6話
トアレの遺跡の様子に特に変わったところはないように見える。
「よし。行くか。」
今回の探索の目的は俺のスキルを改善する方法がないか探すこと。
――遺跡の奥に何か俺のスキルに関する何かがあるはずだ。
何故かは分からないが、そんな気がする。
遺跡の中はヒカリゴケによって相変わらずぼんやりと光って見える。
遺跡の中を進んでいくと、見覚えのある女神像の所まで来た。
あまり信仰について詳しくはないが、この像は、おそらくはこの世界で信仰されている女神だろう。
付近を調べてみるが、特に変わったものはない。更に先に進むことにする。
特に何も代わり映えのしない光景である。ヒカリゴケの輝きを頼りに進んでいく。
そうしていくと、ついに大きな門に到着した。
「これは、いわゆるボス部屋というやつではないか?」
扉を開けると、瘴気を発する黒く染まった大きな結晶が浮かんでおり、下には魔法陣が敷かれている。
「―あれは転移魔法陣だろうか?」
魔晶石。そちらは見た瞬間分かった。
これほどの濃度の瘴気は、人間にはおろか、魔族にも害を与えるだろう。
しかし、俺は別だ。この程度、俺の餌にしかすぎない。
俺が瘴気を食らうと、結晶は水晶のような大きな単なる石に変化した。
―スキルポイントを獲得しました―
ビンゴ!!
さっそく俺はスキルポイントをマジシャンに振り分ける。
これで、リアリトアに使用している分の他に、もう1回マジシャンを使用可能である。
この世界の俺ははっきり言って、戦闘力がほとんどない。
使える魔法は筋肉魔法で、あとはポーションでゴリ押しするしかない始末である。
タイムスタンプも毎回、トアレの遺跡にまで転移させられるという変な仕様だ。
たかがスキル1回、されどスキル1回である。やはりここに足を運ぶ意味があったのだ。
―しかし、すんなり扉に入ることができたよな?
もしかすると、神殿の連中が封印をしたが、その後に何者かによって封印が解かれたのかもしれない。
あるいは逆にこの扉を開けることができなかったか。もしくはその両方。
「持って帰るか。」
これはダンジョンコアの可能性がある。
そう思うと、すぐに俺はそれを使用する。
―マジシャンを発動します―
いつものシステム音が聞こえる。
「―インベントリ」
そして、俺は収納にその大きな石をしまい込むのだった。
「おう、聞いたか?今度王都で背教者どもの一斉捜索をやるらしいぜ。」
「背教者の?何だってそんなことを?」
「ああ、最近闇の信仰者どもが活発だって話だ。」
「そういえば、ゴラムでも魔族が出たんだとか?」
「そいつは既に討伐されたらしい。討伐したのは、何と、遥かな風だってよ。」
「うちのギルドの出世頭じゃねーか。あそこは女ばっかりだろう?」
「そうだ。そろそろ金級冒険者になるかもしれねぇ。だが、事前に神殿から聖騎士が派遣されていたって話もある。」
「聖騎士といえば、トアレの遺跡で聖騎士が行方不明になったんじゃなかったか?」
「―そいつはどうもブラフらしいぜ。」
「・・・なるほどなぁ。」
「異端審問官がまずは王都で、その後こっちでやるってぇ話だ。」
ベルフェンの酒場で昼間から酒を飲んでいると、そんなことが聞こえてきた。
ちなみに俺は酒にはめっぽう強い。
―王都か。
どうやらこの国にも王都があるらしい。
―王都の近くには良い稼ぎ場があるのだろうか?
それに、闇の信仰者とやら。やつらであれば、門のありかを知っている可能性がある。
―新しく魔晶石を見つけられないだろうか。
今行くと、異端審問官と鉢合わせになるおそれがある。
だが、実際に行くかどうかは別として、王都への行き方を知っておく分には問題ないだろう。
俺はさっそく採掘師ギルドに向かうことにする。
「おばちゃん、王都へ行きたいんだが、どうやって行けばいい?」
採掘師ギルドのおばちゃんに王都への行き方を聞くことにする。
「おや、レオネリアに行くのかい?そうさねえ、少しお待ち。」
そう言っておばちゃんは何かかかれた紙を見る。時刻表だろう。
「ちょうど3日後に、乗り合いの馬車が出るよ。」
「王都付近ではどこに採掘場があるんだ?」
「デュエイの採掘場に行けばいいさ。金が採れるよ。」
―よし、王都まで向かおう。
デュエイの採掘場は金鉱脈にあるらしい。ゴールドラッシュか!?
――馬車の中では特にすることがない。
俺は馬車にゆられながら、ぼんやりとこれからのことを考える。
元々、この世界にこれといった目的があるわけではない。
あえて言うなれば、平穏、そう、スローなライフを送りたい。
そういう線では、そう悪くはない生活を送っているが―
トラブルに何かと首を突っ込んでばかりである気がする。
王都への旅は確かにワクワクしたが、しかし気になるのは、やはりリアリトアのことだった。




