第37話 ケルシャを生産しようぜ
「というか、リュージは変な料理作るな」
「肉料理作れ肉料理、マヨネーズに合う奴」
等と言いつつ二人のキッチンメイドはケルシャの漬物をモシャモシャ食べていた。
「わるくないなあ、漬物なのにケルシャの味がしてうめえ」
「なんか、後引くなー、もう無いのか、もっとくれ」
ぶつくさ言うわりには好評だった。
前世にも居たなあこういう人。
「ケルシャか、じゃあ、漬けよう」
「一人半玉あればいいか」
「そんなに作ると大変だよ」
「量が無いと寂しいじゃんよ、あと多分、マヨネーズに合う」
ミレーナさんはマヨネーズにはまってるなあ。
サブキッチンの調理を終わらせて、ケルシャの千切りを始めた。
漬物用の壺もあまり無いね。
「あまり漬物作らないからな」
「普通のしょっぱいし」
「山ほど作ろうぜ」
メインキッチンでは壺二つだったが、サブキッチンでは十個以上の壺に漬ける事とあいなった。
わりと大変なので、三時前まで掛かってしまった。
「だいたい解った」
「塩をあまり使わない、が結構使うな」
「塩を甘くすると、今度は腐りますからね」
「悪くなる寸前の塩加減か、リュージの発想はすげえ」
ケルシャ漬けが十壺できあがった。
領館のスタッフに出せるのは三日後だね。
「明日も十壺漬けよう、多分、みんな欲しがる」
「そんなに人気が出るかな」
「出るよ! なぜならこれはリュージ様のレシピだからなっ!」
「そうだそうだ、だから肉料理発明しろ、すげえの」
順当に受けそうなレシピは鶏の唐揚げだろうか、まあ、それはお嬢様が健康になってからだな。
今、唐揚げを発明すると、ばくばく食べて体重が元に戻りかねない。
ケルシャ漬けでお嬢様が健康になったら出そう。
三時になったのでメインキッチンへと戻る。
だいぶみんなも当たりが柔らかくなって働きやすくなったな。
フリッツさまの処遇はどうなったのだろうか。
さすがに、あの粉はやばそうだけどね。
ワイワイと働き、晩餐も終わらせた。
「サブキッチンはケルシャをどんだけ漬けた?」
「十壺漬けてましたよ、明日も漬けるって言ってました」
「ああ、そうか、無くなったら寂しいしな、三日置かなきゃならないから量の調整が難しいな」
「絶対、気に入るって、明日は三壺漬けようぜ」
「そうだな、漬物と言いつつ、野菜料理の一種だからな」
確かに後引く味だから量を食べちゃうんだよね。
その日は夜道をビクビクしながら帰り、そして三日が経ってケルシャが漬かった。
「よし、お昼に出して反応を見るぞ」
「まあ、お嬢さんが食べなきゃ、俺らが食べるしな、エールに合いそうだ」
「ああ、それは有りそう、こんどやってみるべ」
「まあ、多分、お嬢様も御領主様も気に入って、ケルシャ漬けはなかなか喰えねえとは思うがな」
「だと良いんだけど」
祈るような感じで、スダラマッシュサラダを作り、そのお皿の端にケルシャ漬けを乗せた。
あと、お嬢様の大好物の人参の甘い煮もね。
「あら、今日はお漬物付きなのね」
「実は新作だけど、反応を見たいからそれは伝えないでね」
「新作なの、どんな味かしら」
「領館のまかないでお昼にでるから試して見て」
「わかったわ、楽しみね」
メイドさんのお昼は、御領主さま、お嬢様の後なんだな。
料理人もそう。
ハラハラしながら待っていると、配膳メイドさんが満面の笑みで帰って来て、Vサインを指で作った。
「一口食べて、御領主さまも、お嬢様も気に入ったわ。お漬物なのにしょっぱくないのが素晴らしいですって。またレシピを買ってくれるそうよ」
「おお、良かったなあリュージ」
「さすがはリュージだな」
「えへへ、ありがとうございます」
よしよし、上手く行ったぞ。
レシピも買ってくれるのか、嬉しいなあ。
サブキッチンに移動しようとしたら、お嬢様がキッチンまでやってきて褒めてくれた。
「素晴らしいわリュージさん、お漬物なのにお野菜の味がしてしょっぱく無かったわ。とても美味しくて、マヨネーズにも合って、とてもうっとりしてしまいましたわ、また出してくださいね」
「あ、ありがとうございます、晩ご飯にも出しますから」
「まあ、それは嬉しいわ、よろしくね」
なんだか、お嬢様、すごく綺麗になったなあ。
吹き出物が落ち着いて、大分痩せたので娘さんらしい体型になってきたね。
なんというか、深窓の御令嬢になりかけだね。
この変化を俺の料理が成し遂げたなら、それは誇っても良い感じで嬉しいなあ。
サブキッチンで調理を手伝う。
今日はお肉にスダラマッシュ、そしてケルシャ漬けだ。
マヨネーズも付くぞ。
子供メイドと一緒に泡立て器でシャカシャカ作るぜ。
一段落したら、サブキッチンのみんなとまかないを食べる。
ああ、なんだか、メインキッチンのケルシャと味が違う。
「メインキッチンのケルシャ漬けと味が違うね」
「そうか、材料は一緒なのになあ、どっちが美味い?」
「風味が違うので、どっちがどうじゃないけど、面白いね」
発酵に使われる菌の違いかもなあ。
醸すのが違うのかもね。
「あとで、メインキッチンのケルシャを貰ってこよう」
「味が見たいね」
子供メイドもうなずいているな。
「ケルシャ漬け気に入った?」
「シャリシャリして美味しいれす」
「そうかそうか」
さて、サブキッチンの奴をメインキッチンに持って行って、味を見て貰おう。
ついでにメインの蕪を食べるという事で、ファビアさんも付いて来た。
「え、サブキッチンの漬けた奴と味が違うのか」
「環境のせいじゃないかな」
「これかー、うはっ、うわははは、味が違うぞっ、ロッカさん」
ファビアさんがメインキッチンのケルシャ漬けを口に放り込んで笑い出した。
ロッカさんも、サブキッチンのケルシャ漬けを食べて笑い出した。
「味がちがうなあ、メインのほうがちょっと甘い感じで、サブが少し酸っぱいな、へー、こんなに違うか」
「俺はサブの方が好きかな、酒に合いそうだ」
「あー、酒に合いそうだねえ」
「そうだそうだ、今度キッチン合同で飲もうぜ、領祭の打ち合わせもあるしよ」
「そうしようそうしよう、ミレーナに伝えとく、あとこれも喰わせる」
ファビアさんはケルシャ漬けの入った小壺を抱えてサブキッチンに戻っていった。
さて、俺も晩餐を頑張ろう。
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