9話
妙にそわそわするので、俺は食器をもって、炊き出し場に行き、食器を返却する。
テントに戻ると、既にリアリトアは寝袋に潜って寝ているようだった。
俺はシートに座り、考え事をする。
何故か神殿から家に戻って来たリアリトア。彼女が本気を出せば、俺を捕まえることはたやすいことだろう。
だが、俺を害する意図は全くといって感じられない。
可能性として、本気で神殿からの逃避行をしている場合。
その場合、何かのタイミングで見つかりでもしたら、彼女が危うい立場になりはしないだろうか。
俺はどうするべきか?当然、神殿に送り届けるべきだ。
しかし、逃避行をしている場合、今俺といるという選択をしているということは、神殿に戻りたくないということである。
よって、今はまだ彼女を神殿に送り届けるべきではない。
とりあえず、彼女が元気になるまでは一緒にいよう。そのうち神殿に帰るだろう。
何はともあれ、俺は、当面の金を稼ぐことが必要なのだ。
そんな感じで、相変わらず、リアリトアは口数は少ないものの、嫌な風でもなく、いつの間にかゴラムまでたどり着いた。
今回は盗賊に襲われることもなく、特に問題はなかった。
「ゴラムに着いたぞー!」
俺は馬車から飛び降りる。途中で足が痛くなったことは内緒だ。
「テラもダンジョンに潜るときは、十分注意しなよ。」
アルは心配してくれているようだ。
「ああ。そうするよ。」
ペガサスの翼の面々に挨拶をしてから、リアリトアを連れて、ゴラムの町に向かう。
「宿をとって、一息つくか。」
「うん。」
ゴラムの安宿に行き、1部屋を確保し、中に入り、一息つく。
「・・・おかね、大丈夫なの?」
「ああ、稼ぐから問題ない。」
「これ、少しは足しになるかな?」
と言って、かわいいポーチから取り出されたるは、金貨である。
き、ききききんか!? オラ、初めて見たぞ?
俺は食い入るように金貨を見つめる。
「ちょっと・・・」
まあ、待て。こういうときほど冷静にならなければなりません。
俺はおもむろに自分の財布を取り出し、中を見る。その結果。
―ここで誘惑に屈してしまっては男が廃るというものよ。
「き、きんかなんていつでも手に入れてみせるんだから!」
思わず声が裏返る。
「いいよ、使って。迷惑かけてるんだから。」
「おお、神よ!ここに舞い降りたるは天使である!」
といって、土下座をする。
「ちょっと。みっともないわ。」
「いいんだ。今ここで、神に感謝せずしていつ感謝をするというのか。」
「本当、あなたって変わってる。ふふふ。」
随分と久しぶりに彼女の笑顔を見た気がした。
「とはいえ、この金貨はリア、君が預かっておいてくれたまえよ。」
「・・・なんでそんなに偉そうなのよ。」
「ここで、安易に金貨なんて手にした日には、その魅力にやられかねない。ふふふ、ではリア、君のために俺は今から、ご飯を買ってくるから、そこで待っていてくれないかね?」
満面の笑みでリアリトアを見る。
「・・・もういいわ。行ってらっしゃい。」
とても呆れられてしまった。
「もう。」
彼女のため息に見送られながら、俺は市まで向かう。
串焼きやその他の食べ物を市場で買ってきて、部屋に戻ってきた。
ちなみに、リアリトアの金貨がなければ、現時点で、俺の財布の中は、少しピンチと言ってもいい状態である。
―明日から働かなくては!
部屋に戻ると、リアリトアは部屋の中で静かに本を読んでいるようだった。
「今戻ったぞ。はい、これ。」
「おかえり。ありがとう。頂くわ。――いい匂い。」
本から目を外して、こちらを見てそう言う。そして、本をテーブルに置き、串焼きを頬張る。
「・・・おいしい。」
「リアは明日からどうするんだ?俺は採掘をしようと思うんだが。」
「私も働くわ。」
「ちょうど、書店で人が足りていないようだったぞ。仕事申し込みに行くか?」
「ほんと? 行ってみようかな。付いてきてもらえる?」
「待て、付き添い必要か?」
「・・・うん。」
上目遣い。あああ、あざといぞ!
「――しょうがない。店までだぞ?」
「うん。」
そういえば、ゴラムの冒険者ギルドにも行かなければならないんだった。
こちらのギルドにも無事を報告しておかないと。
「俺は冒険者ギルドに用があるから、ちょっと行ってくるよ。」
「分かった、待ってる。」




