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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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18 恋の自覚

(なんだか、いつも私はもらってばかりだわ)


コサージュや髪飾り、ドレスにネックレス、イヤリング……


今まで数え切れないほどの贈答品をクエリーシェルからもらい、既に頂き物を入れている小物入れには、溢れんばかりの贈り物でいっぱいになっていた。


(ここに来てから、やっともうすぐ1年経つかどうかというくらいなのに)


この人は、なんというか私に甘い。今もこうして、私がプレゼントをもらったというのに、なぜかクエリーシェル自身が嬉しそうに笑っている。


「でも、ケリー様は私を甘やかしすぎです。誕生日会と言い、プレゼントと言い、散財しすぎですし」

「いや、今まで資産は使い道がなく、貯まる一方だったからな。経済を回せとクイードからも言われていたので、ちょうどいいのだ」

「でも、そうは言っても、私のことにではなく、ご自分のことにお使いください。ケリー様が立派に働いたことで得たお金なんですから」

「リーシェが喜んでくれるのが、私としては一番有意義な使い方なのだがな」


さらっとこういう人垂らしなことを言うのも、嬉しいと感じると共に、解せないという感情も同時に起きる。反比例する気持ち。比較的、私は自分に厳しいタイプだったので、こういう甘やかしは嬉しいとはいえ、慣れないのだ。


「では、何かお願いを言ってください」

「お願い?」

「いつも貰ってばかりなので、せめてケリー様の望みを叶えます」

「私も貰ってばかりだが」


キョトンとした表情の彼を見るに、恐らく普段の行いのことを言っているだろうことは安易に想像がついた。


「そ、れ、は!主従で当たり前のことというか、そういうのはあげるとか、そういうものじゃないので。とにかく、私ができることで、何かしたいことや欲しいものがあったら言ってください」

「んー……」


顎に手をやり、考え込むクエリーシェル。それを静かにジッと見つめる。


(そんなに考え込むほど、望みがないのか?)


ある意味不安になってくる。欲望というものが彼は薄いのだろうか。とはいえ、ここでいきなり「抱かせろ」とか、「高価なものを用意しろ」だとか、そういうのはそういうので困ってしまうのだが。


「では、ダンスはどうだ?」

「ダンス?」

「まだ私とリーシェは一度も踊ったことがないだろう?だから、一緒に踊りたいのだが」

「そんなことでいいのですか?」


なんだか拍子抜けである。寧ろ私も踊りたいと思っていたので、これでは結局私のしたいことでもあるのだが、そこはあえて言わなかった。


「曲はどうします?」

「ん?今踊るのか?」

「せっかくですし、今踊りましょうよ」

「疲れているのだろう?別に今日でなくとも」

「善は急げと言いますし、今は食事を済ませて元気になりましたので」

「そうか、なら」


お互い立ち上がり、手を握り合う。彼の大きな手で腰を引き寄せられ、身長差を埋めるためか多少覆い被さるように抱かれたことで、耳元に吐息を感じた。


ドレスよりも薄いチュニックのせいで、彼の体温をより感じることに、顔が少しだけ熱くなる。指の節や胸板、腹筋や太腿などが自分に触れていることを実感しながら、彼に抱きつくように距離を縮めた。


「部屋も狭いことだし、ヴェラーを踊ろうか」

「ヴェラーって、確か禁止されていたんじゃ」

「ここには私達しかいないのだから、誰かが口外しない限り誰も咎めるものはいないだろう?」

「それは、……そうですね」


無音のまま、ヴェラーを踊る。男女が身体を密着させるということで禁止されたこのダンスは、密かに民の間で踊られているのは知ってはいた。


確かに、ここまで密着していると体温どころではなく、鼓動や体型、筋肉の動きや肌の弾力感などが全てが伝わるので、見ようによってはふしだらだと思われても仕方ないだろう。


(私は、ふしだらな女なのだろうか)


彼との触れ合いが心地よい。力強く抱き締められ、まるで離さないとでも言われているような密着度に、鼓動が早鐘を打つが嫌ではなかった。寧ろ好ましいというか、もっと長くこうしていたいとすら思ってしまう。


(あぁ、もしかして、もしかしたら、私は彼のことを好きなのかもしれない)


まだ確証はない。でも、ニールとの縁談は絶対に嫌だと思ったのに、クエリーシェルとならしてもいいかもとも思ってしまう。ということは、きっとそういうことなのだろう。……なのかもしれない。


(でも、……私は彼を巻き込むわけにはいかない)


私と一緒にいれば、いずれクエリーシェルにも何かしらの不幸があるかもしれない。一緒にいたいのに、いることで傷つけるかもしれない恐怖。


それを隠すように、私はただただ彼に縋り付くようにくっつきながら、ゆっくりとステップを踏み続けるのだった。

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