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人魚と姫 〜私達が結婚すると、世界が救われる!?〜  作者:
第五章 メイドたちの絆

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118.5. 《幕間》素直じゃない幼馴染み

 フィオーレ王国の夜は、コーグ公国と違って、穏やかだ。

 絶えず感じるじりじりと纏わりつくような暑さなどなく、窓を開ければ爽やかな風が入り込んでくる。

 カナは窓際で深呼吸して、気持ちの良い澄んだ空気を堪能した。


「フィオーレ王国……いい国だね。寒くもないし、暑くもない。空気感がちょうどいいよね」

「……カナ、ちょっと……」


 背中から、マレットの咎めるような声が聞こえる。

 振り返らなくてもわかる。

 きっと眉間に皺を寄せて、困ったような、怒ったような顔をしているに違いない。

 そんな確信を胸に、少しだけ振り向いて、横目でマレットの姿を捉える。


(ふふっ……やっぱり)


 あまりに予想通りだったマレットの姿に、カナは思わず笑みをこぼした。

 その恨めしげな表情で何を言おうとしているかも、カナにはお見通しだ。

 でも、不満げにじっとりと見つめてくるマレットが可愛くて、カナはあえて気づかないふりをした。


「お風呂っていうのも、サウナとはまた違って、気持ちよかったね。お湯に浸かるのはびっくりしたけど……思ったより熱くなくて、ずっと浸かっていられそうだったよ」

「ねぇ、カナ……これは、どういう……」


 マレットがお風呂上がりに借りた寝間着の裾を、落ち着かない様子で握りしめる。

 フィオーレ王国では一般的な、ネグリジェというものらしい。

 コーグ公国でよく着られているガウンより、生地が薄くて柔らかく、着心地がいい。

 汗はあまり吸わなそうだが、そもそも汗をかかないので問題がないのだろう。


(たまにはこういうマレットも……いいかも)


 普段は無骨な作業着に身を包んでいるマレットが、今は淡い色の薄布を身に纏っている。

 ひらひらと揺れる裾から覗く、マレットの鍛え上げられた健康的な褐色肌。

 その太腿(ふともも)に目が吸い寄せられてしまって、心臓に悪すぎるのだけが、問題かもしれない。


「帰ったら、フォルナ公爵に自慢しなくちゃ。フォルナ公爵、羨ましがるだろうなあ。今から楽しみだよ」

「……カナっ!」


 痺れを切らしたようにマレットが叫ぶ。

 カナはようやくマレットの方に向き直った。


「どうしたの、マレット? こんなにいい部屋に通してもらって、何か不満があるの?」

「不満も何も……私、あなたに宿泊の手配をちゃんと頼んだわよね?」


 そう、マレットはカナにフィオーレ王国での宿泊の手配を全て任せたのだ。

 だから、カナはちゃんと手配をした。

 自分たちの関係を一歩進めるための、最高の手配を。


「ちゃんと手配したじゃない。一泊二日、二人部屋」

「なぜそうなるのっ! 私たち、婚約もしてないのに……一人一部屋に決まってるでしょう!」


 真っ赤な顔で怒るマレット。

 必死に文句を言うその姿が愛おしくて、カナの口角が自然と緩んでしまう。


「カナ、聞いてるの!?」

「うん……聞いてるよ。私たちが婚約してないのが大問題っていう話だよね」


 カナは窓を閉めると、ベッドの前で佇んでいるマレットの前に立った。

 そのままマレットの身体を強く押すと、マレットはベッドの上に尻もちをつく。


「んっ……ちょっと、何を、……っ」


 そのままマレットの膝の上に乗り込み、マレットが動けないようにしてから、その熱くなった頬を両手で包み込む。


「そうだね……今ここで婚約すればいいのかな?」

「ち、違うでしょう!? ちょっと、カナ、近い……っ」

「だよね。プロポーズはもっとロマンティックな場所でしたいと思ってたんだ」

「カナ、ふざけないで……んんっ!」


 その煩い唇を、自分の唇で塞ぐ。


「ん……んん……っはぁ、か、カナ……っ」


 唇を離すと、二人の荒い吐息が重なった。

 マレットの瞳が、驚きと熱でとろりと潤んでいるのが見える。


「だってこうでもしないと、私たち……いつまでたっても進まないじゃない。ねぇ、意気地なしのマレット?」


 カナが悪戯そうに微笑むと、マレットは潤んだ瞳で見つめ返してくる。

 その瞳は、逃げ出したいのか、もっと触れてほしいのか、自分でもわかっていない子どものように揺れていた。


(ああもう……そんな可愛い顔しちゃダメだよ、マレット)


