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Our Story  作者: NeRix
水の章 第二部
81/481

第七十七話 感情【ミランダ】

 「おはようニルス」

「ん・・・ああ・・・シロおはよう。ミランダはまだ・・・寝てるか。ステラは?」

シロとニルスの声で眠りから覚めた。

ずっと野宿だったからベッドが気持ちいい・・・。


 「ステラは朝の支度だって。・・・大丈夫?目が赤い」

「心配いらないよ・・・顔を洗ってくる。・・・魚を焼いてるみたいだね。いい匂いだ」

たしかにいい匂い・・・お腹が「なにかよこせ」って言ってる・・・。


 「ミランダは気持ちよさそうだから、できるだけ優しく起こしてあげてね」

扉が開いて閉じた。

 ニルスは水場へ行ったみたいね。あたしもベッドから出ないといけないけど、もう少しだけ・・・。

 「ミランダ、もう朝だよ。・・・きのうまたニルスがうなされてたんだ」

オトナシロの声が聞こえた。

・・・起きなきゃ。


 「・・・火山出てから一度も無かったじゃん。本当に大丈夫なんだって思ってた・・・」

「僕も安心してたけど・・・たぶんテーゼに行くからだと思う」

ああ、ありえる話だ。

 順番は一番最後だったから感情も押し込んで誤魔化せたけど、もうそれができなくなった。

残ってるのはテーゼだけ、アリシア様に会わないといけない。


 「それでどうしたの?あんたここじゃ魔法使えないでしょ」

「きのうはステラが安らぎの魔法をかけてくれた」

ああそうか、この結界の中でも魔法使えるんだったわね。

あたし・・・油断してたな。一緒のベッドで寝てあげればよかった。


 「それでね、ステラが・・・」

シロの小さな手があたしの寝ぐせを撫でた。

まだ真面目な話は続くみたいだ・・・。



 「・・・やれるだけやってみるって」

シロから、きのうの夜にステラと話した内容を聞いた。

・・・まあ助けてくれたんなら事情を話さないわけにはいかないよね。


 「ステラは女神様の愛を持っているから任せてもいいと思う。まだどうするのかは詳しく聞いてないけど、僕たちにも協力してほしいって」

「そりゃもちろんするけど・・・あたしもあとでステラと話してみるよ」

ステラが知ってしまったんなら、あたしもわかることは教えてあげないとな。

 

 本当はニルスが自分から話してくれればいいんだけど、それができるならこんな感じにはなってないよね。

 きのうだってルージュの話とか避けてた。

会ったばかりのステラとおじいちゃんには、負担かけたくないってことなんだろうな・・・。


◆ 


 「では、行きましょうか」

朝食が済むとおじいちゃんが屋敷に入ってきた。

家族との時間はどうだったのかな?


 「奥さんとあの子にはちゃんと言ってきたの?」

「もちろんじゃ。・・・必ず帰るともな」

「あのさ・・・ちょっとくらいカッコよくできないわけ?」

「・・・手が勝手に」

あたしのお尻が揉まれている。まあ・・・別にいいけど、奥さんのこと思うと良くないよね。

 「あたしも挨拶してくるよ。今のことも伝えたいし・・・」

「や、やめてくれ・・・」

「じゃあ調子に乗らない」

「・・・たまには許してくれ。・・・カッコつけて出てきたんじゃ。今戻ったら情けないと思われる」

なら最初っからやんなきゃいいのに・・・。


 「ニルスはああいうことしないの?」

「・・・しないよ」

「ふーん」

「・・・本当だよ」

ステラはニルスにぴったりくっついてる。

どういうつもりなのかは、あとで聞いてみよう。

 

 「あ・・・そうだ。ねえおじいちゃん、きのうニルスが石畳壊しちゃったでしょ?出る前に直していこうか?」

シロが立ち上がった。

そういやけっこうやってたわね・・・。


 「あ・・・すみません・・・」

「気にすることはない。それに・・・直さなくていい」

「でも・・・せっかく綺麗だったんだよ?」

「息子があれを目標にすると言っていた。目に見えていた方がいいじゃろ。それと・・・万が一ジナスが来るとも限らん。儂らがいない間、この屋敷で過ごしてもらうことにした」

