10話
俺はそのまましばらく冒険者と歩くことにする。
もちろん疲れたら馬車に戻るつもりだ。
ちなみに、採掘師の乗り合い馬車は、貴族や商隊の馬車に比べて護衛料は安い。
一般の馬車の護衛料よりも安いくらいかもしれない。
「どうしてなんだ? 」
俺はその理由を聞いてみる。
「採掘師を襲ったとしても利益があまり出ないからな。」
タムがそう答える。
―なるほど。理由はなんとなく分かる。
「でも採掘や一般の馬車は、定期的に仕事が入るのよ。」
ルイナがそう言う。
「むしろ、盗賊どもが襲ってくるとしたら、ルイナやミーシャ、ウィズを狙う可能性の方が高いだろうな。」
これはタムの意見だが、俺もそれには思わず頷いてしまった。
「そんなことはさせないさ。」
アルがやはり自信たっぷりに言う。確かにその以前見たその実力には光るものがあった。
「ところで、あんちゃん、オークを狩ったんだって? 採掘師のくせして、凄いじゃないか!」
アルが俺に話しかけてくる。
「ああ、いやカラタン山に向かう途中、他の冒険者に弱らされたオークを狩っただけだ。」
「へえ。でもやるわね。」
ミーシャが褒めてくれる。ちょっぴりうれしいぜ。
「ところで、盗賊は強いのか? 」
「手ごわいですわ。」
そう言ったのはウィズ。もしかして戦ったことがあるのかもしれない。
「盗賊ってのは、単なるゴロツキだけじゃあなく、元冒険者や、傭兵、時には元騎士とか。そういった類のものが混じっていることがあるんだ。」
タムが続ける。
―と、その時だった。
「ちょっと止まって。」
ルイナがそう言う。
「・・・いるのか? 」
アルが声を潜めて問いかける。
「分からない。でもあっちに何か見えた気がするのよ。」
ベルフェンの街からゴラムまでの道は荒れ地が続く。
だが、ところどころに大きな岩が転がっており、その全てが見渡せるわけではなかった。
「ゴラムまではあとどれくらいかかりそうだ? 」
そういえばゴラムまでかかる時間を聞いていなかった。
「明後日の夜には着くわ。盗賊が仕掛けてくるとしたら、きっと夜ね。」
ルイナが答える。
「何度か戦ったことがあるのか? 」
「一度だけよ。その時も夜だったわ。こちらが疲労している時に襲ってくるのよ。でも、その時はただのゴロツキだった。」
答えたのはミーシャである。華奢に見えて、しっかりと歩くことができるようだ。
「盗賊との戦いはどうしてもこちらの被害も大きくなる。神官の力が必要なのさ。」
アルがそう言う。
「5人だけで大丈夫なのか? 」
「いざとなったらミーシャさんがいますから。」
ウィズが微笑みながらそう言った。
やはり魔法の力というのは凄まじいものがあるのだろう。
そして、1日目の夜。
今日の夜は野宿だ。途中あえて道を逸れて、少し回りから目立たないような木々の陰に馬車を止める。
俺は採掘師たちと食事を摂ることにした。夜の分は、ギルドからある程度の食料が支給されているのである。
「よう、あんちゃんよ、あんたオークを倒したんだって? やるじゃねえか。何かの戦闘用の技能でも持ってんのか? 」
「いや、俺が持っているのは筋肉魔法だけだ。」
一瞬場が静まったあと。
「ギャハハ!なんじゃそいつは!こりゃ傑作だ!どんな魔法だ? 」
「おいおい、筋肉魔法だと? 確かに採掘師らしいな、そいつは!」
「ただでさえ筋肉なのに、これ以上どこを鍛えるってんだ!」
と大爆笑された。
「まあな。」
にやりとして、マッスルポーズをキメつつ、答える。むん。とはいえ、長年の研鑚を積んだ採掘師たちの筋肉のレベルにはまだまだ遠い。
だが、俺と同じようににやにやしている採掘師たちだった。
「―ねえ、あれ。」
少し離れた位置で周囲を見張っていたミーシャが言う。
「見てはいけないですわ。」
ウィズはあえてそちらを見ないようにしながら言う。
ウィズは神殿に属する。治療など、やむを得ない場合を除いて、異性の裸を見ることは褒められたものではなかった。
「採掘師たちって、相変わらずよね。」
ルイナがため息をつきながら言う。
そんな感じで。それぞれ夜を明かすのだった。




