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Our Story  作者: NeRix
水の章 第三部
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第八十五話 静けさ【ミランダ】

 テーゼに来て二日目の朝、新しい家での目覚めはとっても気持ちがいいものだった。

瞑想のあとにお酒飲んでベッドに入った頃には、恐いなって気持ちも忘れちゃってたな。


 あと半年・・・なんか嫌なことがあっても、ここでみんなと笑えれば越えていけそうだ。



 「おはようミランダ。よく眠れた?」

談話室に入ると、ニルスがとびきりの笑顔で出迎えてくれた。

 きのう帰ってからすごく機嫌がいいのよね。聞いても教えてくれなかったけど、今日は口を割らせてやろう。


 「寝れた。なんも出なかったね」

「この家にはなにもいないよ。シロが言ってるんだからもう心配しないで」

そうよね、精霊がちゃんと見たんだから幽霊なんているはずない。


 「おお、二人とも早いのう」

「おはよう」

おじいちゃんとシロが入ってきた。

体から湯気が出てるから、朝風呂でもしてたみたいだ。

 「シロ、いつの間にあたしのベッドからいなくなったのよ?」

「ミランダが僕の耳をしゃぶりだしたから逃げた」

「そんなことしてない。嘘ついちゃダメよ」

「された・・・」

たぶん本当なんだろうな。・・・あっちじゃなくてよかった。


 「ヴィクターさん、ステラの様子がちょっと気になります。呼吸はしているんですが、揺すっても反応が無くて・・・」

「きのう張り切り過ぎただけじゃろう。ステラ様は眠りが深いんじゃ、その内起きるから心配いらん」

きのうのステラはたしかにはしゃいでたな。

 掃除はすべて終わらせた。まあ・・・シロとステラがいたからだけどね。

全部の部屋が綺麗になって、新築みたいな匂いまで感じるくらいだ。

 当然だけど、魔法の力はあたしよりずっと上・・・。競いたいわけじゃないけど、同じくらいできるようになりたいな。


 「もしや・・・ベッドでも張り切っていたのではないか?」

「あの・・・そんなことはありませんよ」

「なにもしておらんのか?」

「ただ一緒に寝ていただけです。・・・当たり前じゃないですか」

ニルスは顔を赤くした。

 ・・・当たり前ではない気がする。男と女が一緒のベッドで寝てて、なんもないとは思えな・・・いや、あたしとニルスもなんもなかったか。

・・・まだ恋を知ったばかりの子どもだから仕方ないのかな。

 

 「まあ今はそれでいいのかもしれんの。話は変わるが・・・ニルス殿、今日は庭を綺麗にしたいんじゃ。色々道具を買ってもよろしいか?」

「はい、大丈夫ですよ」

「では、あとで出かけてくるかのう。シロ殿、また一緒に来てくれるか?」

「うん、行く」

おじいちゃんはシロを孫みたいにかわいがっている。もしくは置いてきた息子と重ねているのかもかもしれない。


 「ねえねえ、壊れてるベッドとか家具ってどうするの?」

「風呂焚きに使えばいいじゃろ。あとで全部庭に出そう」

「じゃあ一回僕の鞄に入れるね」

家のことも二人で色々やってくれて助かる。

家具なんかは時間が経ち過ぎて腐ってるのとかもあったからな・・・。


 「ヴィクターさん、十万あれば足りるでしょうか?」

「多すぎる・・・まあ、余ったら戻そう」

「シロ、お小遣いを渡しておくね。でも無駄遣いはダメだよ。それと・・・大通りに大きなお菓子屋さんがある。そっちまで行くなら見てくるといい」

「うん、ありがとうニルス」

何買っても怒んないくせにまた甘やかしてるな。


 「それと、ニルス殿がきのう持ち帰った花・・・」

「夕凪の花ですか?」

そういや帰った時に持ってたな。花瓶に移して自分の部屋に飾るって言ってたっけ。

 「そう、夕凪の花・・・ふふ、種が取れたら植えてもよろしいか?」

おじいちゃんはとても嬉しそうに笑った。

庭師だから詳しいんだろうな。

 「いえ・・・戦いが終わったら父さんの所で咲かせようと思っています。きっと喜んでくれるので・・・」

「・・・そうじゃったか」

「なにか?」

「いや、無理にとは言わん。それなら別な花にするだけじゃ・・・」

今度は寂しそうな顔してる。

あの花・・・好きなのかな?



