9話
「おまえさんとこは、最近は護衛ばっかりだな。」
店主であるティムがアルに話しかける。
「それなりのもんにはなるんだよ。」
確か、前衛でタンクを務めていたタムが言う。
「今度は盗賊にも気をつけなきゃね。」
そう言うのは、弓使いのルイナ。
「盗賊には技能を持つやつもいたのかしら? 」
魔法使いのミーシャが言う。
彼らはまだあどけなさも残る年ごろというのに、他の冒険者と同じく、堂々と酒場で飯を食っていることに少し驚いた。
「盗賊は冒険者崩れのやつも多いらしいぜ。銅級とはいえ、気を付けるんだな。」
「そうするよ。」
アルが肉を食べながらそう言った。
美味そうな肉だ。あれはオーク肉だろうか?
――ドンッ
「うぉっ!」
「あら、ごめんなさいね。マスター、後でこの人に同じものを。」
「ウィズ!」
アルが呼びかける。
神官だろうか? 神官の白いベールは被っていないが、服装がおそらくは神官のもの。
白い衣が特徴的だ。いささか酒場には不似合いだが、あの冒険者たちの仲間なのだろう。
アルより若干は年上のように見えた。
当然ながら、その瞬間注目を集めたのは彼女の方だ。俺は人知れず、酒が零れたテーブルを拭くことにする。
「今回は盗賊も出るかもしれないから、助かるわ。」
そう言ったのはミーシャである。
「ごめんなさいね。遅れちゃったわ。神殿の方のお仕事があって。」
「マスター、オークの肉はまだあるのか? 」
既に皿を空にしているように見える、タムがそう言うと、
「ウィズの分も頼むよ!」
美味そうに肉を頬張りながら、アルがそう言うのだった。
翌日は、採掘ギルドに行くことにした。
採掘ギルドは冒険者ギルドとは異なり、依頼版に紙が貼っているわけではない。
馬車が出る時は、掲示板にそのまま板で〇〇山、〇人募集といった形で、後は出発日とおよその期間が設定されてある。
馬車は、カラタンの山まで行く際に使用した採掘師専用の乗り合い馬車と、一般の乗り合い馬車のいずれの場合もあるようだ。いずれの場合も、行き帰りは冒険者による護衛がつくが、もちろんそのまま採掘場まで徒歩で行くこともできる。
依頼は採掘場にある採掘ギルドで直接受けることもできる。採掘場は大抵が人手不足であった。
「おばちゃん、ゴラムの採掘場まで行きたいんだがー。」
「ああ、ちょうど明日乗り合いの馬車が出るよ。カラタンのゴブリン退治がいつまで続くか分からないからね。」
「まだ席、空いているのか? 」
「空いてるよ。予約しておくのかい? 」
「ああ、そうするよ。」
もしかすると、明日はアルたちのパーティーと一緒に採掘場に行くことになるかもしれない。
馬車乗り場にて、やはりその場にいた冒険者はアルたちだった。
ちょうど広場のようになっており、その周囲に少しばかり、乗客相手のちょっとした軽食を販売している屋台が出ている。そんな場所にベルフェンの馬車乗り場はあった。
「あら、あなたは? 」
と言うのは、昨日のウィズという女神官である。
「ああ、あのときの。どうも。」
俺は挨拶をする。
「あんちゃん、見覚えがあるぜ。」
そう言うのはアル。確かこの冒険者たちのリーダーだ。
「そういえば、前のカラタン山に護衛をしたときにもいたわね? 」
そう言ったのは魔法使いのミーシャである。
「ああ、そうだ。今日もよろしく頼むよ。」
「今回は長旅になるぜ? 覚悟しな!」
そう言うのはタンクのタム。
「そろそろ揃ったかしら? 準備はいい? 」
この長い髪が特徴的な女性は、弓使いのルイナ。
「ああ!よさそうだ!」
今回の馬車は採掘ギルドが用意した乗り合い馬車のようだ。アルの声とともに、馬車は出発するのだった。