家族のためにか。いい旦那で、いいお父さんじゃん。


 「ステラ様、勝手に決めてしまって申し訳ありません」

「庭師さんたちの自由に使ってもらって構わないわ」

「ありがとうございます。儂がいない間は妻が手入れをしてくれますので」

夫婦で庭師か。なんかいいな・・・。

 「あ・・・ていうか、聖女も騎士もいなくなっちゃうけど挑戦者来たらどうすんの?」

「ナツメに頼んだ。どうしても挑みたいならテーゼの訓練場に来いと言ってくれる」

「うわあ・・・せっかく来たのにかわいそうだね」

「仕方ないじゃろ・・・さあ、外へ行こう」

まあ「どうしても」って奴なら迷わず来るか・・・。



 「さあ、出発しましょう」

ステラは元気よく門の外を指さした。

これからテーゼへの旅が始まる。


 「村の人たちの前を通るけどいいの?朝からみんな動いてるんじゃない?お肉とか魚とか、凍らせて運び屋が持ってくでしょ」

「ケープで顔は隠していただく」

「え・・・それでいいならあなたの家族に会わせてほしいんだけど・・・」

「しきたりなのです・・・」

騎士の家もわけわかんないわね・・・。

 「ていうかテーゼではどうすんの?あたし一緒にお買い物とかしたいんだけど」

「むう・・・顔を隠せば・・・」

「それでいいなら、ここでもそうさせてよ・・・」

「しきたりなのです・・・」

おかしな決まり作ったのはやっぱり初代なのかな?まあ・・・危険な時期でもあったろうしね。


 「ねえステラ、転移を試したい。村の外、僕が伝えて本当にできるか」

シロがステラの手を引いた。

ああ、たしかに見たいかも・・・。

 「わかった。みんな私の体に触れて、ニルスは手を繋いでほしいな」

「え・・・ああ、わかったよ」

けっこう簡単なのかな・・・。



 「わ・・・へー、すご・・・」

ステラに触れると、一瞬で平原に出た。

女神様に火山まで飛ばされた時と一緒だ。


 「ありがとうステラ、女神様の言った通りだった。どこでも行ける?」

「私だけだと行ったことがある場所しか無理なの。例外だと、今みたいにシロや他の精霊から伝えてもらった場所には行ける。今回洗い場に送るのはその方法ね。だから、ジナスと繋がりのあるあなたがいなければいけない」

「大丈夫、絶対にやるって決めたんだ。・・・じゃあ馬車を出すよ」

突然目の前にあたしたちが現れたらジナスも驚くのかな?

あの余裕な顔が変わるのは見てみたい。



 「水晶なんだ・・・綺麗・・・」 

ステラは馬車を気に入ってくれた。

 あたしも気に入ってる。お金持ちだって手に入れることはできないだろうから優越感もあるのよね。


 「おじいちゃん、手綱は飾りだから必要ないよ。一緒に中にいようよ」

「いや、儂はここでいい。初めてスナフを出るから景色を見て風に当たりたいんじゃ。シロ殿たちはステラ様と語らっていておくれ」

おじいちゃんは御者台に腰を降ろした。

そっか、年長だし気を遣ったのかな。


 「オレも風に当たりたい。少し落ち着かないんだ・・・」

「えー、ニルスともお話したかったな・・・」

「・・・夜でもいい?」

「・・・わかった」

ステラは寂しそうに答えた。

冷たい言い方だったな・・・気を回す余裕もないのか?


 「ヴィクターさん、お話を聞きたいです」

「感心じゃな。儂もスコットとティララの話を聞きたい」

「はい、知っている限りはお伝えします」

・・・ん?

 「でもまず、先代はどんな人だったか知りたいです」

「・・・儂の母親じゃな。名はリンドウ・メイプル・・・恐ろしい女じゃったよ」

「・・・先代は女性だったんですね。ん・・・名前を教えていいんですか?」

「儂がヴィクターを受け継いだ時点で騎士から解放された。そうなったら本当の名で生きていいんじゃ」

おじいちゃんと話してる感じは普通だ。

 どういうことだろ・・・。あ、でもこれでステラとニルスの話ができるじゃん。ちょうどよかったんだ。



 「あれ・・・ミランダは私が作った石鹸を使ってくれてるの?」

中に入ると、ステラがあたしの体の匂いを嗅いできた。

・・・作った?


