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ご主人さまとエルフさん  作者: とりまる ひよこ。
日本人は業が深い生き物なのです

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24/74

tmp.22 餅を焼くなら磯辺焼き

「昨日はすいませんでしたぁぁぁぁ!!」


 うん、久しぶりに土下座なんてものを見ました。翌日、フードで顔を隠して日本人らしき彼を探し冒険者ギルドのデーナ支部に顔を出してみると、偶然にも顔を腫らした彼が居て、ルルの姿を見るなり土下座をしてきたのです。


「う、え……?」


 初動に警戒しまくっていたルルは突然の見慣れぬ謝罪にあからさまに動揺してます。こっちには土下座っていう文化ないですものね、平伏は謝意ではなく服従と恭順を示すものですから、周りの人達も完全に置いてけぼりです。


「いや、あの、昨日はテンション上がりまくってて、

 憧れの猫耳を見つけてつい手が伸びて……ほんと申し訳ありませんでした!」


「……え、えーっと、謝ってる、のよね?

 とりあえずもう二度とやらないで、後私には近付かないで」


 ピシャりと言い放つルル、まぁ悪気がなくても痴漢するような男はそう簡単に許せませんよね。彼はもっと深く反省をするべきなのです。


「わ、わかり、ました……」


 彼はまだ未練タラタラな様子でルルを見ていますが、とりあえず言われたとおりに近づかないようことにしたみたいです、あからさまにしょんぼりしてますね。


「あと、私はシュウヤ様の所有物だから、

 謝る気があるんならシュウヤ様にも謝ってよ」


 所有物と聞いて彼はピクりと顔を上げて、難しそうな顔をしてルルの首に付けられているチョーカー型の首輪を見つめてます。


「所有物……って?」


「私たちは奴隷だから、主の所有物なの、

 人様のものに勝手に触れるのは犯罪なのよ?」


 何故か奴隷なのに胸を張って威張るルルですが、彼は酷くショックを受けた様子で狼狽しはじめました。


「奴隷って…………」


「ボクたち三人ともこちらのご主人さまの所有物なのです、

 もちろん大事にされて……るはずなので同情とかはいらないのです」


 あの茶髪くんみたいに変な勘違いされる前に先手を打っておきます。彼みたいに暴走した挙句違約金やら補償金、死んだ仲間たちへの見舞い金が積み重なって借金地獄に堕ちるのを見るのは忍びないのです。


 戸惑った様子の彼が僕達の先頭にいたご主人さまを見つけて、驚きに目を見開きます。ご主人さまは日本人ですからね、顔の作りも違いますし同郷の人間が見ればわかります。ご主人さまに動揺がないのは僕が事前に伝えていたからでしょう。


「あんた、まさか……」


「初めまして、俺は如月秋夜(きさらぎ しゅうや)だ」


 先手を打って先に挨拶を済ませたご主人さまに面食らった様子の彼が、戸惑いもそのままに返礼しました。


「や、っぱり……お、俺は葛西誠(かさい まこと)、17だ!」


 やっぱり彼は、日本人でした。



 葛西さんが転移したのはこちらの暦で三ヶ月ほど前。学校に行こうと玄関を開けて外に出た瞬間、見知らぬ森の中にいたそうな。それからはサバイバル生活で森を抜けて、親切な冒険者のおじさんに助けられて旅をしながらやっとここにたどり着いたのだとか。


 で、数ヶ月間ずっと諦めてたお米を見つけて発狂、更に異世界で初めて見た亜人トリオを見てタガが外れて犯行に及んだらしいのです。はた迷惑な話ですね。


 以上がギルドに併設された酒場で聞いたお話なのです。彼もそれなりに苦労してきたようですね。一頻り泣き言を言ってご主人さまに励まされた現在(いま)は、欲望のほうが勝ったのかちらちらとルルを見ては奴隷の購入方法とか使い勝手について聞いているようです。


 少し前まで奴隷だなんてそんな可哀想にと言いたげな顔をしていたのに、これが若さって奴なのですね。二人まとめてもげればいいのですよ。変態どもめ。


「俺にも憧れの猫耳奴隷が……」


「また開き直ったなぁ」


 奴隷が合法でしょうがないもの、扱いを良くすることで一人を助けてやったと思えばいいという、ご主人さまの巧みなすり替えによって罪悪感の矛先を変えた彼は、欲望に忠実に理想の猫耳奴隷を手に入れる計画を練っているようでした。