 初めては、優しく愛してあげようと思ったのに。

 そんなに無防備な顔をされたら、加減ができる自信がない。

 自分の中で何かが、音を立てて千切れた。


「……っ、ごめん、無理」


 吐き捨てるように告げると、カナはマレットの肩を掴んで、乱暴に押し倒した。


「えっ……あっ、きゃあっ」


 ふかふかの柔らかい布団に、マレットの身体が沈み込む。

 カナは覆いかぶさりながら、獲物を逃さない獣のような目で見下ろした。


「優しくなんて、できない。……マレットが可愛すぎるのが悪いんだからね」


 広がる髪と、無防備に晒された首筋に、カナは喉をごくりと鳴らした。


「嫌なら……抵抗してもいいよ」


 片手でマレットの肩を押さえたまま、反対の手でマレットの頬を撫でる。

 マレットの、普段は重いハンマーを振るっている剛腕は、特に拘束されていない。

 本気で抵抗すれば、カナの身体など簡単に跳ね除けられる筈だ。

 それなのに、マレットは身体をほんの少しだけ跳ねさせただけで、されるがままになっている。


「私の小さい身体ぐらい、鍛冶師のマレットなら簡単に突き飛ばせるでしょう?」

「それ、は……っ」


 マレットが潤んだ瞳でカナを見つめる。


「ふふ……私ね、マレットのことなら、なんでもわかっちゃうんだよ。だって、幼馴染みだもん。……ずっと、誰よりも近くで、マレットのことを見てたんだから」


 カナはマレットの耳に唇を寄せる。

 マレットが言えない、マレットの本心を、耳元で囁く。


「……期待、してるんでしょう?」


 図星を突かれたように、マレットの瞳が揺れる。

 それが拒絶ではなく、隠しきれない期待と好奇心のせいだということを、カナは察していた。


「マレットは私のこと……好き?」

「……っ、か、カナ……」


 カナがまっすぐに見つめると、マレットは喉の奥で詰まらせる。


(ああ、かわいい……マレット……)


 マレットの困ってる顔が、かわいい。

 もっと困らせたい。

 もっと自分だけでいっぱいにしたい。

 そんな仄暗い独占欲を胸に灯して、カナがマレットの耳元に唇を寄せる。


「私は、マレットのこと、好きだよ。大好き」

「ひゃ……っ」


 わざと吐息を出しながら囁くと、甘い声とともにマレットが肩を跳ねさせる。

 密着した身体から伝わってくる鼓動が心地良い。

 自分の言葉が、自分の熱が、マレットを狂わせている。

 その光景に、カナはぞくぞくしていた。


「マレットは、恥ずかしがり屋だから、言葉では言えないのかな?」

「……っ」


 マレットは喉の奥で言葉を詰まらせたまま、何の言葉を放つこともできない様子だ。

 ただ、熱のこもった瞳で、縋るようにカナを見つめる。


「……じゃあ、身体に聞くしかないよね」


 耳元に囁かれた言葉を理解したのか、マレットの喉が引きつったように震えた。


「……っ、あ……っ」


 否定したいのに、できない。

 自らの身体の反応に困惑し、涙目で訴えてくるマレットの様子に、カナは嗜虐心をくすぐられて目を細めた。


(マレット……本当に、可愛い)


 頭では拒んでいても、その素直で可愛い身体は、とっくに陥落している。


 カナは逃げられないようにマレットの顎をすくい上げると、有無を言わせぬ勢いで、その唇を深く塞いだ。

 フィオーレ王国の穏やかな夜風が、窓の外で優しく木の葉を揺らしている。

 けれど、そんな平穏はもう、二人には届かない。

 夜はまだ始まったばかりだというのに、部屋の中は既に、火傷しそうなほどの熱で満たされている。


 素直ではない言葉とは裏腹に、正直な反応をするマレットの敏感な身体を、カナは思う存分に愛していった。






https://x.com/i/status/2002540891995791622

#いいねされた数だけどうでもいい設定だろうが重要な設定だろうが意味不明な設定だろうが吐く

のハッシュタグで、「人魚と姫」の設定を色々とツイートしました。

興味あれば見てみてください!




アヤメたちが、和気あいあいとしてたので……代わりと言っては何ですが、この二人の濃厚なイチャイチャをお届けします。


カナみたいな積極的な子は書いてて超絶楽しい……です!

「人魚と姫」の攻め属性のキャラの中でも、カナが一番容赦ない気がします……と思いましたが、一番容赦ないのはどう考えても怒りモードのチェリーですね(笑)


※ムーンライトノベルズにて、カットされたシーンを公開中です

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