3話
俺はトアレの村とベルフェンの街の間にある、ちょっとした森まで行く。
ここなら、人通りもほとんどなく、魔物もほとんど出ない。
マジシャンのスキルを使用してから24時間はまだマジシャンの効果が続く。
その間にさっさと準備をしなければならない。
「Domus」
お化け屋敷〔文字通り〕が呼び出される。某有名ゲームのボス魔物にそっくりだ。
「質素な家に」
と短く命令すると、お化け屋敷から、粗末な家に変化する。
「ふかふかなベッドと、それなりの量の食糧を」
すると、家の中にベッドと、それなりの量の食糧が出現する。
ベッドや食料はこいつがため込んだ魔素が変換されて作成されるという、謎仕様である。
そして、女をそのふかふかなベッドに横にさせる。
1日経つと、この家は消滅するかもしれないが、魔素から変換されたものはそのまま残るはずだ。
「俺にも簡単なベッドをくれ」
というと、簡単なベッドが作成される。
腹が減った。なんか作るか。
ちなみに食料はなんと豚肉や、鶏肉、牛肉、それに人参、キャベツ、レタス、ジャガイモなんかもあり、米とパンである。
「保冷庫と調理器具と食器は作れるか? 」
すると、保冷庫と調理器具と食器が作成される。
「後は、タンクと手洗いとシャワーと着替えをいくつかだな。」
手洗いとシャワーを作成し、決して中身は粗末な家とはいえない家を完成させる。
―今のうちに何か作るか。
そして、女がいる寝室の扉を閉め、調理にかかる。
ビーフシチューを作ろう。パンもあるし。
「テーブルとイスをいくつか」
テーブルとイスが表れる。
絨毯を敷くのを忘れていた。
「絨毯を」
―魔素が不足しています―
随分といろんなものを備え付けたからな。しょうがない。
しかし、その場の勢いと女の可愛さと俺の打算で助けちまったが、どうしたもんかな。
起きてまた襲い掛かってきたらどうしよう。
【魅了・弱】の効果に期待するしかないか。
深夜もすぎ、そろそろ夜も明けようかというころ。
とりあえず、シチューを作りながら、よく考える。
タイムスタンプはトアレの遺跡だ。ここから少し距離がある。
一直線に村まで走るか。人がいる場所でなら安全なはず。
最悪、起きた女が襲ってきたら戦うしかない。
念のため筋肉の状態をチェックするべくマッチョなポーズをとっていると。
「ヒッ」 何やら小さい声が聞こえた。
ドアの方を振り返ると、こちらの様子を伺う小さな顔が少し覗いている。
俺はしばらくの間、そのままでいたが、ポーズを解除する。すると、そのままドアが閉じる。
俺は無言で椅子に腰をかける。
―触らぬ神に祟りなし。
などとくだらないことを考えていると、再び、ドアが開く。
「やあ。元気かね。」
「・・・あなた、何なの。」
当然の疑問だろう。その気持ちはよく分かる。
「ただの魔族だが。」
「・・・何、考えているの? 」
これも当然の疑問だろう。
「これからの人生について。」
ある意味とても正しい答えである。
「ふざけないで!あ、いた・・」
女は頭を抱える。
「おい、無茶はするな。まあ、座れよ。シチューがあるぞ。」
「はあ。もういい。」
彼女は大人しく席に座る。
「そら、食え。」
俺はそう言い、シチューを皿によそい、そいつを机に置いてやる。ついでに俺の分もテーブルに置く。
「・・・毒、入っていないわよね? 」
「入っとらんわ。」
そう言って先に食べてみせる。
そして、一口。
「・・・おいしい。」
「それは良かった。」
そう言うと、俺はココアを用意する。久しぶりのココアである!お湯を入れてっと。特に深夜に飲むココアは大好きだった。
「それって・・・」
「ああ、ココアという飲み物だ。ビターなやつだからな、お子様の口に合うかどうかは分からんな。」
「・・・誰もくれとは言ってないわよ。」
「今日は泊っていけ。風呂がある。着替えもこれくらいしかないが、これでも着ていてくれ。」
と言って、浴衣を渡す。
「お風呂があるの? ? 」
「ああ。適当にゆっくりしていってくれ。」




