3話
「リアの様子は?」
私は部下のユミルに聞いた。
「ハッ。今は傷心のご様子です。」
「そう。一体何があったというのかしら。」
「アリル様が倒された魔族ですが、どうやらベルフェンとゴラムを中心に活動していたようです。」
「そのようね。何が目的か分からないけど。」
「聞けば、採掘師として労働をしてようです。」
「―そうね。」
「・・・魔族も労働をするのですね。」
「あなたねえ。どこの世界に労働する魔族がいるのよ。何か他に目的があるに決まっているでしょう。」
「リアリトア様はしばらく魔族と一緒に暮らし、その、ゴラムの書店で働いておられたようです。」
「もういいわ。下がりなさい。」
「ハッ。」
今回の件はおかしな事だらけである。
まず私たちの調査の結果判明した事実は、以下のようなこと。
・リアの部隊は魔族と交戦し、部下が全滅し、リアのみが生き残った。
・リアの話では、その魔族はリアでは歯がたたないくらいの強さだった。
・なぜか別の魔族に助けられた。
・その魔族は、人間社会に混じって働き、対価を得ていた。
・曰く、その魔族は、戦闘力はなく善良な性質であるらしい。
・魔族が働いている間、リアも書店で働いていた。
・魔族には幾人かの冒険者の知り合いがいるようだった。
・冒険者とその魔族とでゾンビが出現した森を調査し、リアが中級魔族であるヴァンパイアを討伐した。
―にわかには信じられない話だ。
件の採掘師をしていたという魔族は既に討伐済みである。が、確実に倒したというような手応えがなかった。
それに最後に消え去るときのあの間抜けな顔。あんな顔で消え去る魔族を始めて見た。
リアに件の魔族を討伐したことを話すと、うつむいて、そう、としか言わなかった。
―何かの術をかけられていたのだろうか?
聖騎士は大抵の精神魔法に対して、抵抗力があるとはいえ、完璧ではない。
この飛空艇ではまだ少し時間がかかるが、プロミアに帰ったなら、入念に調べる必要があるだろう。
私は会議で報告するべき2体の魔族についてもう一度整理する。
リアの部隊を全滅させた魔族と、リアを助けた?という魔族。について。
まず、リアの部隊を全滅させた魔族について。
その後どうなったか、リア本人も分からないということである。
現状、こちらの魔族についてはほとんど情報がない。
リアの戦闘能力は聖騎士の中でもかなり上位にあたる。
リアで勝てないなら、はっきり言ってほとんどの聖騎士では相手にならない。
聖騎士の中でリアより実力が上といえる聖騎士はデュランかガディウスくらい。
リアを助けた?という魔族について。
当初、リアはそいつを捕縛しようとした。
しかし、先のリアの部隊を全滅させたという魔族に遭遇し、部隊は全滅。
その後捕縛しようとした魔族に助けられた? このあたりの詳しい事情はリアもあまり知らないようだった。
その魔族は、どうやら、リアと出会う前も出会った後も採掘師として働いていたらしい。
私の知る限り、いえ、聖王国の知る限り、人間属の社会で労働する魔族など知らないし、そんな存在は想定しない。
確かに魔族は人間社会に潜入することがある。ネクロマンサーしかり、ヴァンパイアしかり。
それらは人間社会に対して、何らかの敵対行為を行うために潜入を行う。
ヴァンパイアであれば、自らの眷属を増やためであり、ネクロマンサーであれば、自らの下僕を増やすため。
考えられるとすれば、ミスリルやオリハルコンといった、魔法金属を収集することだろうけれど、あの地方で採取できるのは、鉄や銅、銀といった産業用の金属である。
銀は、対ヴァンパイア特攻の性能を持つ金属だが、これを魔族が原石から収集する意味が分からない。
「―しまった。生かして捕縛するべきだったわ。」
いくら考えても理由が分からない。
また、リアの部隊を全滅させたという魔族の方が、危険性が高いのは間違いない。
リアを助けたという魔族が、その行方を知っているに違いなかった。
――だが、聖騎士アリルはいくつかの思い違いをしていた。
リアリトアの部隊を壊滅させた魔族は既に討伐されている。
また、リアリトアを助けた魔族は特にこれといった野望もなく、人間社会をそれなりに楽しみながら、ぶらぶらと単に生きていただけなのである。




