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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
新天地でなんやかんやなのです

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37/74

tmp.33 時には忘れたいこともある


「……やらかしたのです」


 新しく完成したぷち我が家、その一階にあるフェレ用に充てがわれたプールエリア。外の湖から浄化して温水にした水を引き込み、部屋の半分をプールのようにしたちょっとおしゃれな空間。ご主人さまが妙なこだわりを見せて海の入り江まで再現してしまったその部屋の中、ボクは浅瀬の部分で"裸"のままで頭を抱えていました。


 隣では肉食魚が捕食を終えて満腹になったような顔で眠っています。妙につやつやしてるのはきっと気のせいじゃありません。


 何があったのかというと……お酒は怖いとだけ言っておきましょう。



 建築作業を始めて半月ほどで二階建ての家と、隣に建てられた2LDKほどの間取りの小さな家が完成しました。因みに小さい方の離れは葛西さんの家になってます、これは別にハブッてるわけじゃなく、これからはまぁ、家の中でそういうこともあるでしょうし、若い彼にはちょっと毒がすぎるだということで本人同意のもとで、彼専用のお家を作ることにしたのです。


 この話をした時にホッとしていたあたり、彼からしても辛い環境だったのでしょう。ここ最近は体力に余裕が出来てきたおかげか夜中にもぞもぞしたり、気配を殺してトイレに行く回数がちょっとだけ増えてましたしね……かわいそうなことをしました。


 何はともあれ新居が無事完成したということで、その日の夜は家の落成祝いで秘蔵のお酒を取り出して、飲めや歌えやの大騒ぎになりました。そこでボクはジュースと勘違いして口にしてしまったのです、禁断の飲み物を……。


 そこからは妙なテンションになってフェレと一緒に歌いながら、宴は大盛り上がり。その時点で完全にぶっ壊れていたボクはご主人さまやユリア、ルルにちゅーして周り、最後にフェレにもぶちゅっとやらかして、無理矢理お酒を飲ませました。


 この時点で立派なアルハラです、現代なら訴えられても文句は言えません。二人して見事な酔っぱらいと化したボク達は散々歌ったせいで眠くなってきていたので、ご主人さまたちに断り、へろへろになっていたフェレを出来たばかりの彼女の部屋へと送りました。


 そして大きな温水プールを見たボクは一体何を思ったのか、フェレを専用ベッドに寝かせると服を脱ぎ捨ててプールへダイブ、泳ぎ始めました。自分でも酔っ払った時の自分の行動が理解できません。


 途中で多少酔いが醒めたフェレもプールへインして一緒に泳ぎ始めて、その間に変なテンションが加速してどちらからともなく顔を近づけて……朝方、ボクはフェレの腕枕の中で目を覚ましたのです。


 幸いにも最後までというべきか、彼女は変態だけど普通に女の子で、ボクも中身は男だけど身体は女の子で、ご主人さまとの時のように何かがインしたりアウトしたりする取り返しの付かない事態にはならなかったのですが、随分長いこといちゃついてた気がします。黒歴史追加ですね……。


 以上で回想はおしまい……現実逃避はそろそろやめて脱出しましょうか。


「ん……」


 寝返りを打ったフェレを起こさないように音を立てず、抜き足差し足で浅瀬を抜けると、備え付けのタオルで手早く身体を拭いて服を着ます。水中でしたし変な匂いはついてないはず、さっさと自分の部屋に戻って二度寝しましょう。


 周囲の気配を伺いながらそそくさと部屋を出ます。幸い廊下には誰も居ないみたいです、今のうちに二階にあるボクの部屋へ。


「ソラ」


 そう思って一歩踏み出した時、廊下の奥の方から声がかかりました。とても聞き慣れた声です、可能ならいま一番聞きたくなかった声でもあります。これが機械なら錆び付いた擦過音をさせてもおかしくない緩慢な動作で背後を見ると、いつもより三倍くらいは優しそうな笑顔を貼り付けたご主人さまが立っていました。


 見た瞬間、脳内で警報がけたたましく鳴っているかのような錯覚を覚えます。確かに凄く優しそうですけど、奥にあるものはもっとドス黒いのが解ります、解ってしまいました。


「ひっ……」


 返答は言葉にならず、くぐもった悲鳴のように漏れました。ご主人さまはゆっくりとした足取りで近付いて来ます。それはさながらホラー映画の怪人が迫ってくるような緊張感を伴って、ボクの恐怖を激しく煽ります。


