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有能なメイドは安らかに死にたい  作者: 鳥柄ささみ
2章【告白編】

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44 バラムスカ

私が1つ1つ話す話を、彼は特に止めることなく、また横槍を入れることなく聞いてくれた。全部話し終えると、色々言ったせいか、はたまた彼の反応が気になるのか、勝手に胸がドキドキする。


どんな言葉が返ってきても彼と共に歩もう、と決めたはずなのに、覚悟したはずなのに、身体が震える。私の意志はこんなにも弱いのか、と自分で自分が情けなくなった。


気持ち悪い、なぜもっと早く言わなかったんだ、汚らわしい、どんどんと頭の中に罵声や罵倒をするバラムスカが出てくる。


どんなに責められたとしても、隠しごとは隠しごとだ。これを明かしたことで、私と離縁すると言うのなら、それはそれで甘んじて受けねばならない。


(でも、それが恐い)


「マーシャル」


静かに名を呼ばれ、ビクッと身体を(すく)ませる。


(あぁ、やっぱり恐い。彼に何か言われるのが、彼と離れることになるのが)


「はい」


返事をする声が震える。涙が出そうになっているのに気づいて、必死で涙を堪えた。


「え、と、あのね、まずマーシャルが人の心の声が聞こえる、ということだけど、……実は、知っていたよ」

「は、……………は?え?ちょっと、え、まさか、え?知っていらっしゃったんですか?」


まさか知られているなんて答えは想定外で、動揺して上手く反応ができない。というか、どうして、知っているんだ。私が人の心を読めることなど、親や妹すら知らないことだというのに。


呆然としていると、バラムスカが苦笑する。そして、そっと私の髪を撫でると、震える私をそのまま抱き締めてくれる。


「どうして……」

「マーシャルを見ていたらわかるさ。君は隠しているようだったけど、私が考えることを口にこそ出さないけど、私が思った通りの行動をするからね。随分察しがいいなぁ、とも思ったけど、それが重なると、ほら、ね?そもそも君は神秘の人だし、そういう能力があってもおかしくないな、って思っていたんだ」


なんていうか、思わず脱力してしまう。私が隠していたつもりが、全然意味がなかったなんて。


というか、そんなにあからさまな行動をしていた自分が恥ずかしい。そして、指摘されて言われてみればそうだ、と気づいた自分も恥ずかしい。


「ごめんね、マーシャルがそんなに気にしているとは思わなくて。私も早く言えば良かったね」

「いえ、元はと言えば私が隠していたのですから。ごめんなさい、隠しごとを」


おずおずと彼の背に腕を回すと、ギュッと抱き締める力が強くなる。それが、嬉しくて、安心できて、身体の震えもいつの間にか治っていた。


「もう大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「そうかい?私としてはもう少し抱き締めていても良かったけど」

「……それは、またあとで」

「仕方ない、時間がないのだからね。では、もう1つ、父が考えているという『転生計画』についてだけど、正直私もそれについては全く知らなかった」

「そうですか……」


一難去ってまた一難。彼がこの計画について知らされていないことを考えるに、この計画はバラムスカに知られてはまずいということになる。つまり、バラムスカにとって不利益なことだということだ。


(振り出しに戻ってしまったのか)


「もしかしたら、関係ないことかもしれないけど」

「?」


バラムスカがぽつりと口に出す。


ーーそういえば、私の母が呪術使いの一族だと言っていた気が。


「え?どういうことですか?」

「ごめん、口に出すより先に思考していた」

「あ、いえ!すみません、思考を読んでしまって」

「いや。で、私の母のことだが、私は今回の結婚のときのように呪術使いの一族から引っ張ってきたらしい。父の強い望みでね」


バラムスカが言うには、バレス皇帝には幾人もの側室をもうけ、何人か子供を授かっていたそうだが、正室のところには子供ができなかった。


だが、子供はある程度の年を重ねると皆一様に病死してしまう。そこで、バレス皇帝は藁をもすがる思いで、呪術に頼ることにしたそうだ。


そのときに、正室を(ないがし)ろにしているせいで御身が呪われていること、そのため子供が育たないこと、子供が欲しければ呪術使いの一族の者を身内に入れて側室とすることを言われたそうだ。


バレス皇帝はその指示通りに呪術の一族の娘、バラムスカの母を(めと)り、そしてバラムスカを産んだ。そして呪いが解けるかと思いきや、呪いは解けず、バラムスカ以外の子は授かることはできなかった。


次第に苛立ったバレス皇帝はその怒りをまずは正妻に、そしてバラムスカの母に。彼は怒りのまま、彼女達を処刑したという。


「それでさらに呪いを悪化させて、左目が不自由で右耳が聞こえづらいとは聞いているけど、本当のところはどうかわからないんだ。私は父から隔離されて育てられたから」

「隔離?」

「あぁ、一応後継ではあるけど、呪いのこともあって、疑心暗鬼になっているようでね。私はあまり近寄らせてもらえなかった。そのことを不憫に思った使用人達が色々と教えてくれたんだけど、結局そういうことを私の耳に入れたことを(とが)められて処刑された者もいたよ」


どこか寂しげな瞳をする彼を、ギュッと抱き締める。私は家族から愛されて育った自覚はあるからこそ、バラムスカの寂しさがよくわかる。


「私も真実が知りたい。だからマーシャル、一緒に探そう」

「えぇ、もちろん。私は貴方の妻ですから、バラムスカ様の望むままに行動しますわ。あと、私の愛では足りないかもしれませんが、私がバラムスカ様のことを誰よりも愛しますから、そんな悲しい顔はなさらないで」

「ありがとう、マーシャル」


ゆっくりと彼の唇に口付ける。初めて、心を通わせたキスは、少ししょっぱかった。

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