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第十幕 大友の謀略

永禄十年


 北九州で毛利と大友の戦いが続いている、毛利元就の調略で北九州の領主たちが大友に背き大友の忠実な家臣であるはずの高橋鑑種までも反乱に加担した事で毛利優勢となっていた。


 その打開策として大友は幾つかの手を打っておりその一つが長門国に伸びてきていたのであった。



「では、大友殿は我が尼子に合力して下さると?」


「然り然り、我が主は尼子殿が出雲にて再び立たれるのを期待しておいでです、これは些少ですが挙兵の折にお使い戴きたい」


 渡された目録を受けて目を見張る。


「刀に槍、弓矢は兎も角鉄砲に弾薬までもですか!」


「左様、品々は博多の商人達に出雲まで運ばせます」


「博多は高橋鑑種が押さえているのではないですか?」


「商人達は誰が一番なのかは承知しているのですよ、九州で大友に逆らう者は居りません」


「流石ですな、尼子家としては末代まで感謝いたします」


「では決行のほどよろしくお願いします」


 美祢の尼子屋敷から客が去ると客間にいた人物は大きく息を吐いた。


「うまく騙せたようだな」


 隣の部屋に恐らくは伏せていたのだろうか男が音も無く滑り込んでくる。


「ああ、まさか義久殿が替え玉とは気が付かなかったようだな」


 今まで尼子家当主として振舞っていた男は今は全く別の顔を見せていた。


「だが大友も必死だな、こうまでして尼子を動かそうとしている」


「恐らくは出雲にも手を打っているはずだ、義久殿が出雲に入ったら一斉に蜂起する手はずなのだろう」


「出雲の方に張り付いている者たちがいずれ炙り出すでしょう」


「後は義久殿が動けなかった場合を考えての予備だな」


「その様な方が居るのでしょうか?」


「京に居られる方や新宮党の生き残りの方などだな、大体は居場所は掴んでいるから問題は無いが」


「そちらの方は山中殿が抑えているはずですな」

「大友も当てが外れたな、一番協力しそうな男が毛利方なのだからな」


 そう話ながら尼子家の監視役と外から接触してくる者に対応する影武者は部屋を出て行った。無論彼らは世鬼衆の一員である。


 大友の策はその最初からほころびを見せていたのであった。




「大内の残党が蜂起する?」


「その可能性が大きいでしょう、出雲で尼子が長門・周防で大内が蜂起すれば九州に出征している軍を引き返す事になり大友は叛いた領主たちを討伐する事が出来ます、流石に高橋殿といえど毛利無しには戦えますまい」



「確かにな、世鬼からも尼子本家に使者が忍んで来たと報告があった」


「出雲の領主たちにも現れたらしいですな、知らせてきて二心無きを誓った者たちとだんまりな者たちと分かれていますが」


「その辺の調査も必要だな、場合によっては先手を打ち取り押さえねば」


 此処は豊前国門司城の本丸の屋敷である。毛利本陣が置かれたこの地に集まった毛利の首脳たちの前で報告する鹿介の姿があった。


「こうなると鹿介が味方でよかったわい、少なくとも出雲は安心できよう」


 吉川元春が言うと全員が頷く。


「後は大内残党ですか、ですがどのようにして蜂起するのでしょうか?」


 輝元が尋ねると小早川隆景が答える。


「恐らくは大友に居る大内家の係累を送り込んでくるのでしょう、確か大内義興殿の弟が大友に身を寄せていたはずです」


「そんな人物が居たのですか? どうして今まで出てこなかったんでしょうか?」


「恐らくは傀儡にも使えない暗愚な者であったか逆に使い捨ての道具にされるのを拒んで表に出なかったのか、後者のような気がしますな」


 輝元の再度の問いには鹿介が答える。


「大友は当主の弟を陶の求めに応じて大内の当主に据えましたが戦況不利となると見捨てました。身内でも簡単に捨てる大友に警戒をしているのでしょう」


「ありえるな、だとするとまともな判断力を持った者ということで厄介になるかな?」


 小早川隆景の解説に吉川元春が案じる。


「かも知れませぬな、ですが来ると分かっていれば対処は簡単です、動きの怪しい者たちを抑えて置き要所を兵で固めておけばよろしい、山口を押さえる市川殿に下知すれば足りましょう。我々もお手伝いします」


「鹿介が手伝ってくれるなら百人力だな、味方にすれば頼もしい」


 元就が言うと皆が笑い対策を詰めて集まりは終わりとなった。


「後一つお願いがあるのですが……」


 最後に鹿介が頼みごとをして元就達が了承し、鹿介は海峡を渡り長門国へ戻っていった。



 

「父上はああ申されましたが鹿介は頼りになるのですか?」


 小早川隆景が疑問を呈すると輝元も頷く。


「なんだ、まだ疑って居るのか?」


 吉川元春は眉根を寄せたが元就は淡々とした表情で語り出した。


「その懸念は尤もであるが杞憂に過ぎないな、美祢を得て彼らは新たな商売のネタを手に入れたのだ、戦となればそれは全て失われる、もしも大内が復活すれば美祢を取り上げようとするだろう、出雲に返り咲くより儲かる土地を取り上げられる方が痛手は大きい。その様な勘定にあわないことはすまいよ」


「ではまるで商人ではないですか」


「本人も言っていたであろう、商人を目指すとな、忘れたのか?」


 そう言って呵呵大笑する元就に何も言えない隆景と輝元であった。





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