 だけど逃げることは出来ません、脚がすくんで動きません、涙で視界がにじみます。背中が壁に触れました。ボクを見下ろすご主人さまが優しく髪の毛を撫でながら、口を開きます。


「朝までフェレの部屋で何してたんだ?」


 いきなりドストレートでした、心臓をライフル銃で撃ちぬかれたような感覚を覚えながらも、必死で意識を繋ぎ止めて頭を回転させます。恐怖で失神してしまえたら楽なんですが、きっとそれじゃあ何も解決しないでしょう。


「いや、その、一人で寝るのは寂しいって、言う、から、ですね」


「そうか、それで付き合ってやってたんだな?」


 ご主人さまの表情は変わりませんが、プレッシャーが増しました。


「俺も一人寝が寂しいんだ、もちろん一緒に寝てくれるよな?」


「それ、は」


 いつもみたいにイヤだと即答することが出来ませんでした。それだけは言ってはいけないと、ボクの中の生存本能が悲鳴をあげているのです。生き残るため、明日を拝むために今は自分を殺し、頷きます。


「も、もちろん、ですよ、ご主人さま、

 寂しがりなご主人さまの、ために、いつでも、一緒に寝てあげるのデス」


 かちかちと、酷く拙くはありましたがなんとか言い終わりました。返答を聞いたご主人さまは満足そうに笑っていました。


「そうか、良かったよ……」


 プレッシャーが消えました、な、なんとか生き残れましたか……?


「あゃんっ!?」


 しかし突然、ほとんど不意打ちに近い形でご主人さまがボクの耳を噛みました。悶えるボクを抱きしめると耳に息を吹きかけてきます。


「本当に良かったよ、俺って結構独占欲強いからさ、

 もし断られてたら……」


「ひっ、んっ……こ、断って、たら?」


 反射的にオウム返ししてしまいましたが、聞きたくありません。聞いちゃいけない気がします。またプレッシャーが増してるのです、今までの数倍というかご主人さまあの、殺気に近いものを感じるんですけど。


「もう二度と俺以外を見れないように、考えられないように、

 …………ソラの事、滅茶苦茶に壊してたかもしれない」


「ぴっ!?」


 意思とは関係なく身体がガタガタと震え出します。別に寒くないのに凍えてしまいそうです。ご主人さまとは何だかなんだありながらも、それなりに気心がしれている自信はあります。だからこそ解ってしまいました、ご主人さまの言葉はおそらく本気です。


 もしもこれ以上の不興を買ったら一体どんな目に合わされるのか、怖すぎて想像したくもありません。ご主人さまは基本的にはやさしいですけど、容赦シない時は本気で冷酷というか、血も涙もないのです。殺ると言ったら殺る、犯ると言ったら犯る。


 大人しく震えているボクの様子に満足したのか、最後に頬にキスをして身体を離しました。もうプレッシャーは消えていて、体中からどっと汗が溢れます。


「それじゃあ、夜を楽しみにしてる」


「は、ぃ……」


 軽快に立ち去るご主人さまの背中が見えなくなるまでその場で見送り、壁に背を預けてずるずると座り込むと、深く深く息を吐きます。うぅ、一晩の過ちの代償は酷く高くついたのです。目尻に浮かんだ涙を拭い、よろめきながら立ち上がると壁に手をつきながら出来たばかりのお風呂場へ向かいます。取り敢えず今は、このぐっしょり濡れた下着を履き替えたいという思いで一杯でした。 



【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【34】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【34】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}--◆【772】--◆【265】--◆【289】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[シュウヤ][Lv77]HP1212/1432 MP1230/2530[正常]

[ソラ][Lv19]HP3/60 MP733/733[過労]

[ルル][Lv54]HP735/735 MP36/36[正常]

[ユリア][Lv44]HP1540/1540 MP88/88[正常]

[フェレ][Lv28]HP182/182 MP530/530[正常]

[マコト][Lv42]HP724/1090 MP122/152[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>34 << new record!!

[MAX HIT]>>34 << new record!!

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

「しくしくしくしく……」

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