 「さて、なにか作ろうか」

ニルスが立ち上がった。

そっか、ステラも寝てるからあたしたちで準備しないといけない。


 「なに作んの?」

「魚が食べたいんだけど・・・。あれ・・・無い」

シロの鞄にそれは入っていなかったみたいだ。

 そういや、食材はほとんど使い切ってテーゼに来たんだったな。

きのうもできてるのを買ってきて食べたし、まずは調達しないといけないのか。


 「仕方ないな、市場に行ってくるよ。朝市で新鮮な魚が入ってるはずだ」

テーゼの朝市か・・・。

 「ねえニルス、あたしも一緒に行っていい?」

「うんいいよ。シロとヴィクターさんは・・・」

「儂は騎士じゃから残る」

「僕も・・・お留守番してる」

おじいちゃんはいつも通りだけど、シロはちょっとだけ思い詰めた顔をしていた。

またなんか悩みができたのかな?

 「どうしたのよシロ?」

「大丈夫、ステラが眠ってるからその間がちょっと心配なだけ」

「ああ・・・でもジナスは来ない気もするけどね」

「一応だよ。僕もそこまで心配してるわけじゃない」

一応か・・・まあ、時間はたくさんある。シロとのお出かけはまた今度にしよう。


 「じゃあオレたち二人で行ってきます」

「おいしいの買ってくるね」

「そういえばミランダと二人きりって久しぶりだね。・・・よし、行こう」

ニルスはケープを着て、帽子まで被った。

 髪の毛を隠すのに買ってきたらしいけど、故郷でここまでしないといけないのもかわいそうだな・・・。



 家を出て、市場へ続く道に入った。

見慣れない道、見慣れない風景、見慣れない空・・・だから全部新鮮だ。


 大きすぎる街、もし迷ったら誰も助けてくれなさそう・・・。

こんなことを思うのは、周りの雰囲気に違和感があるせいかもな。


 「ねえ、なんか今日は静かだね・・・」

きのうとは全然違う。お店は開いてはいるけど、通りに人がほとんどいない。いい天気なのに空気がどんよりだ。


 「・・・負けたんだろうね」

「負けたって・・・戦場?」

「・・・」

ニルスは何も言わずに頷いた。

 ああ・・・夜明けと同時に戦いがあったんだ。あたしたちが起きる頃にはとっくに終わってたのよね。


 「・・・前回はジナスの思い通りにならなかった。今回で調整したのかもね」

「ああ・・・あるかもね・・・。ねえ、負けると街がこうなるの?」

「そうだよ。・・・アリシアがルージュを身籠っていて出られなかった時もこうだった。五百人・・・多すぎるな・・・」

あ・・・そっか、負けたってことはそれくらい死んだ・・・。

ならこうなっても仕方ない。


 「ねえ・・・アリシア様のこと、心配じゃないの?」

ニルスの様子が気になった。

そこはなんとも思ってないって感じだからだ。

 「あの人は生きてるよ。雷神が戦死・・・そうなってたら逆に騒ぎになってるだろうからね」

「・・・そこは信用してるんだ?」

「強さだけはね」

たしかに言う通りかもしれない。そうなってたら、こんなに落ち着いてないよね。


 「じゃあさ、勝ったらどうなるの?」

「もっと人が多くなる。そして、色んな店が大安売りを始めるんだ。・・・あそこのパン屋は、毎回半額にしてくれるよ」

ニルスが指差したパン屋、今日は閉まっている。戦場の勝ち負けでこんなに街が変わるのか。


 「勝っても戦死した人は出るでしょ?」

