第32話 アマンダさんに村まで送ってもらう
アマンダさんと雑談しながら川縁の道を村まで歩いた。
色んな事を知ったぞ。
というか、前世には女騎士さんは居なかったし、村にも居ないからなあ。
とても新鮮な存在であった。
雰囲気的には前世の運動部の女の子っぽい感じかな。
サバサバしてる系だ。
結局今晩はゴロツキは来なかった。
静かなものだったな。
「ありがとうございます、こんな夜遅くまで」
「いいんだいいんだ、仕事だし、あ、あと、気を抜くな、二三日して、もう来ないだろうと思った所に来る物だからな」
「は、はい、気を付けます」
「んじゃあな、また明日」
アマンダさんは片手を振って領館の方へ去って行った。
やっぱり女騎士さんはロマンだなあ。
お付き合いとかは……。
無理だろうなあ、向こうは貴族だしなあ。
アマンダさんも料理人とかは眼中に無いだろうしね。
うんうん。
なんとなく気落ちしながら村の門をくぐり、家に帰った。
「おかえり、リュージ」
今日も母ちゃんが針仕事をして俺を待っていてくれた。
「寝てて良いのに」
「そうもいかないよ」
母ちゃんは優しく微笑んだ。
乏しい灯りの下で針仕事すると目が悪くなるよ。
まったくさあ。
俺は鞄に入れていたケルシャを出した。
「なんだいそれ」
「次の料理の材料、漬物を作ろうかなって」
「あはは、なにげにご馳走だね」
漬物は塩を結構使うので、貧乏な我が家だと滅多に出ないご馳走である。
というか、材料が高いわりに、子供達が喜ばないので、近所から貰ってくる以外、我が家の食卓では見た事がないな。
ここら地方の漬物は、もの凄くしょっぱい。
塩分の補給先でもあるので、裕福な家で漬けられて食されるのだ。
お祝いごとがあると貰えるので食べた事があるが、塩の塊みたいにしょっぱいな。
それでも俺達は塩分に飢えているので、シチューに漬けてガブガブ食べていた。
でも当然だが、漬物よりも肉だ、ベーコンにソーセージだ。
「あ、これ、貰ったから」
俺は母ちゃんにメレンゲの袋を渡した。
「おや、これは嬉しいね、こっそり昼間食べるかね」
母ちゃんはクフフと笑った。
バーン! とベットから全裸のピカリが飛び出して来た。
「くれっ!! 兄ちゃんのお土産、くれっ!!」
「んもう、ピカリは食いしん坊ね」
母ちゃんは袋からメレンゲを一かけ出してピカリに渡した。
奴は文字通りむさぼり喰った。
母ちゃんも一かけ食べた。
「上品な甘さだねえ、リュージは要らないのかい」
「領館で食べたから良いよ」
「くそう、兄ちゃんばっかり領館で良い物食べやがって!」
「役得というやつだぜ。毎食お祭りのご馳走みたいな物が出て美味しいぞ」
「いいなあいいなあ」
ピカリはよだれをダルンダルンと出した。
「まあ、兄ちゃんが領館の料理人になって、色んな物が食べられるようになったから良いか、うん」
「まあ、そのうちもっと良い食生活になるようにしてやんよ」
「ほんとか、期待してるぞっ!」
俺達のやりとりを母ちゃんが微笑みながら見守っていた。
さて、服を脱いでベッドに入った。
「兄ちゃん、ケルシャで何を作るんだ?」
「漬物」
「漬物かああああ」
もの凄く残念そうだな。
小麦粉が潤沢にあればお好み焼きも作れそうだが、ソースとか無いからな。
あと、なにげに小麦粉は高いのだ。
ケルシャの仕込みは明日の朝、早起きしてやろう。
という事でおやすみなさい。
そして今朝も犬がベッドから起き出して目を覚ました。
ふわああ、良い天気だな。
母ちゃんが朝ご飯の準備をしている後ろで包丁を借りてケルシャの仕込みをする。
まあ、朝ご飯は、シチューに黒パンなので手がかからないからね。
厨房に転がっていた丁度良い感じの壺を洗って、千切りにしたケルシャを詰めて行く。
塩と葉っぱを交互になるようにと。
壺にパンパンに入れて蓋をして針金で封をする。
二三日すれば酸っぱい漬物ザワークラウトというか、水キムチというか、そんな物が出来るはずだ。
「仕事用の実験漬物だからな、盗み食いしたらただではおかんぞ」
「た、たべましぇんっ」
「そのかわり、大人しくしていれば、試作品を一緒に食べて味を見る栄誉をやろう」
「わかった、食べたいが我慢するっ」
ピカリの口から、よだれがだらだら出ているが、大丈夫だろうか。
「私が見ていてやるから」
「おお、母ちゃん頼んだぜ」
「くそうっ」
ピカリは盗み食いする気がビンビンだったな。
「リュージ、泡立て器のメッキ出来た、交換するぞ」
「え、もうできたのか、うわあああ」
小兄ちゃんが渡して来たのは、なんだか凄くピカピカしていて良い感じにメッキされた泡立て器だった。
錫メッキなんだけど、わりと均一にメッキが付いていて凄く使いやすそうだ。
俺は古い泡立て器を小兄ちゃんに渡した。
これは洗ってメッキするとの事。
「これは良いなあ、領館で見せびらかして仕事取ってくるよ」
「あはは、たのんだぜ」
「私のは私のは?」
「明日持ってくるよ、一日一件が今の所限界だな」
「そうか、良く出来てるもんな」
「ありがとう、親方も気に入ってくれたよ」
小兄ちゃんが行ってる村の鍛冶屋のオヤジさんは凄く怖くて仕事に厳しい人なのだ。
その彼に気に入られるとは、凄いな、メッキ泡立て器。
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