラ様とルリ様は、私についてきてください。制御装置を御するのに、お二人の力を貸していただくかもしれません……っ」


 キウイが張り詰めたような鋭い声で私たちに声をかけてきた。私たちもその真剣さに緊張を覚えながら、すぐに頷いて返す。


「ええ、私も全力を尽くすわ。ルリ、私たちもキウイに手を貸しましょう」

「わかったよ! わたし、めいっぱいがんばるから……!」


 ルリもいつにもなく真剣な、澄んだ顔で頷いた。


「フォルナ公爵がマグマの制御装置に行かれるのなら、私はビュラン伯爵の元に向かいましょう……! アヤメ様のお力になれれば幸いです」


 アヤメにはカナ伯爵も心強い加勢としてついていくことになった。フォルナ公爵は、カナ伯爵に声をかける。


「カナ伯爵、私たちが向かう制御装置は、私の鍛冶場の奥です。直すのに時間がかかるかもしれません。ビュラン伯爵の救出に目処が立ったら、合流していただけると嬉しいです」

「わかりました。フォルナ公爵、そして皆様、お気をつけてください」


 二人のやり取りを見守った後、アヤメがカナ伯爵に呼びかけた。


「カナ伯爵様、私の側に。ビュラン伯爵様の鍛冶場は現在、『瘴気』の濃度が昨日にも増して危険なほどに濃いようです。私が持つペンダントの『瘴気』の結界から、くれぐれも出ないでください。……では、サクラお姉様……。心配ご無用です、こちらは、私たちに任せてください」


 アヤメはそう言うと迷いなく、スフェーンさんとカナ伯爵を連れて出ていった。


「では、私たちも急ぎ参りましょう……。どうか、私についてきてください……!」


 私たちは、フォルナ公爵の案内で、マグマの制御装置の場所へと急いだ。






管理者不在の、古のツールを、使い続けてはいけません……!(本職プログラマ)


マカライトの結界魔法の描写を気合い入れて書きました。血を使った魔法って燃えますよね! マカライトの石、色がまさにキウイって感じで、キウイの切り札にぴったりと思って、採用しました。どうでしょうか。

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