 えーっと確か15歳前後の女の子の獣人族は犬族が金貨20枚、猫族が金貨12枚、兎族が8枚が相場でしたっけ。中級冒険者なら頑張れば2~3年でたまる額ですね、猫耳奴隷といちゃいちゃできる日がいつ来るかは彼の頑張り次第でしょう。


 値段についてですが、この三種族は結構数が居るのです。犬族が高いのは種族の特徴として勤勉かつ上位者に忠実というものがあるので、躾をしやすいことと奴隷としては非常に扱いやすい事が理由らしいです。


 猫族は主を認めた相手は立てますが奔放な所があるので少々扱いにくく、兎族はあんまり頭がよろしくないので性奴隷くらいにしか使えないそうです、容姿は良いので。


 そう考えるとルルが猫耳族の中でもかなり高値がつけられていたのが解りますね、ユリアに至っては他種族ぶっちぎりです。ボクの値段については正当な評価ではないので気にしないのです。えぇ、気にしないったら気にしないのです。


「男の人って……」


 別のテーブルで男同士、理想の乳談義を始めたのを見てユリアが軽く絶望してます。ルルは平然としてますけど、これが一度男に捨てられた経験があるかないかの違いでしょうか。悲しい差なのです。


 しかしいつだったかアッチが強いのも雄の魅力の一つだと言っていた気がするんですが、この落差は何なんでしょうね。


「最近のシュウヤ様、せんぱいばっかり可愛がってるから拗ねてるんですよ」


 ユリアの反応に悩んでいると密偵から答えが返って来ました。これは後でもっと他の奴隷にも気を配るように言っておかなければいけないかもしれません。不満は早い内に解消しておくに限りますからね、ボク抜きで頑張ってもらいたいです。



 ご主人さまと葛西さんはエロ談義を通じて意気投合したらしく、ボク達の泊まっている宿に場所を移して何故か酒盛り状態になっていました。未成年が飲んでいいのかとも思ったのですが、こちらの成人は15歳でそもそも飲酒を禁じる法律はありません。小さな子供に強い酒を飲ませるのはあまり推奨されないようですが、逆に言えばその程度。


 そんな訳で宿の一階にあたるバーラウンジで、ボクたちにも口当たりの柔らかいお酒が振舞われていました。お酒と言ってもジュースに近い感じのようで、苦いけど飲もうと思えば飲める味です。


 まぁボクはジュースのほうが好きですね。


「ふあー、これ美味しいー!」


「そういえばお酒を飲むのは久しぶりな気がしますね」


 ルルとユリアも楽しんでいるようです、というかルルが案外ハイペースなんですが大丈夫でしょうか。ご主人さま達も意外と強いようで、異世界故に堂々と酒が飲めると肩を組んで乾杯してたりします。


 途中で日本の話題で盛り上がったりしていて何だか楽しそうです……、ボクと話してる時はずっとにこにこしててもあんなに楽しそうに笑っているのは見たことないのに。何だか腑に落ちないのですよ。


「せ、せんぱい、ちょっと飲み過ぎじゃ?」


「ひんぱい、いらないのれす、これ、よわいおしゃけれしゅから」


 あんまり強くないと聞いているのです、ルルは心配症ですね。今だって全然平然としてるのに。


「これ、強くないって"火酒と比べて"だった気が……」


 大体にして、ご主人さまは勝手なのです。そりゃ最初はボクのほうから買ってくれってアピールしましたけど、奴隷だからってこっちの意思を無視して押し倒してきたり、あんなことや、あまつさえそんな事までしてきたのに。


 それでも、故郷の話ができる人間が傍にいるのは嬉しくて、ご主人さまもそうだと思ってたんですけどね、結局ボクに求めてたのは身体だけだったって事ですか、そうですか。


 グラスを一気に煽ると、流石にちょっとクラッときました。


 漫画の話、学校の話、スポーツの話、ドラマの話、映画の話。二人はまるで今まで貯めていたもの全て吐き出すように話しを続けています。ボクだって混ざれるのに、解る話題が一杯あるのに、ボクはあの場に求められてません。


 無性に腹が経ってムカムカします。なんですか、ボクのことさんざん好きだって言ってたくせに、毎日のように愛してるっていってくるくせに、本物の日本人がきたらポイ捨てですか。所詮偽物の女で偽物の日本人なんてお呼びじゃないって事ですか。