 「きのうは楽しくて気付かなかったわ。あ・・・あの屋敷の匂いと混ざってかな?」

たしかにあのお屋敷はいい香りだった・・・。

 「えっと・・・」

「この香りはたしか・・・色付く朝だったかな。ロレッタにある香りのオーロラってお店なら間違いないわ」

今使ってる石鹸はたしかにそうだ。


 『とある方・・・これ以上は教えられません。そういった条件で取り扱いをさせていただいております。そしてこの方は当店のお抱えとは違います。とても恐れ多いので・・・』

・・・誰が作ったかは言えない感じだったっけ。

 名前を出さないのは不思議に思ったけど・・・名前を売りたくても売れなかったってことか。


 「ステラだったんだ・・・この香り気に入ってるんだ。ニルスもおんなじの使ってるよ」

「ありがとう。ふふふ、お店には渡してない香りもあるのよ。持ってきたからミランダにあげる」

やった、楽しみだな。

 「あ・・・そしたら新しい香りはしばらく作れないってお手紙出さないと・・・」

ステラは窓から顔を出した。

 「ヴィクター、香りのオーロラになにも言ってないわ」

「ご心配なく。しばらく新作は無理だと便りを出しておきました。既存のものはナツメが作って送ってくれるようになっています」

「気が利くわね・・・」

ほんとにそうだな・・・。


 「それと、お肌に塗る美容水っていうのも作ってみたの。どこのよりもいいと思うから使ってほしいな」

ステラは座り直して小瓶を取り出した。

 「え・・・いいの?」

「ヴィクターの奥さんも使ってるわ。あ・・・これはまだ調合書を見せたことなかった・・・」

また窓が開かれた。


 「ヴィクター、美容水はどうしたらいい?」

「倉庫にたくさんありますよ。戦いが終わるまでは間に合うはずです」

聖女の調合か、使うの楽しみだな。そろそろ無くなりそうだからどっかの宿場で適当に買うつもりだったけど・・・絶対こっちの方がよさそう。

 「あれ・・・村の人たちに教えてないの?」

「はい・・・ひとり占めにしています」

「そうなんだ・・・広めてほしかったんだけど・・・」

「・・・お許しください」

誰にも教えたくないくらいいいものってことよね・・・。



 「ミランダ、シロからニルスのことを聞いたの」

馬車が走り出すと、ステラが真面目な顔で話し始めた。

考えてたことは一緒だったみたいだ。


 「朝にシロから聞いたよ。えっとね・・・アリシア様と色々あったみたいでさ」

「臆病者・・・そうは見えないけど、ずっと引きずっているのね・・・」

「うん、ニルスは臆病者なんかじゃない。でも・・・見捨てられるのが恐かったって言ってた。雷神の息子が戦場に出たくないなんて知られたら、アリシア様も困るだろうからって・・・」

「・・・話を聞く限りだけど、私はアリシアを許せないわ」

ステラはアリシア様のことはよく思ってないのか。

 「だから母親の力は借りずに何とかしてあげたい」

そしてあたしが考えてる解決法とは別なことをやろうとしてるみたい。

ステラも協力してくれるのは嬉しいけど、それならテーゼでは別に動くしかないか・・・。


 「ステラはどうしようと思ってるの?僕は、やっぱりお母さんの力が必要だと思うよ」

お、シロもそういう考えね。あたしが聞きづらいことをすぐに口に出してくれたのは助かる。


 「ニルスは・・・とっても魅力的よね」

ステラは頬を染めてはにかんだ。

え・・・まさか・・・出逢ったのはきのうよ?

 「ステラ・・・もしかして恋しちゃったの?」

「・・・うん」

ということは、ステラが考えてるやり方って・・・。

 「私なりの愛でニルスを解放してあげたい。アリシア以上に私を想ってくれるようになれば・・・」

「母親と恋人ってちょっと違うんじゃない?」

「大丈夫、母親から貰えなかった愛も全部私があげる。ステラがいればそれだけでいい・・・なんて言われてみたいな」

たしかにそれでニルスの不安が無くなるならいいとは思う。でも・・・ニルスの気持ちはどうなんだろう?


 『うん・・・綺麗な人だったから緊張したんだ・・・』

あ・・・無くはないか。

ていうか、おじいちゃんと一緒にいるのもそれが理由?ステラだけにあんな素っ気ない態度変だよね?

