表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚と姫 〜私達が結婚すると、世界が救われる!?〜  作者:
第五章 メイドたちの絆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/154

091. 白の懺悔と黒の赦し

 見慣れた純白の髪が月光を浴びて輝くのに、思わず見惚れそうになる。

 オニキスは何より愛しいその人を、フィオーレ王国の客間の一室で、ベッドに座って眺めていた。


「ふぅ……やっぱり、この国はいいわねぇ、オニキス」

「……そうだな」


 隣に座るパールは、柔らかく笑いながらオニキスに話しかけてくる。

 千年連れ添ったその愛しい人魚は、オニキスの少ない言葉に不満がる様子もなく、言葉の裏にある気持ちも汲み取ってくれる。

 パールの隣で過ごすことは、オニキスの心を安らげた。


「お風呂ってなんであんなに気持ちがいいのかしら。海の水と違って、少し温かいだけなのに……」

「パール」


 パールの止まることのないお喋りを遮るようにオニキスは声をかけた。


「言いたいことがあるなら何でも言え」


 パールがそわそわする気持ちを隠すように喋り続けていたのを、オニキスは察していた。

 オニキスもまた、パールの伴侶として、その言葉の裏の気持ちを手に取るように汲み取ることができた。


「……叶わないわぁ」


 パールは観念したように笑うと、そっとオニキスを抱きしめた。


「私……今、オニキスを何より愛してるのよぅ」

「知ってる。ありがとう」


 少し掠れた声で囁かれるパールの愛の言葉に、オニキスは優しい声で応えた。


「でも、私……っ」

「パール」


 パールの震える声を遮るように、オニキスはその名を呼んだ。

 言葉を紡ぐためにパールの心が悲鳴を上げているのを理解したオニキスは、優しい許しの言葉を与える。


「無理に話さなくてもいい」


 言うことでパールの心が軽くなるなら話せばよい。

 心が痛むなら、無理に話さなくてもよい。

 オニキスはどこまでもパールを第一に考えていた。

 オニキスの揺るぎない眼差しに、パールは首を横に振って応えた。


「いいえ……お願い、聞いてちょうだい」


 パールはオニキスを抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。

 緊張を吐き出すように深呼吸するパールの背中を、オニキスは優しく擦った。


「今から話すことで、オニキスは私に幻滅するかもしれない……それによって、愛がなくなってしまっても……私は甘んじて受け入れるわぁ」

「……聞こう」


 オニキスには、例えパールがどれだけ醜い真実を告白しようとも、パールへの千年続く愛がなくなるなどあり得ないという確信があった。

 オニキスが恐れるのは、逆にパールの愛がなくなることだけだった。

 パールが「オニキスを何より愛している」と伝えてくれたから、そこに対する疑念は何一つなかった。

 オニキスはただ、凪いだ海のように落ち着いた心でパールの続きの言葉を待った。


「幼いオニキスと出会った時……私は、あなたを……大切なものを守るための剣としてしか見てなかったの……。あなたを育てて戦力にすれば、私の都合のいいように働く戦士として機能するって……そうとしか思っていなかったのよぅ」


 パールは震える声で続けた。


「幼いあなたに与えた私の愛は……すべて偽物よぅ……。ただ忠実に働いてもらうため……ただそれだけのために、私は……あなたに言葉や戦い方を教えたの……っ」


 パールは自嘲するように笑う。

 オニキスの胸は、パールの苦しみに呼応するように強く締め付けられた。


「私に幻滅したでしょう……? オニキス……私、幼いあなたに……っ、んっんぅ……」


 オニキスは自嘲の言葉を吐き続けるパールの唇を塞ぐように、自分の唇を重ねた。

 唇を離すと、驚きに言葉を失ったパールと目が合う。


「パール」


 オニキスは愛おしさを込めて、優しくその名を呼んだ。 


「全部知ってた」


 息をのむパールに、オニキスは言葉を続ける。


「パールが私に戦力としての働きだけを期待してるのは理解していた」


 オニキスはパールの美しい純白の長い髪を、愛おしむように梳いた。


「目的が何であれ、野生児だった私に、言葉、知恵、生き方、戦い方……そして愛を教えてくれたのはパールだ」


 オニキスの優しい言葉に、パールは首を横に振る。


「愛なんて……なかったのよぅ」

「私はパールを愛することができた。それは……パールが教えてくれた愛そのものだ」


 オニキスはパールの華奢な身体を、自分の胸にそっと抱きしめた。


「セイレーンの欲に呑み込まれてパールを傷つけた私は捨てられてもおかしくなかった。耐え続けて……私を側に置き続けてくれてありがとう」

「オニキス……っ」


 オニキスはパールが美しい涙とともに、千年の間胸にあり続けた重いものを吐き出し終わるのを、髪を梳きながら優しく待ち続けた。


「私、千年の間に紡いだ絆をもってオニキスに赦されたかったのに……オニキスはそもそも……とっくに、千年前に赦してくれていたのねぇ……」

「そう、パールに罪なんかない」


 力強く言い切るオニキスの言葉に、パールは温かい気持ちに包まれていった。

 オニキスはパールの身体から、張り詰めていた緊張が完全に溶け去ったのを理解した。


 その安堵の抱擁の中で、パールは親友ローズが言った言葉を思い起こしていた。


(『現在』のオニキスを愛すこと……)


 パールは千年の間に紡いだ絆があれば、オニキスが赦してくれるかもしれないと思っていた。

 しかしそもそも千年前に、オニキスは事実を既に悟っていて、それでもなおパールを愛してくれていた。

 パールに必要だったのは、過去に囚われず、目の前のオニキスをただ愛することだけだったのだ。


「私……今、オニキスを何より愛しているわぁ」


 オニキスはパールの覚悟の愛を受け取るように、愛の言葉を紡いだ唇にそっとキスをした。


「ありがとう」


 オニキスの愛の受容の囁きに、パールは安堵の溜め息をついた。

 しばらく体温を確かめるようにオニキスの身体に寄り添った後、目線を落として呟いた。


「ルリちゃんは……サクラちゃんは、大丈夫なのぅ? ルリちゃんはセイレーンの衝動に……呑まれてしまったのでしょう……」


 「ルリと私はよく似ている」――そのオニキスの言葉から、パールはオニキスの過去と同様のことに悩んでいるのを察していた。

 オニキスが過去を思い出すように目を閉じる。


「ああ、そうだ……でも、ルリを信じるしかない」


 オニキスが優しい顔で続ける。


「キウイとチェリーが……二人をきっと支えてくれる。ルリはいい人に囲まれている」

「そう……今は、信じるしか……ないわねぇ」


 パールの憂いを払うように、オニキスは強く囁いた。


「大丈夫。ルリは私たちの娘だ。サクラを愛し抜くさ」


 一緒にルリを信じよう。

 オニキスはそんな気持ちを込めて、パールをしっかりと抱きしめた。






パールとオニキスのイチャイチャでした。

オニキスの強引な感じとが好きです……。


※ムーンライトノベルズで、この後二人がどうなったのかの話を公開中です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