11話
宿の外の洗い場で、もう一度石鹸で服と体を洗う。リアリトアも洗い場まで手伝いに来てくれていた。布でゴシゴシしながら、俺はリアリトアに話しかける。
「そういえば、今日はどうだったんだ?」
「うん、書店のおばあちゃん、とっても優しかったよ。」
「お~、ちゃんと働けたのか。」
「えらいでしょ。」
そう言ってふふん、と胸を張る。
「少し感心した。」
「・・・もっと褒めてもいいんだよ?」
「まだ1日じゃあな~。」
「そうだ、おばあちゃんからお茶貰って来たんだった。」
ぽんっと手を叩くリアリトア。
「ああ、それじゃ部屋まで戻るか。」
洗濯を切り上げ、洗い場で服をよく絞ってから、部屋に戻り、木のハンガーに水に濡れた服を掛ける。
「ほら、これ。」
と差し出されたのは、缶に入った紅茶の葉。湯はどうやってわかすんだ?
「これを使うの。」
リアリトアは備え付けの魔道具の蓋をとり、そこへ持ってきた水をそそぐ。
それから、お茶の葉を入れ、魔石に魔力を注ぐ。すると、魔石が発行し、熱を発しているようだった。
しばらくすると、お湯が沸き、注ぎ口からカップへとお湯を注ぐ。
「はい。」
「お、それじゃ頂くよ。」
カップに注がれたお茶を飲み、まろやかな味わいを感じる。
「―確かに、おいしい。」
「でしょ。」
リアリトアがうんうんと頷く。
お互いに、一息ついたとき、俺は気になっていたことを訊ねる。
「リアは、家族がいるのだろう?今ごろ心配していないのか?」
「・・・お父さんとお母さん、それに妹が一人いるわ。」
少し表情を強張らせてそう言う。
「帰らなくても―」「帰らないわ。」
「・・・しばらくはこうやっていたい。」
「・・・ああ。」
そうして、お互いに働きだしたある日。
「リアは今度いつ休める?」
「いつでも。おばあちゃんには5日働いたら、1日は休んでいい、て言われてるよ。」
「明日でも問題ないか?」
「うん。大丈夫。」
「それじゃ、明日は薬草の採取でも行くか?」
「分かった。冒険者ギルドに行く?」
「いや、今、ベルフェンから、道具屋のねーちゃんが薬草取りに来ているんだ。」
「道具屋のねーちゃんって?」
「えーと、名前は・・・。何だっけ?」
「――やっぱり興味ないんだ?聞いておこうよ。」
心なしか、少し嬉しそうだ。
「そんなことはないぞ。ただ、その、こちらに来て出会う人が多くてな。」
「そんなに?」
「いや、ああ。次会ったとき、聞いておこう。」
ベルフィンの道具屋のねーちゃんとは、丁度冒険者ギルドの前でばったり会った。
聞けば、必要な薬草を採取しに来たが、ギルドに頼んで薬草の採取を依頼するとほどでもないという。
目的の薬草は自分で探すことができるので、護衛の方を頼むつもりでいた。
しかし、護衛を頼むとなると薬草の採取依頼を出す以上に高く、どのような依頼を出すかどうか迷っていたようだ。
依頼前ということで、簡単な護衛をすることは問題ないと伝えられ、それなら俺が引き受けるということになった。
依頼の日程を予め決めていたが、それがちょうど明日だった。
そして翌日。待ち合わせ場所はちょうどゴラムの採掘師ギルドの前。
「あら??はじめましてかしらね?ディアナよ。」
道具屋のねーちゃんはディアナというようだ。覚えておこう。
「よろしくお願いします。リアといいます。」
ペコリと頭を下げるリアリトア。
「ああ、俺の自慢の親戚なんだ。」
「怪我させないようにね?」
「ああ、それは問題ない。」
―何ならリアリトアは今の俺より遥かに強い。
「今日は悪いわね。でも報酬を渡す以上、しっかり付き合ってもらうわよ。」
そうして、ディアナから銀貨3枚を受け取った。
「ちなみにどこに向かうんだ?」
町を歩きながら、ディアナに聞く。
「ダンジョン脇の森よ。」
「魔物は出るのか?」
「ダンジョンは冒険者ギルドに管理されているからダンジョンから出てくる魔物はいないと思うけど、元々森にいる魔物がいると思うわ。」
「いつもここに採取しに来るときはどうやっているんだ?」
「いつもはこんな所まで来ないわよ。」
「何か用入りなのか?」
「ちょっとね・・・。特別なポーションが必要なのよ。」
「まさか、お貴族様関連か?」
「そ。だから余計な詮索は無用よ。」
―なるほどな。
「ちなみに、どんな薬草なんだ?」
「薬草はティミルの木、という低木よ。」
「誰か呪いにでもかかったのですか?」
リアリトアがディアナに訊ねる。
「まだはっきりとは分からないのよ。よくご存知ね。」
「ええ、ちょっと・・・。」
リアリトアは少し答えづらそうだ。
「本当は、そういうのは神殿の神官にでも頼むところなんだけど、今神殿はそれどころじゃないようなのよ。」
――ああ、そういうことか。
俺は理由を察した。




