表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安宿暮らしの大魔王。~転移した大魔王は異世界を自由に楽しみます~   作者: ねこまじん
1部 3章 王都にて遭遇するものは~その1
53/66

14話

 俺はそのときの詳しい状況を話す。


 「おそらくやつは、貴族か商人の子どもに乗り移ったのだろう。」


 「ですが、人に乗り移ったとすればやっかいですね。神殿の権限で拘束することはできるのでしょうか?」


 「・・・やるしかねえだろ。こちとら泣く子も黙る異端審問官だ。」

 表情を引き締めて、メルウィが答える。


 異端審問官が相手にするのは人間である以上、こういった難しい仕事には慣れているのかもしれない。


 「そうですね。あなたの仕事はそういうものでした。」

 カーンの表情は暗い。


 「さあ、行くぞ。テラ、部屋はどこだ?あとこれ着ろ。」

 メルウィは異端審問官の黒い正装に手早く着替える。


 表情は既に黒いマスクのようなもので隠され、眼以外はほぼ全て黒ずくめの恰好に隠されている。はっきり言って異様な雰囲気である。黒い生地の上に白い神殿を表す刺繍があるため、かろうじて神殿に属する者であることが分かる。


 「ああ。4階にある蝶のプレートがある部屋だ。」

 俺に渡されたものは神官の服だった。


 「待ってください、私も行きますよ。」

 神殿騎士は正装がアーマーであるため、着替えが大変である。


 そう言ってそれぞれ着替えを行い、安らぎの庭まで向かった。


 道行く途中、審問官だ・・・といった声がところどころ聞こえてきたが、メルウィは気にした様子でもなく、先頭に立って、速足でどんどん歩いていくのだった。


 宿に到着したが、俺は神殿の神官ということにして、3人で宿に入る。

 俺の役割は万が一のための、2人の護衛である。


 「・・・いらっしゃいませ。本日ほどのようなご用でしょうか。」

 宿の従業員が、少し怯えながら聞いてくる。


 異端審問官の黒い正装は、比較的小柄なメルウィが着ていても、威圧感を感じさせてしまう。


 「この宿に、この世に害をなす者がいるとの報告がありました。すみませんが、宿の名簿を見せて頂きたいのです。」

 メルウィがそう言うと、


 「少々お待ちを・・・!」

 と言ってパタパタと宿の従業員が誰かを呼びに行く。


 すると、上品な感じの、いわゆるイケオジといった感じの人が出てきた。

 だが、その表情から、非常に緊張していることが分かる。


 「私はこの宿の支配人をしているラドといいます。この宿に異端なる者がいるということでしょうか?」

 宿の支配人がそう言う。


 「そうです。ご迷惑をおかけしていることは申し訳なく思います。ですが、何分、急を要する事ですので、ご理解して頂きたい。名簿の提供と、部屋の調査をお願いしたいのです。」

 メルウィが何かを示しながら、支配人に話す。


 神殿の公式の身分証明書であるのかもしれない。


 支配人もカーンも俺も、淡々と続けるメルウィの様子に圧倒されていた。


 「・・・そうですか。ですが、どのお客様か、あるいはそのお部屋を教えてください。お客様全員分の名簿をお見せすることは・・・。」


 「4階の蝶のプレートがかかっている部屋です。」


 「承知致しました。少々、お待ちください。」

 そう言うと、支配人は宿の奥に行き、名簿と鍵を持って戻ってくる。


 「こちらが名簿です。部屋の調査には私も立ち会いますが、よろしいですか?」


 「承知しました。問題ありません。」

 メルウィが答える。


 「ではこちらをご確認ください。」

 支配人から名簿を手渡される。


 4階の蝶の部屋の宿泊人の情報を確認すると、マーガレット・モントールと、トム・モントールという2人の名前があった。


 その名前から、貴族であることは明らかだった。


 「ありがとうございます。案内してもらえますか?」

 メルウィが名簿を確認した後、そう言った。


 「承知致しました。」



 ――そして、問題の部屋に到着した。

 まだ中にいるのだろう。部屋の中からはわずかに瘴気が漏れ出していた。


 まずは部屋のノックを支配人が行う。

 「すみません、マーガレットさん。」


 「はい?」

 中から出て来たのは、美人な若奥さん、といった感じの女性だった。


 「申し訳ないですが、息子さんを見せてもらえますか?」

 横からぬっとメルウィが出てくる。


 「ヒィ!異端審問官・・・!」

 絶句する女性。


 メルウィは構わず、部屋の中へ押し入る。俺たちもそれに続く。

 「うちの息子に異端審問官が何の用ですか!」

 絶叫する母親!


 いた! !俺は、すかさずアナライズを使用する!


 カーンは剣を抜く!!


 ―パシャッ。

 メルウィは、その息子に向かって、聖水を浴びせた。


 周囲は一瞬静まり返る。

 すると、その息子が苦しみだす!!


 「ヴォォォォ!ヴガッ」

 口からゴボッと何かがメルウィ目掛けて飛び出してきた!!!



 「「メルウィ!!!!」」

 俺とカーンは咄嗟にメルウィをかばおうとしたが、その必要はなかった。


 ――ザッ

 メルウィは落ち着いて準備していた短剣で、その魔物のような何かを両断したのだ。


 しばらくして、その生き物は砂になって消えた。


 部屋に漏れた瘴気はわずかであったが、それは俺が食った。だが、ほとんど経験値にならなかったようで、スキルに変化はなかった。




 しばらく呆気に取られていた母親は、我に戻り、

 「トム!トム!!」

 倒れている息子を揺さぶる。しかし、起きる気配はない。


 「ヒール」

 少しの詠唱後、しゃがみこみ、その倒れている子どもの体にふれ、メルウィがそう唱えると、その子の体が輝く。


 しかし、特に効果はなさそうだった。


 「ポーションを試すか?」

 そう言って俺はメルウィにポーションを差し出す。


 メルウィは黙って首を横に振る。


 カーンが倒れている子どもの体にふれると、

 「冷たい・・・」


 「マーガレットさん。この子は神殿で預かっても良いでしょうか?」

 メルウィがその母親であるマーガレットであるに向かって言う。


 「―そんな。」

 マーガレットはその場に座り込み、そして気を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