20 作戦会議
「で、早速本題だが」
国王が話し始めると、一瞬で空気が変わる。私も真剣に聞くことに徹する。
「クォーツ家と交流のある家は大体調べ尽くした。やはり関与している家はいくつかあって、それぞれ内々に処分しているところだ。恐らく、マルダスとゴードジューズ帝国への情報漏洩の報酬で実入りがよくなったクォーツ家が、シュタッズ家同様、あまり経済状況が芳しくない家に声掛けして取り込もうとしていたらしい」
(やはり、ここまで大掛かりとなるとそれぞれ貴族が関わっていたと思ったが、読み通りだったわけね)
「これで全て洗い出せたのか?」
「いや、全部というわけではない。クォーツ卿に聞いても夫人に聞いても、一切口を割らんのでな。案外、辛抱強いというかなんというか、その忠誠心は私に捧げて欲しかったものよ」
確かにその通りだ、と思うが、きっと彼らはそれぞれ何かしら事情があるのだろう。ここまで大それたことをやったのだ、相当な覚悟が必要なはずである。
(……家族を犠牲にしてまで)
「まぁ、恐らくまだ隠れているだろうが、疑わしきものを罰してたら我が国には貴族も領主も悉くいなくなってしまうからな。とりあえず泳がせる目的で様子見だ」
「一応、何か策はあるのですか?」
「なくはないが、どうだかな。リーシェはどう考える?」
話を振られて、2人がこちらを見る。
(策、策か……)
あぶり出しをして、下手に相手に勘付かれて隠れられても困るし、そもそもここまで大規模に行った策が失敗したとなると、相手も慎重にならざるを得ないだろう。
マルダスもゴードジューズも今のところ動きはないようだし、下手にこちらが動くよりも、相手の出方を待った方が確かに得策だと考える。
(寧ろ今は、相手の出方を先回りして考えたほうがいい気がする)
このまま向かって行って返り討ちに遭うよりも、事前に罠を張っておいたり同盟国を増やしたりした方が今後の展望としては明るいのではないだろうか。
そもそも、こちらが持っている情報は少ない。帝国のことを私はある程度知っているものの、あれからだいぶ年月は経っている。
必ず何かしらの変化はあるはずだし、情報はアップデートしておくに越したことはないだろう。それなら情報収集を先にした方がいい。
「先に情報収集をするのが良いかと」
「ほう、何故?」
「現在コルジールの同盟国は限られてます。我が国ペンテレアでは正直に申しますと、それなりの国との同盟を結んでおりました。ですが、結局のところ皆、怖気づいたり諸事情があったりとどの国も助けに来ることはありませんでした。ですので、今回はその教訓を生かして交渉すれば、前回のことは避けられるかと」
「つまり、現在の我が国力では勝てる見込みがない、と?」
「そうですね」
キッパリとそこは肯定する。コルジールがいくら優れた政治を行う国でも、あの圧倒的国力を前にすればそうはいかない。
国を覆うほどの圧倒的な戦力差、兵の数。多勢に無勢とはこのことを言うのか、と身に染みたあの一件。経験したことあるからこそ、あの圧倒的兵力を前に、なす術もなかった。
だが、だからこそわかる。彼らは恐怖で政治や人を動かしているのだと。その恐怖で縛られているだけの人間や、国があること。それを良しとしない、蟠りが燻っている国があること。
独善的絶対王制で、皇帝が白と言えば白、黒と言えば黒という世界だ。彼が絶対的支配者であり、それ以外は消され、または意味をなさない。
全ての物事は皇帝のみが思考し、実行する。他のものの助言など無意味で、彼に意見するものは当事者のみならず、親類縁者に至るまで一族皆殺しだ。
(だからこそ、ペンテレアは慈悲もなく滅ぼされた)
許しなどない。皇帝が否定すれば、則ちそれは万死に値する。だから皆、意見も言わず抵抗もせずに帝国を受け入れ静観し、自分に矛先が向かわぬように注意しているのだ。
「ほう、言うではないか」
「あくまで事実です。対外的に中立を守っている国でも、実のところは帝国に屈している国も多い。コルジールは比較的帝国から離れているので、今すぐどうこうということはないでしょうが、算段さえ整えば攻めてくるはずです。だから、攻めさせないようにさせます」
「して、具体的にはどのように?」
「内部から崩します」




