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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
冬の足音が聞こえるのです

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56/74

tmp.49 動き出す世界

 おバカさんたちを追い返してから一月ほど。ダイエットも成功して元通りの体型になりましたし、幸いにも天候はそこまで荒れず、平和な時間でした。そして最近になってまた獣人等が流入してくるようになりました。


 どうやら彼等達の間で森の国、『ムーンフォレスト王国』の噂が広まっているようで、最後の希望としてここに庇護を求めに来ているのだとか。人が増えれば食料や住む家は必要。でも冬場で動けません。しょうがないのでご主人さまが緊急で天候対策の魔道具を創造し、里の人たちと一緒に集落の拡張に励んでいました。


 同時に武器の製造も始めて本格的にチートが始まったようです。因みに今のところフォーリッツからのリアクションはありません、どこか病んでる気配を感じる風から届いた噂では軍がこそこそ動いているそうで、恐らく春頃に本格的な戦争が始まるのでしょう。


 殺し合いはさすがに滅入るのです……。


「少なくともこっちの人員は死なせるつもりはない」


 とご主人さまが豪語していたので、心配こそしていないのですが。



「我らも殿下と共に戦いたく思います」

「ありがとう、君たちの助力を得られるなら百人力だ」


 里から少し離れたところ。結界を隔てた場所にある屋敷の中。ご主人さま曰く大使館では最近になって流民に混ざって集まり始めた兄王の支持者たちとの面通しが行われていました。最初はみんな若い国王であるご主人さまを訝しむのですが、たまたま襲ってきた大型の魔物を一瞬で消し飛ばしたところ遠い目をして失礼な態度をしなくなってます。


 ルルが怪我の療養中なので、ボクとユリアはメイドさんルックでご主人さまの背後についてお手伝いです。療養と言っても数日前にリアラさんに完治宣告されていて、訛った身体のリハビリが主な仕事のようでした。


 医者(ロリババア)からえっちおーけーと許可が出た途端、獰猛な肉食獣と化してご主人さまに襲いかかっていたのには笑いましたが。


 そんなわけで、順調にこちら側の戦力も整ってきているのでした。まぁフォーリッツ側の人間を信用する訳にはいきませんけど、今のところ問題のありそうな人は紛れ込んでいません。


「シュウヤ陛下、我々への数々の支援、感謝致します、

 これからも何卒、ご協力をお願い出来ますれば」

「ええ、共に王国を取り戻しましょう」


 最後に今回訪れた団体の代表らしきおじさんとご主人さまとの挨拶が終わり、一段落。支持者の皆さんを見送った後は里に戻り、武具製造施設の視察と忙しいのです。


「それでは殿下、私共は里へ視察へ行くので」

「解りました」


 アラキスさんに頭を下げてから大使館(仮)を後にして、三人揃って身体を解しながら雪道を歩きます。


「堅苦しいのは疲れるのです……」

「本当ですね……」


「後は気楽でいいから、頑張れ」


 ぽんっと頭を撫でられて、ユリアは少し元気が出たようですがボクの方は全然です。甘いものと休息を要求します、身体がだらけることに飢えているのです。怠けさせろー!!


 なんて内心で叫びながら里の一角に作られた、冬でも暑い工房へたどり着くと、丁度ドワーフのおじさんが試作品らしき鉄の筒を持って出てきていた所でした。


「おぉ、シュウ坊じゃねぇか、待ってたぜ」


 仮にもコレは国王なのですが、まぁ形式ばった国じゃないので気安いのは良いことでしょう。それよりも彼が手に持っているものが気になります、ボクの思い違いでなければあれは……。


