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人魚と姫 〜私達が結婚すると、世界が救われる!?〜  作者:
第五章 メイドたちの絆

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116. 人魚の恋愛相談室

 ひとしきり品評会の話を聞いて話に花を咲かせ、一息つく。

 チェリーとキウイが淹れてくれたおかわりの紅茶を飲み始めた頃、ルリがふと思い出したように言った。


「そういえば、マレットとカナはいつケッコンするの?」

「……んぐっ!?」


 ルリの突然の爆弾発言に、紅茶を飲んでいたマレットが、気管に紅茶を入れてしまったように咽る。

 サクラもティーカップに当てようとした唇から「っぷ!?」と、姫らしくない変な声を漏らしてしまった。


(確かに地下空洞で二人がキスをしたことはあったけれど……)


 マグマ制御装置「イグニス・コア」との戦いの中で、皆の前で熱く交わされたキスは、魔力譲渡のためのキスだった。

 不意打ちということを差し置いても、サクラが見たあの時のマレットの動揺した様子から察すると、二人は恋人ではなさそうだと思っていた。


(ルリは、文通の手紙とかで……二人の間柄の進展を聞いているのかしら)


 そう思ったサクラが、ルリに問いかける。


「……ルリは、お二人がどういう関係なのか、知ってるの?」

「えっ? だって、キスしてたし……なかよしなんでしょう?」


 ルリがきょとんとする顔に、サクラは状況を察した。

 ルリの中ではキスは恋人同士がするものだから、当然のように二人がお付き合いしているものだと思ったのだろう。

 サクラがルリの勘違いを二人に謝ろうと口を開きかけた時、ようやく紅茶を気管から出し終えたマレットが、ハンカチで口を押さえて、涙目になりながら言葉を放った。


「な、なぜ、我々の関係を、ご存じで……っ!?」

「え……ええっ!?」


 その真っ赤な顔で放たれた言葉にサクラは驚きの声を漏らすしかなかった。

 ルリの早とちりが、実は真実を射抜いていたようだ。


「あ、あの……ルリは、お二人が仲がよろしいようなので、お付き合いしていると勘違いしていただけなのだと思うのですが……事実、だったのでしょうか?」

「……っ!?」


 サクラがそう告げると、マレットは口をぱくぱくしながら二の句が継げなくなっていた。

 そんなマレットを見て、カナは隣で深い溜め息をついた。


「……皆様がフィオーレ王国にお帰りになってすぐに、私とマレットはお付き合いを始めたのですよ。でも、マレットは恥ずかしがり屋なので、そのことを自分からは誰にも言っていないのです」


 カナが隣を見ると、マレットは恥ずかしそうに両手で顔を覆い隠してしまった。

 それを見て、カナは呆れたように笑う。


「私は隠す気がございませんので、国内の知人はみんな知っていますけど。アヤメ様とスフェーン様にも、先日コーグ公国においでになった時に教えたのでご存じの筈ですが、お二人からお聞きしていたわけではないのですね」

「そうなの? ふたりからは、マレットとカナの話は、きいてないなあ……おしえてくれたらよかったのに」


 ルリが頬を膨らませる横で、サクラは優しく微笑んだ。


「プライベートなことなので、本人から直接お伺いすべきと思ったのではないでしょうか。ルリも興味があるようですし、せっかくなので、お二人のお話も聞かせていただきたいですわ。もしよろしければ、ですけど」


 サクラがそう促すと、カナが横のマレットに視線を移す。

 マレットは相変わらず、林檎のように顔を真っ赤にして、両手で顔を覆ったまま固まっていた。

 そんなマレットを見て、カナは愛おしそうに、そして困ったように溜め息をついた。


「マレットは奥手すぎて、外では手すら一緒に繋いでくれません。私たちの関係なんて皆知っておりますのに。ねぇ、マレット?」

「ううぅ……だ、だって、見世物ではないし……っ」


 指の隙間から涙目で訴えるマレットに、カナはふふっと笑う。


「いっそ、見せつけてやればいいのに。……まあ、終始こんな感じです。最近仕事に精を出して工房に引きこもっているのも、『イグニス・コア』の管理人としての責任感もあるのでしょうけど……私を避けてるんでしょう?」

「うっ……そ、それは……っ」


 図星を突かれたのか、マレットが言葉を詰まらせる。

 どうやら、恋人との距離感に耐えられず、逃げ回っているようだ。


(ふふっ……以前の私のようだわ)