 『カッコつけて純情ぶってると損するよ』

教えてやったのに・・・。


 「で・・・そうしてもいい?」

ステラの顔が寄ってきた。

 「え・・・なんであたしに聞くの?」

「ミランダもニルスのことが好きなんじゃないかなって・・・とっても仲良しなんでしょ?」

ああ・・・ニルスに対する恋心があるのかって聞いてるのか。

それなら、これは伝えておかないといけない。


 「ニルスのことは好きだよ、シロもね。ただあたしは、男としては見てない・・・というか見れない」

「たしかに宿とかテントの中では下着か裸でうろうろしてるよね」

「ふふ、そうなんだ」

「こら」

あたしはシロの頭を撫でた。

恥ずかしいことを・・・。


 「誘っているわけではないの?」

「うん違う、仲間だから自然体でいた方が楽なんだ。それに、まったく恥ずかしくないしね。ニルスも慣れてきてる」

「仲間・・・」

「そう、大切な仲間なんだ。だから・・・例えばだけどニルスと結婚して男女で過ごすなんて、あたしの中ではありえない。シロもいて、一緒に旅をするのがいいんだ。男が欲しかったら外に作る」

もしニルスから女として好きだって言われたら・・・たぶん、たぶんだけど困っちゃうな。

 あたしにニルスの女はできない。ステラがそうしてくれるなら余計な心配が無くなる・・・そうなったらみんなで一緒に旅をすればいいよね。


 「とりあえずあたしはニルスを愛しているけど、男としてではないよ」

「わかったわ。でもニルスを縛ったりはしないから安心してね。私、ミランダに嫌われたくないもの」

「あの・・・僕もニルスのこと好きなんだけど・・・」

シロも混ざりたくなったのか想いを口にした。

言わなくてもわかってるよ。


 「ええ、みんなでもっと仲良くなりましょう」

「言っておくけど、僕はアリシアとも話すよ。それでもいいよね?」

「シロが思う通りにしてみていいのよ。だって、あなたの想いもニルスへの愛だから」

ふーん、ならあたしが勝手に動いてもステラは気にしないってことか。

 「じゃあ、ニルスがアリシアと仲直りするっていうのもありなんだ?」

「そうね、アリシアがちゃんとニルスにごめんなさいするのなら許すわ。まあ私たちのことに口は出させないけど」

そっちの方がみんな幸せよね。全部良くなる方向へ行けるようにあたしは頑張ろう。


 「それで・・・まだ気になることがあるの。ミランダってとっても女性らしいと思うのよね」

ステラの視線にあたしの体が撫でられた。

え・・・なんの話だ?

 「そんな女の子が近くにいるのに、ニルスは気にならなかったのかなって。一緒のベッドで寝たり、うなされた夜は抱きしめてもらったり、若い男女でなにも無かったのが不思議なの」

なるほど、ステラの疑問は「女に興味が無いかも」ってことね。


 「最初は警戒してたんだけどね。でもニルスはなにもしてこないよ」

「どうして?」

あたしも考えたことはある。

 単純にあたしが好みの女じゃないのか。それとも考えることは一緒で、あたしみたいに男女とか抜きで付き合っていきたいのか。もしくはものすごく奥手か・・・。

まあ全部かもしれないけど、答えに一番近そうなのは・・・。


 「ニルスってさ・・・ずっと旅人になりたかったけど、アリシア様とルージュのこともあって一度は全部諦めたでしょ?」

「そうらしいわね」

「だけど諦めきれない自分は、ちゃんとそのまましまってたんだよ。それでいざ旅人になれた時に、やっとその時の自分を出せるようになった」

「なるほど・・・つまり、まだ恋なんかを考えない子どもってことね?」

正解、まああたしの考えだけどね。

 カッコつけて大人ぶる時もあるけど本質はけっこう幼い。きっとこれから大きくなった体に合わせて、心も成長していくんだと思う。


 「でもね、生意気にあたしの胸とかお尻は見てくんのよ」

「ふふ、男になろうとしている途中なのね」

「たぶんね。・・・あたしが指摘すると、あいつ正直に言うんだ。女の子の体がどうなってるのかは気になるって」

「正直に言うってことは、ミランダは信用されてるってことね。だからこそ・・・危なかったかもよ?」

ステラはいじわるな顔で笑った。

 言う通りなのよね。そういうことに興味持ち出してるってことは、そろそろ襲われるか?なんて思ってたけど、そこでステラが現れてくれて助かったって感じかな。



 「なんか聞いてて思ったんだけど、ステラがニルスにしたいことって女神様が僕たち精霊にしてくれることと同じだね」

シロがニコニコしながら言った。

ちょっと静かだったけど、なにかを考えていたからみたいだ。


 「そうね、まあ近いのかな」

「やっぱりそうなんだ。幸せだよね」

二人で盛り上がらないでほしい。

 「よくわかんない、あんたは女神様になにしてもらってたのよ?」

「女神様はね、寂しいとか会いたいって呼びかけるとすぐに来てくれるんだ」

会うだけ?それだとステラがしたいことっていうのとうまく繋がらない。

・・・もっと詳しく聞かないと。


 「来てなんかしてくれるの?」

「えっとね、まじわるの。気持ちいいんだ・・・」

シロはふわふわした笑顔で答えてくれた。

まじわる・・・気持ちいい?