「せんぱい、もうその辺に……」


 うるさいのです、ご主人さまに一発ガツンと文句を言ってやります。っとと、立っただけで酷い立ちくらみが、ふらふらします。


 目眩を我慢してご主人さま達のところへ行くと、取り敢えずご主人さまの膝にどっかと座り込んでもう一人のしょうゆ顔を睨みつけます。いきなり現れて何のつもりなんですかね、新参者め。


「……ソラ?」


「え、えーっと? シュウヤ、これは」


 何ですかその眼は、なんか文句あるんですか! 今までも散々、ボクが嫌がっても膝の上に乗っけようとしてきておいて、やっぱりいらないこですか、役立たずは捨てられるのですか! 認めません、ぽっとでの同郷人なんかにこの安全安心な場所は渡さないのです。


「ごしゅりんひゃま、は、ぼくと、はなしゅの、れす!」


 はん、言ってやったのですよ! 呆然としてる顔がマヌケなのです。ボクが必死で守ってきた場所を取ろうとする方が悪いのですよ、けらけら。


「…………あー……なんだこれ」


 ご主人さまが妙に強く抱きしめてきました、ボクのほうも抱き返しながらどんな事を話そうか考えます、映画ですかねドラマですかね、ご主人さまは刑事物が好きだったみたいです。ボクもひと通り見てるので結構いける口ですよ。


「あー、ソラ、俺の方から抱きしめといて何だが、

 そろそろ離れてくれ、色々と我慢できなくなる」


 いきなり何を言うんですか、やっぱりボクはいらない子なのですか、邪魔な子なのですか? にせ、偽物はいらない、のですか?


「や、です……ぼくの、こと、しゅてない、れくらしゃい」


 ご主人さまに捨てられたら、行く場所がないのです。自分の身を守ることすら出来ないのです、ご主人さま以上に優しい人に拾われると思えるほど楽観的でもありません。エロい事はされるし、恥ずかしい思いはするけど、それでもこの世界で、ご主人さまのところ以上に居心地がいい場所なんて、思いつかないのです。


「…………悪いがうちのお姫様が優先だ、ちょっと休憩させてくる」


 抱きついて胸に顔をうずめていると、髪を撫でられて抱きあげられました。ご主人さまはボクを抱えたまま階段に向けて移動しはじめたようです。


「お、おぉ……?」


「支払いはしとくから、多分今日はもう戻らん」


「解った……羨ましいなぁったく」


 よくわからないですが、ご主人さまは彼よりぼくをえらんだようなのです、ぼくのかちーなのですよ、けらけら。ご主人さまがいっぽ一歩とかいだんを登る度にあたまが揺れてくらっとします。


「ソラ、あんまりベタベタしないでくれ、本気で抑えが効かなくなりそうだ」


 寝室に入った所で胸に頬ずりしていると、こわばった声がきこえました、めずらしく、ご主人さまが弱気なのです、たまにはいっぽうてきにしいたげられるがわのきもちをしるがよいのですよー、いつもの、しかえしなのです。


 ぼくはそのままぐっと背筋を伸ばして、ごしゅじんさまの耳にかぷりとかみつきました。


【RESULT】

―――――――――――――――――――――――――――――

◆-------------★【ソラ】--★【ルル】--★【ユリア】

[◇MAX COMBO}--◇【33】----◇【0】----◇【0】

[◇TOTAL HIT}----◇【33】----◇【0】----◇【0】

---------------------------------------------------

[◇TOTAL-EXP}--◆【508】--◆【176】--◆【158】

―――――――――――――――――――――――――――――

【パーティー】

[シュウヤ][Lv55]HP372/772 MP1380/1380[疲労]

[ソラ][Lv15]HP0/50 MP420/420[戦闘不能]

[ルル][Lv47]HP602/602 MP32/32[正常]

[ユリア][Lv31]HP1040/1040 MP60/60[正常]

―――――――――――――――――――――――――――――

【レコード】

[MAX COMBO]>>33 <<new record!!

[MAX HIT]>>33 <<new record!!

―――――――――――――――――――――――――――――

【一言】

「しにたい」←全部キッチリ覚えてるタイプ

「うわ、せんぱい……」

「なんか凄い匂いですよお嬢様……」

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