5話
やって来ましたトアレの山!
お尋ね者になっているのではないかと思ったが、特に気にした様子でもなかった。
「おい、テラ、神殿の連中がおまえを探している様子だったぞ。しばらくして去っていったが。」
採掘仲間のおっちゃんが声をかけてくる。
「ああ、何か俺に用事でもあったようだな。」
「おまえ、何かやらかしたのか?異端審問官にでも目を付けられたら大変だぞ?」
「・・・なんだ、その物騒な連中は。」
「知らねえのか?異端審問官だ。魔族の討伐はもっぱら神殿騎士の役割だが、市井の異端者を炙り出すんだ。」
「異端者?」
「ああ。たまに人の中に魔族を呼び出そうとする奴らがいるんだよ。ああ、なんていったかな?闇の信仰者?だか何だか。」
「で、俺がそれだと?」
「違うのか?」
―闇の信仰者どころか、魔族そのものだがな!
「・・・とても面倒くさい。」
「はっはっは。お前ならそう言うと思ったよ。」
おそらく、連中に広まっていないということは、俺を捕えるか、討伐する自信があったということだろう。
また、リアリトアのことを秘匿したかったということもあるのかもしれない。
ここは大人しく討伐されたことにしておくべきだな、うん。何よりも労働だ。
ポーション代を稼がねばならない。
「おい、テラ、これをそっちに!」
「こっち手伝ってくれ!」
「昼飯でも食うか。」
「そこ、掘っておいてくれ。」
「今日はあがっていいぞ~」
もはや採掘など朝飯前よ!という感じに、1日が過ぎていった。
しばらくは、ギルドの宿泊所で寝ることにしているが、これまでの生活との違いに愕然としたことは言うまでもない。
「あ~、野郎しかいねえ。」
――およそ2週間後。
何とか、飯代を切り詰め、銀貨5枚を貯めることができた。
そろそろポーションを買いに、ベルフェンの街に向かおう。
半日ほど歩き、ベルフェンの街までやって来た。
慣れた足どりで街を歩き、道具屋の中に入る。
「よっと。」
そう言って道具屋の扉を開けると。
「え、ちょっと、テラ!」
ディアナがちょうど店にいたのである。
「おお、ディアナか。久しぶりだな。」
「あなた、どこへ行っていたの?神官たちがテラの行方を追っていたわよ?」
「トアレの鉱山でも聞いたよ。異端者とでも思われているんじゃないかって。」
「・・・気をつけなさいよ?異端審問官は容赦ないという話よ。それよりリアちゃんはどうしたのよ?」
ディアナもリアリトアの行方は知らないらしい。
「多分神殿じゃないか?あの後、神殿から迎えが来ていたようだ。」
むろん、迎えとは俺に魔法をぶっぱした聖騎士のことだ。
「・・・そう。」
「そういえば、部屋に荷物も置きっぱなしだったみたいじゃない。遥かな風のみんなに感謝しなさい。みんなあなた達のことを探していたんだから。」
そう言って、一旦ディアナは奥へ引っ込み、俺の荷物をひっぱってきた。
「おお!俺の荷物!ありがてえ~、感謝感謝。」
「なーにが、ありがてえ、よ!全く。」
ディアナが呆れたように言った。
とりあえず、荷物の中を確認する。
すると、ロケットペンダントが見当たらず、俺が以前購入してあったいくつかのポーションとともに、見覚えのある金貨がそっと袋の中に入れられていたのだった。
俺はディアナに礼を言い、店から出た。
「―こりゃ、リアに感謝するしかないな。」
そう呟き、トアレの遺跡まで向かうのだった。




