22話
翌日の昼頃、俺が大集落に到着すると、既に傭兵団が総攻撃を行っていた。
怒号は少し離れたところでも伝わってくる。
ドゴォン!ズドォオン!
ここ数日で聞き慣れた爆発音がする。
「ギィイイィ!」
ゴブリンの断末魔が響く。
「いくぞおおおおおおおおおおおおお」
傭兵団の大男が先頭を切って突撃していく姿が見えた。
勢いは傭兵団に有利だった。今日中にケリをつけるつもりかもしれない。
だが、ゴブリンの軍団もデカブツを中心に猛反撃を行っていた。あのデカブツに対処できるのは、傭兵団の大男しかいないだろう。
逆に言えば、大男が倒されると、傭兵団の方も瓦解しかねない状況だということだ。
あのバトルアックスの圧力を防ぐのは並大抵ではないはずだ。通常の剣と兵士ではその剣ごとばっさりいかれそうだ。
ーだが、俺であれば。
そう、俺であればこの剣であのデカブツをずぶりとやれないだろうか?あのときと同じように。
チャンスは未だ大男が健在である今しかない。今が正しくそのときである。
そう決意すると、木から降り、剣を黄土色に染め、戦場へ向かう。
―さあ。やろう。
「ストレングス!パワーアップ!マッスルパワー!」
今ここで魔法を使用しておくことで、バレ辛くなるはずだ。
俺はデカブツに剣を突き立てるべく近づいていく。
すると、デカブツはこちらに気付いたようだ。
ーーそのとき。
「マゾク!オノレマゾクユルサン!!!マゾクマゾクマゾクマゾク!!!!!オノレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」
そう叫んで凄まじい怒りの表情を浮かべ、こちらに走ってこようとする。
――そんなに隙を見せたら。
「貴様、戦闘中にどこを見ている。」
ズバアアアアアアアアアアン!!!!!
大剣がデカブツを切る凄まじい音だけが響く。
・・・
一瞬の沈黙が支配する。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」
そして、男たちは力の限りの声で、勝鬨を上げたのだ。
ー潮時だな。
沸き立つ傭兵団の声を背に、俺は一目散に戦場を離脱することにする。
その途中振り返ると、遠くで大男がこちらを見据えているような気がした。
それからの展開を予想するのは難しくない。
傭兵団はもはや赤子の手をひねるようにゴブリンどもを駆逐していく。
容易く女どもを奪還し、商隊の財宝を手に入れるだろう。
―だが、嘆くことはない。
この後冒険者が来るということもあり、財宝のうち、目ぼしいモノだけを拾って、残りは捨て置くことだろう。
また夜にでも来て、人気のない場所で余りの財宝を収集すればよいのだ。
―とりあえず、飯を食おう。ここしばらくロクに飯を食っていない気がする。
そう思い、俺は王都に戻るのだった。




