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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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54 理想的なシチュエーション

「お互いが想い合っているというのは、いいですねぇ……」


ニコニコとロゼットが私の手を握り、微笑む。何だか言われて気恥ずかしくなってくるが、ロゼットは相変わらずニコニコしたままだ。


「でも、ファーストキスが意図しない口移しってどうなんですかね?ちょっとそういうところがクエリーシェル様ってダメダメというか、乙女心わかってないですよね!」

「そうなのよね。そういうとこがあの人って朴念仁というか、なんというか」


素直に彼の好きという気持ちを理解し、受け入れるとすらすらと彼のことが口から出てくる。今まで溜め込んでいたぶん、この気持ちをわかってくれるのが嬉しかった。


「そうですよね。私もまだしたことはないですけど、キスをするならムードが欲しいです!」

「ムード?」


ムード、と言われてピンと来なくて聞き返すと、「ほら、普段の生活でいきなりチュッとされるより、先日私がお邪魔しちゃいましたけど、星空を見つつとか凄い憧れますー!」と頬を染めてきゃあきゃあと声を上げるロゼット。


意外にそういう希望とかあるんだなぁ、と思っていると「リーシェさんは?憧れるキスのシチュエーションとかあります?」と聞き返される。


「私は……」


(私は、どういうキスをされたいのだろう)


言われて考え込む。できれば、あのようなあったのかなかったのかわからないのはもう勘弁したい、とは思う。


しかし、ロゼットの言う、これと言ったムードがどうこうというのも想像できないというか、あまりしたいとは思わない。


(なら、何だろう)


そう考えて、先日ロゼットに薦められて読んだ本を思い出す。


確かその本では、色々仕事を終え、気落ちしていたときに背後から抱き締められ、そのまま振り向いたと同時に口づけられる、というものだった。


なんの気なしに、私とクエリーシェルで妄想してしまう。あの大きな身体でのし掛かるように抱き締められ、そのまま……


(ヤバい、胸がときめく)


頭が沸騰したように思考が飛び散る。


顔を赤く染めると、私が何か妄想しているのに気づいたロゼットが、「こら、妄想してないで教えてくださいよー」と脇腹を軽く小突かれた。


「……言うの恥ずかしいです」

「ダメですよ、私も言ったんですから!」

「……、どうしてもダメですか?」

「ダ・メ・で・す」


にっこりと圧をかけられる。こういうときのロゼットは容赦がない。


そうされると私はもうお手上げなので、私が妄想したあれこれを伝えると、「あぁ!そういうのもいいですねー!」と、きゃあきゃあ言うロゼット。


「普段の生活の延長線上っていうのも、案外いいもんですね。したことないですけど、されたらキュンキュンしそうです!あぁ、したいなぁ……」

「ロゼットさんはどういう人が好みですか?」

「私はそうですね、優しくて、でも強引で、ちょっとリードしてくれる人がいいです」

「それは、……身近な人で想像できないです」

「そうなんですよー、そういった方が近くにいなくて!あ、でも本でいいなら好みの男性いっぱいいますよ。『命の泉』のフリーゼル様とか、『燃ゆる木々』のバレンシア様とか!」

「見た目はイケメンで、優男系が好きなんですね」


言われたキャラクターはどれも王子様で、見た目とは裏腹に芯が強く、ちょっと強引で俺様な気質がある人ばかりだ。ロゼットがそういう人を好むのはちょっと意外で、興味が唆られる。


「それは、だって、イケメンの方が良くないですか?顔がいい方がときめきますし、ほら、子供だってきっと可愛い女の子やカッコいい男の子が生まれますよ!」

「すごいとこまで飛躍しますね」


今日のロゼットはいつになくテンションが高く、饒舌だ。それが面白い。今までこんなことを話したことがなく、いつも私語がそこまで多くない彼女がそんなことを考えていることが意外で面白かった。


また、話してくれることが打ち解けてくれたようで、それも嬉しかった。


(考えてみたら、私が壁を作っていたのかもしれない)


日頃の態度を振り返ると、思ったことを飲み込んだりただ考え込んだり、それを表に出すことはあまりなかった。


今まで、わざとというか、無意識に己の性質として、悩みや意見を自身の内に抱え込む傾向にあった。


だが、こうやって素直に感じたことや考えたことを話すと、相手からの対応もまた異なるのか、と気づいた。


(話す努力をしよう)


ロゼットだけでなく、クエリーシェルにも。素直に気持ちを伝えてみよう。


「あら、すみません!お話に夢中で朝食すっかり冷めてしまいましたね」

「あら、本当。私もすっかり忘れてました」


朝食だったはずのパンはカピカピ、スープは冷えて表面の膜が張られている状態になっていた。


「温め直してきますね」

「すみません、お手数をかけて」

「いえ、明日からまたリーシェさんには働いてもらいますから」

「もちろんです。体調もだいぶよくなりましたし」


お互いに笑い合う。


その後温め直してもらった朝食後、「明日働くためにも、今日まではしっかり休むこと!」とロゼットに厳命され、私はクエリーシェルが帰ってくるまで大人しく寝ることにした。

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