10話
俺は神殿を出て、宿に戻った。
あの後メルウィに聖水を分けてもらえるか聞いたところ、俺のポーションの空き瓶に水を入れたものに祈りを捧げ、聖水をいくつか作ってもらうことができた。
本当に神官だったとは、驚きだ。
そういえば、タイムスタンプのスキル!どうなったんだっけ?
―ステータス・オープン
「タイムスタンプ」:「ソルジャー」もしくは「マジシャン」のスキルを使用を継続することで、この世界の任意の場所にタイムスタンプを設置することができる。ただし、自身の位置がスタンプに近い場合、初期位置に転移する。タイムスタンプを設置中は、HPが失われたとしても、初期状態に戻り、所定の場所に転移し、HPが全回復する。ポーション以外の初期装備も使用者と共に自動で転移し、また失われたとしても再度出現する。使用中はパッシブスキル。解除可能。解析不可。
なんと任意の位置にスタンプを設置できるようになっている。だが、スタンプの位置が近い場合は、トアレの遺跡まで戻ってしまうらしい。
うーん。近いってどの程度の距離だよ。
「まあいい。とりあえず位置変更。」
ぽやん、とした光が発した後、宿屋の部屋に変なマークがスタンプされ、すっと消える。
そして俺はタイムスタンプではなく、マジシャンのクールタイムを見る。
マジシャン:あと20日
なんせ俺のスキルのクールタイムは月単位だからな。泣けてくるぜ。
俺は先ほどのメルウィとの会話の続きを思い出す。
「あの黒いスライムと闇の信仰者に何か関係がある可能性は?」
「だから、あれはスライムじゃない。さあな?闇の信仰者どもが飼っているにしては、行き過ぎたものの気がするぜ。神殿騎士にでも連絡するしかないな。」
「神殿騎士というのは、どんなものだ?」
「さあ? オレも神殿騎士をやらないかって誘われたこともあったが、鎧を着るのが嫌でよ。剣と魔法を使えるってんで、オレとあんま変わらないんじゃねーか?」
「聖騎士は? 聖騎士は呼ばないのか?」
「ありゃ別格だ。次元が違う。ゴラムで魔族を討伐したりして、まだ忙しいそうだ。さっきのアレは、神殿騎士や俺たち審問官で討伐するしかないだろうさ。お前も手伝え。」
「いや、何で俺が。」
「報酬ははずむぜ?金貨とか出るんじゃないか?」
「―詳しく聞かせてもらおうか。」
キリっと表情を引き締め、話を聞く。
「・・・現金なやつだな。また明日の夜、ここに来い。詳しい仕事の話はそこでしよう。」
採掘はしばらく後になりそうだった。
――そんなやり取りがあって王都の安宿に戻って来たわけだが。
俺は今日の魔物?について考える。
瘴気を発する生物は、いくつかに限られてくる。
まずは、俺のような魔族。
それに俺の作成する魔法生物にも存在する。
俺の知る限り、魔物は基本的に瘴気を発することはないが、例外もあるだろう。
まずは、魔族である可能性について。だが、魔族は人型をしていて、基本的に知能の高いので、あれが魔族であったとすれば、かつて魔族であった何かだろう。魔族にしては行動はとても本能的だと思う。
次に魔法生物である可能性ついて。魔法生物を作成するという奇妙な能力は俺に特有のもの。以前の世界では他には見られなかった。しかし、この世界で魔法生物に似た存在がいたとしても、おかしくはない。
そして、魔物である可能性について。やはりスライムが何らかの理由で瘴気を発するようになったと考えるのが妥当だろうか?
―そもそも、スライムとはどんな魔物だったか?
液体が丸まったような形をしており、弾力のある質感である。
色んな種類があり、無害なものから非常に危険性が高いものまで様々であることが知られている、そんな魔物だったはずだ。
しかし、あの魔物は、むしろ水たまりのような形をしていた。
スライムかと言われれば、よく似ているが、同じではない他の何か、と考えた方がしっくりくる。
ここは王都だ。入場料を払えば、図書館で本を読むことができるようだ。
――明日は図書館に行ってみようか。




