15話
酒場前で、ディアナと合流し、酒場の中に入る。
中を見渡すと、それなりに人で賑わっており、遥かな風のメンバーは既に席に着き、1杯やっているようだった。
「久しぶりだな?元気だったか?」
「久しぶりね。」
アンナが答える。
「おぅ~テラじゃねえか。」
既にロロは酔っぱらっているようだ。
「テラさん!お久しぶりです。」
カトリーナは今日も元気いっぱいだ。
「テラさんも、お元気そうで何よりです。」
マリアは神官らしく相変わらず丁寧な態度だ。
サリアはこちらをちらっとみて会釈を行う。
「おそらくギルドから話を聞いていると思うが、俺も今度のダンジョン脇の森の探索に同行する。そして、こちらはディアナ。ベルフェンの街の道具屋で、薬師でもある。」
「みなさん、よろしく、ディアナというわ、と言っても、初めましてじゃない人もいるわね。」
「あ、やっぱり、ベルフィンの道具屋の!」
まず反応したのはカトリーナ。
「ディアナ、やっぱりあなただったのね。」
アンナもディアナと知り合いらしい。
聞けば、アンナとカトリーナはパーティーの買い出しにディアナの道具屋に立ち寄ることが多いそうだ。
「一応、ある程度ギルドから話は聞いているけど、もう一度詳しい話を聞かせてもらえるかしら?」
「ああ。俺とディアナでティミルの木を探しに森に入ったところ、かつて冒険者だったゾンビに襲われた。ゾンビそのものは、剣に聖水をふりかけたせいか、何とか倒すことができている。ディアナ、何か補足することはあるか?」
「ティミルの木が必要な理由は、とあるやんごとなき事情のある貴族からの私個人への依頼だから、ここで話すことはできないわ。」
「そう。概ね、ギルドから聞いた話の通りね。こちらが把握している話は、ゾンビが持っていたギルドカードは、黒鉄級冒険者のもの。名前はコルト。彼のパーティーは、ゴラムダンジョン付近の森での薬草採取依頼を受けた後、行方が分からなくなっているわ。」
アンナが言う。
「ゾンビの成り立ちは知っているか?」
俺はアンナに確認する。
「ええ。おおむね。基本的には。マリア、説明してちょうだい。」
「ゾンビは、基本的に魔素によって発生します。それ以外に、魔族が人間を変化させることで発生する場合がありますね。魔族がゾンビを発生させた場合、少なくとも神殿騎士の協力が必要になると思います。」
「そういうこと。今回はパーティー1つが消息を絶っていることから、魔族が関わっている可能性があるわ。私たちができることは、森に入っての調査のみ。あなたたちが同行するのは構わないけど、魔族が出たら逃げるわよ。これはパーティのリーダーとして譲れないわ。」
「ティミルの木を知っているやつはいるのか?」
「あ、私分かるよ!」
カトリーナが手をあげる。
「だ、そうだ。悪いが、ディアナ、探索中は宿で待っていてくれないか?」
「・・・ええ。仕方ないわね。」
「この前も転移魔法陣なんてものがあったんだから、今度は魔族も出てくるかもなぁ?」
「ロロ・・・嫌なこと言わないでちょうだい。あなた、お酒臭いわよ。」
アンナが呆れた顔をするのだった。
「ところで、1人神官を連れていきたいのだが、問題ないか?」
俺はアンナに聞くことにする。
「いいけど、問題ないの?」
――戦力的に、ということだろう。
「ちょっと、テラ!リアちゃんを巻き込むつもり!?」
何故か憤るディアナ。
「少なくとも、ディアナよりは戦闘力があるぞ?」
「ダメよ。あの子が行くなら私も着いていくわ。」
―しまった藪蛇だったか。
「・・・リアを連れていくとは言っていない。」
「分かったわ。じゃあ、森の手前まではついていくからね。」
「おまえなあ。」
俺はため息をはいて、恨みがましくディアナを見る。
「私たちは、誰が同行しようと構わないけど、自分の身は自分で守ってちょうだいね。」
アンナがそう言い放つ。
「ディアナ、そういうことだ。これは遊びじゃないんだ。」
「それならなおさらよ。私が着いていくわ。」
なぜそんなにも強情なのか。
―あいつは、見た目は可憐な少女にすぎないが、ここにいる誰よりも強いんだぞ?
そのように言ってやりたいが、色々と支障が出るので黙っている。
「はあ。好きにしろよ、もう。」
―最悪、もう一方の切り札を使うしかないな。