 ルリとキス一つできずに逃げ回っていたあの頃を思い出し、サクラは優しく目を細めた。

 でも、あの頃の甘酸っぱい思い出も、今はサクラの大切な一部だ。

 きっと二人にとっても、いずれはそうなるだろう。


「まあ、こんなマレットも私は好きなので、いいのですけれど。……でもさすがに、そろそろ一歩進みたいなと思っているのです。ルリ様、友人として、マレットに何とか言ってやってくれませんか」

「ええっ? わたし?」


 急に指名されて目を丸くするルリに、カナが続ける。


「だってルリ様は、サクラ様と仲睦まじいことで、たいそう有名ではないですか。どうやったらそのようになれるか、ご教授願いたいものです」

「んー? べつに……わたしたち、ふつうだよ? キウイとチェリーも、なかよしだし……ねぇ?」


 ルリがキウイに目線を向けると、キウイが悪戯そうに微笑む。


「そうですね。ただ、ご友人への助言のために、仲睦まじい様子を実演しろと言うのなら、いつでも承ります。主様の命令に逆らうことなどできませんから。……ねぇ、チェリーさん?」


 いきなり話しかけられたチェリーが、「ひっ」と小さな悲鳴を口の中で漏らす。

 サクラが後ろに目を向けると、真っ赤な顔をしたチェリーが必死に首を横に振ってサクラに訴えているところだった。


「……もう、キウイったら。ふざけるのはよしなさいな」

「本気だったのですが……残念でございます」


 サクラが呆れたように嗜めると、キウイは涼しい顔で引き下がった。


「うーん……? マレットは、カナのこと、すきなんだよね?」


 ルリに話しかけられて、マレットがぴくりと肩を跳ねさせた。

 手で顔を覆ったまま、指の隙間からルリの様子を伺う。

 その瞳がどこまでも純粋でまっすぐなことを知り、観念したのか、マレットは蚊の鳴くような小さな声で呟いた。


「……はい」


 真っ赤な顔でほんの僅かに頷くマレットに、ルリは太陽のような眩しい微笑みを向けて、明るく言い放った。


「じゃあ、カナに、マレットの気持ちをつたえてあげたほうがいいと思うな! わたし、サクラにすきって言われると、うれしいし……ぎゅーってされると、もっともっとうれしいんだ!」


 ルリの言葉に、サクラの胸のうちに温かい気持ちが広がっていく。

 ルリは自分の言動を、こんなにも純粋で温かい気持ちで受け取ってくれているのだ。

 愛おしさに目を細めながら、サクラも深く頷いて、優しくマレットに話しかける。


「私も……恥ずかしくて、逃げてばかりだった時がありました。でも、勇気を出して想いを伝えたからこそ、今の幸せがあるのだと……そう思っていますよ」


 二人の言葉を聞いたマレットが、おずおずと顔を覆っていた手を下ろす。

 相変わらず赤く染まっているその顔に、カナが悪戯そうに微笑みかける。


「だそうだよ、マレット。近いうちに……勇気を出してくれると、嬉しいな?」

「こ、心の準備が、できたら……っ」


 煮え切らない言葉を言うマレットに、カナが呆れたように、そして意味ありげに微笑む。


「心の準備、早くしておいた方がいいかもね……ふふっ」


 その含みのある笑顔を見て、サクラはぴんときた。

 おそらくカナは、マレットの「心の準備」を待つ気などないのだろう。


「お二人とも、マレットに発破をかけていただきありがとうございました。お二人のように仲睦まじくなれるよう、私も精進いたします」


 そう言いながら微笑むカナの、捕食者のような、それでいて愛に溢れたその瞳に、サクラはマレットの少し先の未来を垣間見た気がして、思わず口元を緩めた。


 こうして、思いがけず恋のお悩み相談を受けることとなった再会のお茶会は、温かい笑い声とともにお開きとなった。

 フィオーレ城に夜の帳が下りる頃、二人の関係がどう動くのか――サクラは何故だか、波乱の予感を胸に秘めたのだった。






想像以上になんも進展していない二人でした。

あと少しだけ進展して帰国してもらおうと思ってます。

でもその前に……次はビュランのお話です!


現状のルリがよく知る自分以外のカップルは

チェリーとキウイ

アヤメとスフェーン

パールとオニキス

なので……まあ「わたしたち、ふつうだよ」になりますよね(笑)

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