20話
その夜、俺がゴブリンの大集落に来てみると、既に戦闘が始まっていた。
「突撃しろ!!!」
以前みた大男が言うと、大勢の男共が雄叫びを上げながら、魔物どもに突撃していく!
「オオオオオオオオオオオオオオオ」
一気になだれ込む傭兵ども。
対するゴブリンも何度か作り直しているのであろうボロ小屋や、ほら穴からわらわらと出てきて応戦する。
次第に男たちのいきり立つ声や、魔法や矢、そして爆発音が飛び交い、大集落は戦場の様相を呈してきた。
――しばらくは俺の出番はなさそうだ。
そんな風に木の上から見ていると、ゴブリンの中にも、あの馬鹿でかいゴブリン以外にも、手練れのゴブリンがいくつかいるようだった。
「オソイ!」
そのうちの一体はあいつだ。
そのゴブリンも馬鹿でかいゴブリンと同じような大斧を持ち、近くにいた傭兵の1人を両断する。
「貴様!!」
別の傭兵が襲い掛かるも、あえなく返り討ちにあい、沈黙する。
そのゴブリンは通常のゴブリンに比べてずっと長身であり、それなりの鎧を身に着けており、やはり人語を話すようだ。
この世界では、魔物も人語を話すことができるらしい。要注意である。
―あのゴブリンをなんとか仕留められないだろうか?
あのゴブリンの戦闘力は確かに脅威だが、よほど腕に自信があるのだろう、隙が多い。
今の状況は大物を仕留めるにはうってつけである。
よし、決めた。
そう思うとすぐ、俺は剣に毒液につける。瓶を簡単に土に埋め、そして走り出す!
「ストレングス!マッスルパワー!パワーアップ!」
そのゴブリンが今まさに3人目の傭兵を切りつけようとしたとき、そのがら空きになった胴に黄土色に濡れた剣を突き立てる。
――ずぶり。手応え、あり。
「イギィィィィィィッィィ!」
ゴブリンは悲鳴を上げ、間髪いれず、俺の手を切り飛ばし、腹をその大斧で突く。
めっちゃ痛え!
HP:5/150。ぎりぎり踏みとどまった。
傷を抑え、慌てずにポーションを2瓶ほどその場で飲む。ゴブリンは襲ってこようとせず、そのまま倒れる。
ヨシッ
俺は速やかに戦場を離脱する!傭兵団の連中に姿を見られたとしても、仲間の傭兵くらいにしか見えないだろう。
戦場から随分離れた場所まで一旦退避することにする。
―まだまだ動ける。
そして、再び見張り用の木の上まで走ってやってきた。
こんな近くの木を気にする余裕がないのか、今のところこの場所は傭兵団の1人にしか見つかってはいない。
埋めておいた瓶を取り出し、再びその剣を黄土色に染める。
―さあ、次の獲物はどいつだ?
土埃や火の粉がまい、騒然とする中、目ぼしい相手は見つからない。
そこで、俺は目のつくゴブリンを黄土色の剣で切っていくことにした。
「ストレングス!マッスルパワー!パワーアップ!」
「ギギィ!!」
「ゲロォオ!」
「グギョオオ!!!」
今何か別の生き物の鳴き声が聞こえた気がしたが、そんなの関係ねえ!
ゴブリンどもを切っていく。
できるだけ弓矢を持ったゴブリンや杖を持ったゴブリンといったゴブリンどもを優先的に切っていく。
もちろん、被弾しながら。
いくつかのファイアーアローと、弓矢に被弾し、もはや満身創痍だが、それでも止まらない。
ポーション瓶を飲みながら走る!!
更にポーション3便を空にし、合計20体ほどのゴブリンを切ったところで。
ズドン。やはりファイアーアローにやられた。
――はっ。部屋に戻ったか。
そろそろいい時間だろうか。だが、未だ戦闘が続いているようにも思える。大集落まで駆けていく。
すると、傭兵は既に引いたのか、大集落にはゴブリンだけが残っているようだった。
見ると、俺が刺したゴブリンが転がっており、それを馬鹿でかいゴブリンを中心にいくつかのゴブリンで囲んでいるようだった。その中には少し前に見た、強力な個体も混じっているようだった。
―チャンスだ。ここであのデカブツを始末する。
既に剣は毒液に染まっている。俺はポーションを大きく口に含む。
――さあ、準備は既にできている。
ざっと駆け出す。
「ストレングス!マッスルパワー!パワーアップ!」
あのデカブツまでもう少しというところで、近くのゴブリンが俺に気が付いた。
「グーフィルサマ!」
咄嗟にそいつはデカブツを守ろうとする。
俺は躊躇なく、黄土色に染まった剣でそいつの空いた胸を突く!
「オノレ!!!」
別のゴブリンが俺を切ろうとする!
俺は左手を犠牲にそいつの剣を止め、口に含んだポーションを飲む!
「どけ!」
大きく叫ぶと、そいつに剣を刺した!!!
「ダース!!!!」
デカブツが叫ぶと、その大斧で縦に肩からぶった切られる。
見ればその顔は怒りで歪んでいるようだった。
相手はもしかすると、ゴブリンでもかなりの強者、あるいは敬意を表すべき存在であったかもしれない。
「ふはは。」
―しかし。俺は獰猛に笑うのだった。




