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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
6章【外交編・ブライエ国】

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35 蓑虫

「あぁ、リーシェおかえり」

「ただいま戻り……なんか凄いことになってますね」

「ん?何のことだ?」


やっとこさシオンを連れて戻れば、目の前には縄でぐるぐる巻きにされ、口元しか出てない人形のような物体が転がっている。


思わずギョッとするも、ニコニコと出迎えてくれたクエリーシェルの手前、下手な反応はできずに、とりあえず「遅くなりましたが、戻りました」と挨拶をしとく。


隣にいるシオンも感心しているのか、はたまた気づいていないのか、部屋のほうに夢中で「[ほえー、凄いな。よくもまぁ、こんなもん作ったなぁ]」と独り言を溢していた。


(これ、絶対ギルデル……よね?えーっと、生きてはいるのよね……?)


ちらっと視線を向ければ、もぞもぞと動く物体。とりあえずは生きているらしい。


「はっ、その麗しいお声は……リーシェさん……!?リーシェさんがお戻りになりました!?」

「はい。戻りましたけど」

「やっぱり!ちょっとこれ、どうにかしてもらえません?貴女の美しくお顔も拝見できませんし、さすがにこの状態では僕の素晴らしい知性も……げふっ」

「……先程不用意な発言は慎めと言っただろう?」


クエリーシェルに蹴られて蓑虫のようにバタバタと動くギルデル。ちょっと可哀想になってきたが、未だに黒い殺気が出ている状態のクエリーシェルに何か言うこともできず、「どんまい」と思いながら気にしないことにした。


「[うぉ、なんかすげーことになってるな!]」

「[やっぱり気づいてなかったの]」

「[こいつがギルデルか?]」

「[えぇ、そうみたい]」

「[何でこんな状態に?]」

「[ちょっと色々訳ありでね]」


やはり気づいてなかったらしいシオンがぐるぐる巻きのギルデルを見るなり驚いていた。だが、説明をすると「[ふうん]」というだけでそれ以上に何かびっくりすることもない。


普通にしている辺り慣れているというのか、ただ興味がないだけなのか。ある意味変わり者の人々なので、こういうことにも順応性があるのかもしれない。


「[それで?何か情報は得られたのか?]」

「[いえ、これから]」

「[そうか、ならいっちょおれがやるかな。こういうヤツらゲロさせるの得意なんだ]」


そう言ってニヤリと黒く笑うシオン。突然ぶわっと何とも言えない負の気配がして、彼の残虐な部分が垣間見得た気がした。


「[じゃあ、お願い。私はギルデルのほうに詳しく聞くわ]」

「[あぁ、そうしてくれ]」

「[えーっと、殺さないようにね?]」

「[何の心配してんだ。慣れてるって言ってるだろ?大丈夫だ、殺さないギリギリは心得てる]」

「[なら、いいけど……]」


(ギリギリがわかるってことはそれだけ場数を踏んでいるということよね)


ブライエは戦闘が多いぶんそういう機会が多いのは知っていたが、それにしてもなんとも言えないリアルな部分にちょっと怖気づく自分がいる。


戦争とは、と上部の部分しか見ていなかったが、意思のある、1人1人それぞれの人生がある人達と命のやりとりをしているのだと思うと、自分がいかに甘い世界で暮らしていたかがわかった。


(でも、これも普通という認識をしちゃいけない)


このような世界を変えるのだ。こんな殺伐とした命のやりとりをしない平和な世界。それぞれの人々が相手の価値観を理解し、協調する世界。


そんな世界に変えていきたいと考えているから、私はここにいるんだと自分を鼓舞する。


だからこそ、これに慣れてはいけない。今は仕方がないことだとしても、私は慣れる必要がないのだと自分に言い聞かせた。


「ケリー様。ギルデルと話をしても?」

「あぁ、今後は首都を攻めるのだろう?」

「えぇ、ですからその辺について詳しく聞いておかないと」

「承知した。万が一吐かぬときは私が代わりにやろう」

「それは、……はい、もし私がどうしても引き出せなかったらお願いします」


(こっちはこのままだと殺しかねない)


クエリーシェルの不穏な雰囲気を感じながら、とりあえず転がってるギルデルを見下ろす。


(また彼のペースに飲まれないようにしないと)


下手にまたやらかしたら次がないかもしれない。彼だけではなく、違った意味で私も。


私は改めて気合いを入れると、しゃがみ込みギルデルに話しかけ始めた。

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