8話
乗り合い場に向かうと、果たして、やはり護衛のパーティーはアルのパーティーだった。
「おお、いつかのにいちゃんじゃねーか。」
前衛のタムが声をかけてくる。
「あら、ベルフェンにいたのね?」
弓使いのルイナが声をかけてくる。
「今日もよろしくな。」
リーダーのアルが声をかけてくる。
ミーシャを見ると、軽くお辞儀をしてくる。どうやら、後ろのリアリトアに興味があるようだ。
「ほら、乗るぞ?」
と声をかけると、
「うん。」
リアリトアは馬車に乗り込む。
俺は情報交換のため、冒険者と同じように、徒歩で歩くことにする。
「よお、にいちゃん、ゴラムまで行ってたんじゃあ、なかったのか?」
タムがさっそく話しかけてくる。
「ああ。ゴラムまで行っていたが、どうやら転移魔法陣で飛ばされちまったらしい。」
「転移魔法陣かあ。にいちゃん、冒険者になったのか?」
「いや、ポーターだ。稼ぎが良くてな。」
「そういうことな。ところで、にいちゃん、あの子誰だよ?」
「親戚の子だ。少し理由があって、今預かっている。」
「かあ~。羨ましいねえ!」
「何言ってんだ、ペガサスの翼にも美人どころが揃っているじゃねえか。」
「あ~、うちのは戦闘力があるからな。もっとあの子みたいなお淑やかな感じの子がうちにも欲しいんだよ。」
色々と反論できるところもあるが、とりあえずそのまま流す。
「ねえ。あの子、神官?」
声をかけて来たのはミーシャである。
「神官ではないが、神殿で過ごしていたことはあるようだ。どうしてそう思う?」
「いえね。なんだかそんな気がして。」
俺はリアリトアを見る。ぼんやりと外を見ているようだった。
その美しい髪は、今は目立たないように束ねていて、白いフードを被っている。
最初に会ったときは、その体がうっすらと白い光で覆われていたが、今はそんな感じがしない。
おそらく魔力を制御しているのだろう。
それでも魔法使いならではの、何か感じるものがあったのかもしれない。
「そういえば、あんちゃん、トアレの遺跡について知っているか?」
アルが声をかけてくる。
「いや。何かあったのか?」
「ああ。どうやら、魔族を追っていた聖騎士と神殿騎士が行方不明になったらしい。」
―現場にいたレベルでとてもよく知っている。
「いや、初耳だな、それで?」
「今度トアレの遺跡に別の聖騎士達が調査に向かうらしいわよ。本当は今日の護衛にウィズもつく予定だったんだけど、それどころじゃないみたい。」
ルイナが話しかけてくる。
「なんせ、対魔族の最高戦力よ。一国の騎士団長でも全然相手にならないらしいわ。そんな聖騎士が行方不明なの。」
「今、トアレの遺跡は厳重に封鎖されているらしい。」
アルがそう言う。
「・・・俺みたいな採掘師には、魔族だの聖騎士様だのは関係ない話だぜ。」
「そりゃ違いねえな。」
タムが笑うのであった。
1日目の行程が過ぎようとするとき。
途中、リアリトアは他の乗客と特に話すわけでもなく、外をぼんやりと見たり、俺が暇つぶしと学習用に持ってきた、いくつかの本や絵本を読んだりしているようだった。
ちなみに、今回乗っている馬車は、採掘師用の馬車ではなく、様々な人が使う、一般の乗り合い馬車だった。
夜は外でテントを設営する者、外で寝袋をまく者、馬車の中で寝る者、夜を明かす方法はやはり人によって異なるようだ。
俺はというと、あらかじめベルフェンの街で購入しておいた、テントと、宿泊キットを持ってきている。
「こっちへ来てくれ。テントの設営の準備をしよう。」
そう言って馬車の中にいるリアリトアを呼ぶ。
「・・・リア。親しい人からはそう呼ばれているわ。」
「リア、それじゃあ向こうでテントを立てよう。」
「うん。」
テントを設営し、寝袋をリアリトアに渡すと、俺は適当にテントの中にシートを敷いて、外から夕食の炊き出しから2人分の夕食をもらってくる。
テントに入るとき、何かの結界を通ったような気がした。リアリトアの魔法だろうか?
「そら、これ。食べよう。」
寝袋の上にぺたっと座っているリアに声をかける。
「ありがと。」
こうして見ていると、普通の女の子なのにな。
「なあに?」
なあに!?
「いや、何でもない。こうして見ていれば普通の女の子に見えると思って。」
「・・・普通の女の子だよ。」
「ああ、いや、ああ、そうだな、普通の女の子だ。」
普通の女の子が魔族を相手に戦ったりする世界なのだろう、きっと。
「失礼しちゃうわ。」
少しだけ頬を膨らませながら、リアリトアは答える。
「・・・俺を捕まえなくていいのか?」
「・・・うん。」
「・・・おう。」
ここで、なんで?と聞くのはダメな魔族だろう。
ちょうどリアリトアと目が合うも、ふいっと逸らされてしまった。