「親父さん、ついに出来たか?」

「おう、連射速度そのままで耐久性も問題なしだ、苦労したぜ」


 ご主人さまが手ずから受け取ったそれは完全にライフルです、本当にありがとうございました。


「なんつーものを……」

「お嬢様、何ですかあれ?」


 流石にものほんのライフル機構を持ち込んではいないのでしょうけど。オーバーテクノロジーにも程があります、こっち側に死者を出さないの言葉が信憑性を帯びてきました。


「たぶん、銃っていう武器だと思いますが」

「正確には魔法銃だな、魔法を込めた弾丸を装填する事で魔力を使わずその魔法を連射できる。

 銃弾自体は普通の魔法使いでも出来るように調整中だが、基本的には俺とリアラさんで作る」


 魔法と科学の融合ですね、流出したら世界の戦力バランスが一変しそうです。


「シュウ坊の言ってた"みにがん"? だったか、それも試作品ができてるぜ」

「流石だ親父さん、完璧だ」


 うふふ、殺る気マックスですねご主人さまったら。一応奪る予定の国の民ですから必要以上に殺さないようにして欲しいのですが。


「"みにがん"ってなんか可愛い名前ですね」

「そうですね、名前は可愛い感じですね、名前は」


 地球版のは可愛いだけじゃなくて敵に痛みを感じさせないとっても優しい武器ですよ。


「ちょっと試し撃ちしてくれねぇか?」

「あぁ、任せろ」


 微妙にテンションの上がったご主人さまに連れられて工房の裏手に行くと、すでにある程度の準備は終わっているようでした。用意された鎧型の的に向かってライフルを構えると、バーンと空気を振動させるような炸裂音を立てて魔法が飛んでいきます。


 どうやら引き金を引いた時に込められた炸裂式の魔法が発動し、弾丸の魔法を込めた魔石を発射する仕組みになっているみたいです。視認出来ない速度で飛んでいった魔石が的に当たると光が弾けて、その場で爆風が巻き起こりました。鎧がひしゃげて飛んでいき、地面にクレーターが出来上がります。火が出てないので風の魔法ですよね多分。


「精度は問題ないが、少し威力が高すぎるか」

「みたいだな、調整しておこう」


 呆気にとられているユリアをよそに、今度は台座に乗せられた、鉄の筒を円状に配置した巨大な砲台。言ってしまえばガトリング砲らしきものが出てきました。セットされた砲台が用意された大岩の方を向きます。


「全員音に気を付けろ!」


 離れて耳をふさいだところで魔法陣が浮かび、カラカラと音を立てて砲身が回転しはじめました。同時に3枚の魔法陣がターゲットサイトのように前へ浮かぶと、連続した炸裂音が響き砲身が火を吹きました。


 耳をふさいでいても鼓膜が破れそうな音と共に吐き出された魔法弾は、岩を粉微塵に砕きながら背後にある木々を吹き飛ばし、地面を掘り返し土を巻き上げます。射撃が止まり、土埃が晴れた後、まるで竜巻でも通ったかのような痕が数百メートルに渡って地面にくっきりと残されていました。


 その場に集まったドワーフや獣人達が唖然と口を開いたまま誰も喋りません。


「ご主人さま、これは一体何と戦うことを想定して作ったんですか?」


 何だか気まずそうな顔をしているご主人さまに問いかけると、頬をかきながらバツが悪そうに答えました。


「重鎧を来た……人間?」

「間違いなくミンチよりひどいことになるのですよ!!」


 痛みを感じないとかそんなレベルじゃありません、粉微塵です!


「いくら何でも虐殺はドン引きです」

「俺もそう思う」


 肩を落として自重すると言ったご主人さまと共に工房を出た頃、遠い目をしていたユリアがぽつりと「……全然可愛くありませんでした」とつぶやいていました。


 他にも魔法剣やら何やら、ご主人さまと工房の職人たちがノリにのって作りまくっていたようです。



 それからも人が増え着々と準備は進み、やがて雪が溶けて冬が終わりを告げる時がやってきます。フォーリッツ王国が本格的に動き始めたのは、丁度その頃でした。

【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【0】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【0】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}-◆【1130】--◆【482】--◆【530】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[ソラ][Lv30]HP70/70 MP1415/1415[正常]

[ルル][Lv65]HP900/952 MP40/40[正常]

[ユリア][Lv62]HP2360/2360 MP105/105[正常]

[フェレ][Lv45]HP330/330 MP1030/1030[正常]

[シュウヤ][Lv110]HP3512/3512 MP3425/3425[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>55

[MAX HIT]>>55

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

耳「敵が可哀想です」

猫「ほんと味方で良かったよね」

牛「男を見る目にちょっと自信がもてそうです」

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