「出る・・・悲しむ人は必ずいる。でも勝ったんならその人は戦った意味があったって思えるでしょ?」

「そうだね・・・負けて失うだけじゃ辛いよ」

なにも意味が無かったっては思いたくないよね。・・・あたしだってそうだ。


 「自分で決めて戦場に出てる。そして、直前での辞退も認められている・・・それでも、残された人たちはやりきれないんだよ・・・」

ニルスは自分の手を見つめた。

この静けさは、悲しむ人たちの胸をこれ以上打たないようにってことか。


 「・・・次でそれを無くそう。この雰囲気、あんまり好きじゃないんだ」

「うん、あたしたちでそうしよう。戦場から戻ったら大騒ぎしてさ」

「ふふ、そうだね。目に付いた人全員に大声で教えてあげよう」

ニルスは穏やかに微笑んでくれた。

その未来に必ず一緒に行こうね。


 「訓練場はどうなってるのかな?」

「・・・もう無人だと思う。帰って静かにしてるんだよ」

じゃあ、今日行っても誰もいないのか。

 「明日は早く出よう。べモンドさん・・・軍団長に話さないとね」

「うん、今日はあたしたちも静かにしてよっか」

「ミランダは明るい方が好きだよ」

ニルスが遠くを見つめた。

 戦場の敗北に思うところはありそうだけど、機嫌がいいのは変わらないみたいね。

なら・・・聞き出すか。


 「ねえ、きのう出かけた時になんかあったでしょ?」

話すまで聞いてやろう。仲間だからそういうのも分かち合ってほしい。

 「・・・別に、なにもないよ」

「はい、嘘をついていますね。誰かと会ったの?もしかして昔付き合ってた女とか?実はいたでしょ?」

「・・・そんなのいないよ」

「仲間に隠し事していいと思ってんの?」

ちょっといじわるなことを言ってみた。

これで口を割らなかったら、帰ってから四人で問い詰める。


 「これは・・・もう少しだけ、自分の中だけに置いておきたいんだ」

ニルスは胸に手を当てた。

 「そのうち話すから待っててほしい」

「やっぱりなんかあったんだ?」

「・・・あった。今はここまで」

「わかった。待ってるよ」

これ以上聞くのはやめてあげよう。

きっと憂鬱なことを忘れさせるくらいいいことがあったんだ。

 この様子だと、たぶんきのうの夜はうなされていない。一日でも長く今の状態が続くといいな。



 市場の入り口に着いた。

人はまばらだけど、やってはいるみたいだ。

 

 「ねえねえ、今はそのケープ必要ないんじゃないの?」

「一応だよ・・・。どこで知り合いがいるかわからないだろ」

「別に見つかったっていいじゃん。あたしも一緒だから大丈夫だよ。・・・よいしょ!」

「あ・・・やめろ」

ニルスのケープを引っ張って脱がせた。

せっかく故郷に来たのにコソコソしないといけないのはかわいそうだよ。


 「返せ・・・」

「なら付いてきなさーい」

このまま市場に入っちゃおう。



 「あ・・・」

「おや」

市場に入ると、男の人がこっちを見てきた。

 「・・・」

「え・・・ちょ・・・」

あたしの手が突然引っ張られて、ものすごい速さで脇道に連れていかれた。

戦いの時よりも速いんじゃ・・・。


 「ちょっとなに・・・知り合い?」

「静かに・・・顔を見られたのは一瞬だ。・・・ケープを返して。時間はかかるけど、一度ぐるりと回ってから市場に入ることにする」

知り合いなら挨拶くらいすればいいのに・・・。そんな必死になるほどなのかな?


