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人魚と姫 〜私達が結婚すると、世界が救われる!?〜  作者:
第五章 メイドたちの絆

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105. ルリとキウイの魔力操作訓練

「む……むむ……24個!」

「はい、正解です、ルリ様。目を開けていいですよ」


 ルリが目を開けると、見慣れた訓練場と、キウイの姿が目に入った。

 頭上には、キウイが結界魔法で作った、様々な形の精巧な花が浮かんでいる。

 キウイが頭上に向けて握りしめた手を掲げ、ゆっくりと手を開くと、花が光の粒子となって降り注ぐ。


 ルリは現在、キウイと共に魔力制御の特訓に励んでいた。

 キウイが作った結界の数を、魔力感知のみで当てるという訓練だ。

 当初は複雑な形だったり、小さくなったりすると感知に苦労していたが、今のルリはかなりの精度で感知できるようになっていた。


「ふふっ……お花の結界、とってもきれい! キウイの練習もバッチリだね!」


 頭上から降り注ぐ光の粒子を見上げながら、ルリは声を弾ませた。

 この精巧な花の結界は、キウイ自身の結婚式のためのパフォーマンス練習も兼ねている。

 当日、この花たちがどのように式を彩るのだろうか。

 ルリは想像を膨らませ、自分のことのように胸を高鳴らせた。


「お褒めの言葉ありがとうございます。ルリ様も、訓練開始当初に比べて、魔力感知の精度が大幅に向上しましたね。よく頑張りました。第一段階はクリアしたと見なしていいでしょう」


 ルリとキウイは、お互いの健闘を称えるように手を握りしめあった。

 握りしめた手を見ながら、ルリはふうっとため息をついた。


「キウイとの練習はいいかんじなんだけど……夜の、サクラとの宿題はぜんぜんうまくいかないの……」


 ルリはキウイから指示された「宿題」――夜の魔力譲渡中に、自分の中のサクラの魔力を認識することに毎晩挑戦していた。

 しかし、どうしても途中でサクラとルリの魔力が絡み合うように混ざり合った時点で、識別ができなくなってしまう。


「とちゅうで、魔力がぐちゃぐちゃになっちゃって……わからなくなっちゃうんだよねぇ……」

「ふふ、そう悩み始める頃だと思っていました。ここから訓練の第二段階……『感知』ではなく『操作』の訓練を開始しますよ」


 キウイはそう言うと集中するように目を閉じ、両手を掌を上にして差し出した。

 ふわり、と銀色の光が集束し、キウイの手の上に「半球状の結界」が展開される。

 それはまるで、ガラスで作られたボウルのようだった。

 キウイが手を引くと、その結界はキウイとルリの間の空にふわりと浮いた。


「わあ、透明できれいだね! この結界を、つぎの練習でつかうのかな?」

「ええ、この結界と……こちらを使います」


 キウイは懐から小瓶を取り出し、その結界の中に、とくとくと水を注いだ。

 水は結界の中に静かに満たされる。即席の器の完成だ。


「魔力を含んでいない純粋な水を入れました。この水に、私が魔力を込めますね」


 キウイは結界の器の端に指をそっと差し入れ、魔力を込めた。

 ルリは魔力感知で、キウイの指のまわりの水に、ぼうっと魔力が広がっていくのを感じた。


「器の結界と、水に込めた魔力……どちらも私の魔力ですが、今のルリ様なら魔力感知で識別できますね?」

「うん……結界の魔力はかちこちで、水の中の魔力はゆらゆらしてるの……」


 ルリは目を閉じて魔力感知に集中する。

 結界の魔力は、まるで硬質な壁のようだ。

 対して水の中に込められた魔力は、キウイの指のまわりをゆらゆらと漂っている。


「以前ルリ様は、アヤメ様の成人の儀の時に、魔力を色で例えたことがありましたね。私の魔力は何色ですか?」

「え? うーん……銀色、かな……。スプーンみたいな……」

「なるほど……やはりルリ様は、属性石が示す魔力の色を、そのまま感じることができるのですね。そうです、私の魔力は結界属性、銀色です」


 キウイが感心したように頷く。


「では、ルリ様も私と同じように、水に魔力を込めてください」

「うん、わかった」


 キウイの言葉に従って、ルリは結界の器の、キウイの対面の端にそっと指を差し入れ、魔力を込めた。

 ルリの指のまわりに魔力がふわっと広がる。


「ルリ様の魔力は何色ですか?」

「青……だね」

「私の魔力と、違うものとして識別できますね?」

「うん……色が、ちがうから……だいじょうぶ」


 ルリは目を閉じて魔力を感じとった。

 キウイの銀色の魔力が、キウイの指のまわりを漂っている。

 そして、自分の指のまわりには、青い魔力が徐々に広がっている。


「そのまま、魔力をゆっくり込め続けてください……。ルリ様、これ……サクラ様からの魔力譲渡を受けている時の様子に似ていませんか?」

「むむ……? たしかに……そうかもしれない」


 ルリが魔力を込めると、だんだんと青の魔力が広がっていく。

 キウイの銀色の魔力とそっと触れそうになる。

 これは、サクラから魔力譲渡を受けている時の、ルリの中で起こっていることとそっくりだ。


「ほら、私とルリ様の魔力が混ざります……ここから、複雑に絡み合って、識別が困難になるのでしょう?」

「そう、そうなの……っ。ぐちゃぐちゃに、なって……わからなく、なっちゃうの……」

「そうですね。なら、どうすればいいのでしょうか」

「どう、って……」


 混ざり合ってしまえば、ルリにはもうどうすることもできない。

 だから困っているのだ。


「……単純な話です」


 その時、結界の器の中で、ルリが予想だにしなかった出来事が起こった。

 ルリの青い魔力と触れそうになっていたキウイの銀色の魔力が、すいっとルリの魔力を避けるように動いたのだ。


「えっ……ええっ……!?」


 まるで意志を持ったかのような魔力の挙動に、ルリは驚いて目を開けた。

 そんなルリに、キウイは涼しい顔で、一筋の希望を示すように告げた。


「混ざり合うとわからなくなってしまうのなら、混ぜなければいいのですよ」






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