 『はい・・・教えていませんでしたが、あなただけは他の精霊とまじわる時にできます・・・』

そういや女神様も言ってたような・・・。


 「ぐ、具体的になにするのよ?」

「え・・・うーん、人間で言うと・・・繋がる?重なる・・・とかが近いかな。愛を与え合うんだよ」

「あんた・・・かわいい顔してオトナだったんだね・・・」

「チルに精霊封印を貰う時にもしたよ。できる限りの愛を渡したし・・・あとメピルともしてた」

「そうなんだ・・・」

これってそういう話だよね?

チルもメピルも・・・あ・・・たしかに体は男の子だ・・・。


 「でも一番は女神様かな。みんなもそうだと思う」

え・・・王様のシロとだけじゃないのか・・・。

 「・・・女神様って、シロ以外ともまじわるの?」

「うん、呼びかけがあればみんなの所に行ってたよ」

みんな・・・それってつまり・・・。

 「チルとかオーゼも?」

「うん」

・・・女神様はもっと清い感じだと思ってたけど、男も女も子どもも関係なくなのか。

 あれ・・・でもシロもチルもかなり長生きなのよね?じゃあ別にいいのか・・・。


 「ふふふ、女神はみんな大好きなのよ」

「でも・・・僕たちの所には呼ばないと来てくれないんだ。・・・ジナスの所には自分から行ってた」

シロの声が暗くなった。

嫉妬してたのか・・・。


 「仕方ないんだけどね。・・・ジナスは一番最初に作られた精霊だからお気に入りだったんだよ」

「でも女神様はジナスを討てって感じで言ってたじゃん」

「女神は遊び好きでもあるの。三百年以上も同じところに封じられて、怒っていないはずがない」

「そうだね、これも仕方ないんだよ。さすがにもう許さないと思う」

・・・女神様ってけっこう奔放なんだな。

 あたしはあの状態の女神様しか知らない、普通の時はもっと違うのか・・・。


 「ねえシロ、バニラとはまじわらないの?」

あたしはシロの男の子の部分を指さした。

そろそろ重い話は終わりにしよう。


 「な、なに言ってんの!精霊は命とまじわっちゃいけないって決まりがあるんだよ!」

「なになに、バニラって誰?」

ステラが食い付いた。

こういう話も好きなのね。


 「たぶん、シロが女神様より好きな子」

「な、なんてこと言うんだよ!女神様はそういうんじゃないの!」

「へー、じゃあバニラって子はそういうのなんだ?」

「まだ・・・わかんない・・・」

結局、まじわるってあたしの想像してるので合ってるのかな?

まあ、楽しくなってきたからどっちでもいいや。



 「・・・そしたらニルス真っ赤な顔しちゃってさ。ミランダ・・・早く行こって、うるうるな目でさ」

「あはは、さすがに大勢に見られるのはねー」

ステラの笑顔はかわいい、だからもっと見たくなって色んなことを話した。

ニルスには悪いけど、恥ずかしい話とかも。


 「ああ、こんなに楽しいの初めてかも・・・。迎えに来てくれたのがあなたたちでよかったわ」

ステラは本当に楽しそうな笑顔だ。

きのう話すまでは緊張しちゃってたけど、こういう感じならもっと仲良くなれそう。


 「それでね・・・お願いがあるんだ・・・」

「なに?」

「戦いが終わったら・・・一緒に旅に出たいなって思ったの」

ステラは自分の胸を押さえた。

なんだ・・・。

 「うん、そうしようよ。だって、あたしたちはもう仲間だもんね」

「ミランダ・・・ありがとう、とっても嬉しい。あ・・・ニルスはいいって言ってくれるかな?」

「あたしがいいって言ったからいいの。あ、でもおじいちゃんはどうしよう?」

「戦いが終わったら、もう騎士は解放してあげてもいいと思ってるの。・・・家族もいるでしょ?」

たしかにそうだ。あたしたちみたいに自由にできるかはわからない。


 「僕もステラと旅がしたいな」

「ありがとうシロ」

次の旅は四人か、ヴィクターも来るって言えば五人・・・二人がいるならもっと楽しくなるはずだ。


 ・・・で、外の二人は何を話してるのかな?

次は無理矢理こっちに来てもらおう。ニルスはステラの隣に座らせてあげないとね。

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