 「・・・大丈夫、探したりはしてないみたいだ。なんで東区の市場にいるんだよ・・・」

「見つかったらヤバい人なの?」

陰から見ると、その男の人は何事もなかったみたいに並んだ果物を見ていた。気品って言うのかな?育ちも感じもよさそうな人だけど・・・。



 「ここを抜ければまた市場に出られる。魚を見て早く戻ろう」

「疲れたんだけど・・・」

本当にぐるっと回ってきた。

面倒な奴・・・一緒に出かけるのはしばらくよそう。


 「今日は魚よりも肉の方が安いですよ」

「な・・・」

いつの間にかさっきの男の人が横にいた。

待ち伏せしてたのか・・・。

 「・・・やはりニルス様でしたか。・・・お元気そうですね。背も伸びていらっしゃる」

「・・・まあ」

「先ほどはなぜ姿を隠されたのですか?私を見てすぐに逃げましたね」

「・・・」

ニルスは恥ずかしそうに俯いた。

全部見透かされてたんだね。



 「エディ・マーテルです。ニルス様は私と私の主のお友達で、幼いころから知っています」

エディさんは丁寧に頭を下げてくれた。

柔らかい話し方で、見た目通り感じのいい人だ。・・・あたしも挨拶しないと。

 「あたしはミランダ・スプリングっていいます」

「美しい方ですね。二人で市場・・・ご結婚されてお戻りになったということですか?」

「な、なにを言ってるんですか!ミランダは旅の仲間です!」

「ふふ・・・ずいぶん明るくなりましたね」

エディさんは焦るニルスを見て上品に笑った。

少年ニルスの近くにはこういう人もいたんだな。


 「ていうか、なんでこっちの市場に?西区から引っ越したんですか?」

「いえ、ジーナ様お気に入りの紅茶は、こちらにしかありませんので。・・・お戻りになったのであればいらしてください。それともすぐに出られるのですか?」

「・・・半年はここにいます。ジーナさんには・・・その内会いに行きます」

ジーナさんって、たしかニルスと仲の良かった元戦士の人だったっけ?


 「・・・ジーナさんはお元気ですか?」

「ええとても、ですが退屈されています。ニルス様のことは今でもよく話題に出されていますよ」

「そうですか・・・」

「今だから言いますが、ジーナ様はあなたがいらっしゃる日を楽しみにしていました。今回は来るかもしれないと、毎月あなたの好きなお菓子をご用意して待っていたのですよ」

エディさんはずっと優しい声だ。

やっぱり周りの人は、みんなニルスを気にかけてたのね。


 「・・・わかりました。必ず会いに行きます」

「ありがとうございます。そうだ・・・ぜひミランダ様もお越しください」

「え・・・いいんですか?」

「ジーナ様は、男性でも女性でも美しい方が好きです。なのであなたも気に入っていただけるでしょう」

なんか説明を聞くとあぶない気がする。・・・なんかあったらすぐに結界で身を守ろう。


 「ご挨拶も済んだところで、少し真面目な話をさせていただきます。答えたくなければ構いませんが・・・」

エディさんはにこやかな顔を引き締めた。

真面目な話・・・。

 「半年と仰いましたね。・・・戦場となにかご関係がありますか?」

「・・・今は詳しく話せませんが関係あることです。まずべモンドさんに話したい」

「なるほど・・・戦うのですか?」

「・・・はい」

今エディさんに話せないのは仕方ないか。

それにしても勘が鋭い人ね・・・。

 

