閑話 カボチャの祭典 後編
穂香襲撃の反省から、没頭しすぎないように読書を再開しました。するとスマホの着信音が響きます。穂香襲撃の前だったら、気が付かなかったかもしれません。
かけてきたのはお父さんで、パーティーを外でやるので迎えを送った。そろそろ着く頃だから、会場に来るようにとのこと。
ハロウィンパーティーなので仮装した方が良いかと聞いたら、そのままで良いとの返事。両親と穂香は仮装しているのに、僕だけしなくて良いのかな?
と思ったけど、仮装しようにも衣装がない。今から買いに行く時間もないし、諦めて穂香を呼びに行きます。
「穂香、お父さんが迎えを寄越したから、それでパーティー会場に来るようにってさ」
「ありがとう、お姉ちゃん。外が騒がしいのは、その迎えのせいなのかな?」
嫌な予感しかしませんが、外に出て確認するしかありません。穂香を連れて外に出ると、正面の道路にはパトカーが二台停まっていました。
その周囲にはご近所さんが集まり、二台のパトカーに挟まれて停まっている物を凝視しています。
「お姉ちゃん、あれって……」
「白馬に牽かれたカボチャの馬車だねぇ」
馭者席には、ネズミの耳を頭頂部に付けた少年が座っています。お父さんの言った迎えって、あれなのでしょうね。
「薫さんと穂香さんですね、ご両親から頼まれお迎えに参りました。どうぞお乗りください」
馭者席から降りた少年は、馬車の下部から小さい階段を取り出し馬車の扉に付けました。
「お姉ちゃん、どうするの?」
「警察もいるし、変な事にはならないだろう。護身具もあるし、最悪穂香は箒で逃げればいい」
通常ならば乗らないでしょうけど、現実離れした光景に軽く混乱していたかもしれません。僕は穂香と共に馬車に乗り込みました。
赤色灯を光らせ、サイレンを鳴らしたパトカーに挟まれた馬車は信号を無視して走ります。万が一を考えて走行ルートを窓から見ていましたが、市街地を抜けて市の境の河川敷に向かっているようです。
馬車は県道をそれて、河川敷に降りました。それに伴いパトカーは離れ、馬車だけが広い川岸に停まります。そこでは、カボチャの灯籠に照らされて色々な仮装をした人達が談笑していました。
「薫、穂香、ようこそ。参加者が増えてな、急遽ここでパーティーとなったんだ」
お父さんとお母さんの出迎えに、緊張していた心が緩みました。
「ミイラ男にサスカッチ、エルフまで。あのウェアキャトルなんて本物みたいですね」
「薫ちゃん、ミノタウロスと言わずにウェアキャトルと言うとは通だね」
「岡部店長、お久しぶりです。多少の雑学知識はネットで仕入れていますから」
両親の影に隠れて気付きませんでしたが、超科学の産物を販売するお店の店長さんも来ていました。ゾンビの仮装をしていますが、中々にリアルでちょっと怖いです。
「今日は色々な種族の人が来ているから、楽しんでね。彼らも交流を楽しみにしていたから」
この会場のお客さんは、外国の方々なのでしょうか。最近来日する外国人が増えたとはいえ、話す機会は余りありません。折角のパーティーですし、話しかけてみましょう。
僕は両親に断りを入れ、会場の方に歩を進めました。近くで見ると皆さん仮装の完成度が高く、本物と錯覚してしまいそうです。
お、終わらない……
閑話最後になる終編はすぐに書いて更新します。
今度こそ次で終わるはず。
終わる……よな?