 「アリシア様ともお話しされましたか?」

「・・・あの人もあとです」

「そうですか・・・私から口出しすることではありませんが、戦場に出るのであればアリシア様は無視できません。・・・わかっていますね?」

「・・・わかっています」

なーるほど、エディさんも和解してほしい派みたいね。

 ・・・いや、たぶんこの人だけじゃない。

ニルスと関わりのあった人たちはみんなそう思っていそうだ。


 「そして今はあの頃とは違います。なにかあればご相談ください。私もジーナ様もあなたの味方ですよ」

ほらね、やっぱりそうだ。

 「・・・はい、ありがとうございます」

「ルージュ様もとてもかわいいですよ。お喋りもできるようになっています。ああ、ご心配なく、兄がいる・・・誰も話しておりません」

「・・・安心しました」

ルージュか、早くどんな子か見たいわね。

お兄ちゃんがいるって知ったらどう思うんだろうな。


 「そういえば、今はどちらに?宿でも取りましたか?」

「首なしの家です。きのう借りました」

ニルスが恐いことを言った。

もう借りちゃったあとだけど、テーゼではそんなふうに呼ばれてたのか・・・。

 「まさか・・・正気ですか?安いからと借りた者は、最初の晩で耐えきれず出て行く場所ですよ・・・」

エディさんの顔が強張った。

え・・・あたしぐっすり眠れたけど・・・。


 「ニルス様もご存じでしょう?夜に子どもの首が両親と体を探しながら飛び回る・・・。やめた方がいいです」

「もうあの家ではなにも起こりませんよ。落ち着いたら来てもらってもいい、仲間も紹介します」

「取り込まれているわけではなさそうですね。・・・まず私だけで行きましょう。安全だとわかればジーナ様もお連れします」

かなりヤバい家だったんじゃないの?・・・子どもの首とか飛んでたら耐えきれそうもないよ。

 「ニルス・・・あの家本当に大丈夫なの?」

「うん、なにも無いよ。それにきのうは眠れたでしょ?」

そうだけど・・・しばらくはシロを離さないで寝よう。



 「・・・さて、私は朝食の支度があるのでそろそろ戻ります。帰るのが遅くなりましたが、ニルス様と再会できたのでよかったです」

エディさんはおしゃれな籠を持ち上げた。

ジーナさんって人もお腹を空かせて待ってるんだろうな。


 「オレもまた会えてよかったです」

「ふふ・・・隠れてやり過ごそうとしていましたね。あまり私を甘く見ないでください」

「あはは・・・」

底が見えない人だな。

戦いはわからないけど、他の所はニルスよりずいぶん上みたいだ。


 「最後に一つ聞きたいんですけど」

ニルスが緩んだ顔ではにかんだ。

 「エディさんは、どうしてオレたち家族によくしてくれるんですか?」

この人だけじゃないと思うけど、聞いておきたいんだろうな。


 「そうですね・・・。ジーナ様は私の責任ではないと仰っていましたが・・・」

「責任?」

「罪滅ぼし・・・そういった感情もあります。私は、そうしたくてもできなかったので・・・」

エディさんは空を見上げた。

ニルスへのってこと?

 「なんか、オレたちのことじゃないって気がしますけど・・・」

「どうでしょうね・・・。これ以上話すつもりはありません」

「わかりました。詮索はしません」

「ありがとうございます」

エディさんは少しだけ切なそうに目を閉じた。

言えないこと、誰にでもあるんだろうな。


 「ではまた・・・そうだ、ミランダ様」

エディさんは突然真剣な顔になって、あたしに近付いてきた。

 「いつでもいらっしゃって結構ですが・・・夕方以降になる場合はそれなりの覚悟が必要です。・・・夜になると変わります。朝まで・・・いや、やめておきましょう」

「え・・・ちょっと、どういうこと?」

「・・・お待ちしていますよ」

エディさんは答えないですぐに帰ってしまった。


 雰囲気で言ったら、首なしの家の話よりも背筋がぞくぞくした。

ジーナさんか・・・話してみたいけど夜はやめておこう。



 「いい魚が買えたね」

「お腹減ったから早く帰ろうよ」

帰り道、街は静かだけどあたしたち二人はいつも通りだ。


 「なんかすれ違う人みんな見てくるね。声小さくした方がいいかな?」

「そんな決まりはないよ。みんなが勝手にやってるだけ」

「そうなんだ・・・ねえ、走って帰ろうよ」

「いいよ、今日はうちで楽しく過ごそう」

二人で駆け出した。


 静かな街、戦場を終わらせたら騒がしくなってくれるのかな?

いや、あたしたちでそうするんだ。

半年後は、みんな笑顔で大騒ぎをしよう。

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