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Our Story  作者: NeRix
水の章 第二部
79/481

第七十五話 予感【ステラ】

 なにかが起ころうとしている・・・そんな予感がしていた。

もう十日くらい前、窓から吹き込んできた風を浴びてからだ。


 『必ず・・・一緒に・・・』

なぜか思いも感じた。

待たされ過ぎて変になっちゃったのかな?


 『もし異変があれば人間に力を授けなさい。そして、すべてを知る者があなたを求めてここに来るのを待つのです』

たしかに異変はあったのよね。

 女神がどこかに行ってしまって、戦場とかいうのが始まっちゃった。

だから私はその時を待っている。

 けど、もう三百年以上・・・待ち人は来ない。

騎士に認められたとしても、世界のことを知っている人は今までいなかった。


 なんとなくあるこの予感も、ただの思い違いなのかな?



 憂鬱な気分を変えたくて、とりあえず研究室に入った。

  

 毎日、毎日・・・私は何をしているんだろう。

朝が来て、お昼を過ぎて、夜になって・・・ただ時間が流れていく。また今日もきのうと同じだよね・・・。


 『魔法を伝えたのはお前だな?』

刺激的なことは、ずっと前に一度だけ・・・。

 『なにかいけなかったかしら?あなたが境界を作ったおかげで、結構強い力を使える人間も増えてしまったわね』

『・・・人間がどれほどの魔法を使えようと、私に痛手を与えることはできないぞ』

私の存在を知って、けっこう怒ってたみたいだった。


 『よくわからないわ。私は女神に魔法を伝えろと言われただけ。・・・今はどこにいるの?』

『教えると思うか?』

『思っていない。とりあえずあなたの始めた戦場の邪魔はしないわ。だから放っておいてちょうだい』

『・・・』

女神の結界があるから強気でいけた。


 『まあいい・・・精霊のほとんどを消した。残したシロたちの戦意も奪っている。女神がなぜお前を作ったのかは知らないが、なにかやれるものならやってみればいい』

『邪魔はしないって言ったでしょ?戦場とかいうのに集中すればいいと思うわ』

ほとんどを消した・・・あれは結構衝撃だったな。

でも、シロは残したらしい。なら他に現存している精霊も当たりが付く。

 オーゼ、チル、イナズマ・・・古い精霊たちは必ず残っている。だから精霊鉱もあるはずだ。

 あ・・・それとなにもできないけどリラくらいか。あれは残したというか、手を出す必要が無かったって感じかな。

 というか・・・その力も貰ったけど、会えないことにはどうしようもないのよね。私の所には来ないみたいだし・・・女神は何を考えているのかしら。


 『ずいぶん強気だが、私を怒らせるなよ?この場所以外の命を焼き尽くすことはできるぞ』

『あら・・・どちらかと言うと増えてほしいんじゃないの?誰から強い人間ができるかわからないものね』

『お前もそうじゃないのか?不死なら鍛えて戦場に出ろよ。魔法は封じているが、その身で戦うなら歓迎だ。・・・そこで倒れている騎士もな』

『・・・誘ってくれたことだけは覚えておくわ』

どう考えても罠だよね・・・。


 『言っておくが、目障りだと感じたらどこかの街は潰すかもしれない。戦場なら構わんが、敵意を持って私の前に立つなら・・・』

『ずいぶん心配性なのね。あなた以上の力は授かっていないわ』

『お前・・・転移が使えるんじゃないか?そしてこの場所・・・私をどうにかしようと考えていそうだ』

ああそうだ・・・見破られてるのよね。


 『ふふ、使えたとしても洗い場に移動はできない。安心しなさい』

『私の邪魔はするなよ・・・』

そこで話は終わった。

それきりだったし、私に一切興味は無いみたいだ。


 「まあ、待ってるしかないよね・・・」

気持ちを切り替えて、また新しい香りでも作ろうかな。今度は女の子を誘う香りとか・・・。

 『ステラ様、旅の行商に渡した石鹸を取り扱いたいとお手紙が届いています』

『え・・・そんなことになってるの?』

『そのつもりがあるならば、儂が話を聞きましょう。返事はどうされますか?』

『・・・退屈だからやりたい』

わざわざ北部からお手紙をくれて、スナフまで買い付けに来てくれたっけ・・・。

 けっこう人気になってるのかな?ロレッタ・・・どんな場所なんだろう。行ってみたいな・・・。


 なんにも変わらない毎日に嫌気がさしていた。

女神の言いつけ通り、人間に魔法の力を授けたけどなにか変わる様子はない。

 ヴィクターも大変よね。最初の騎士は直接女神から言われたけど、それ以降はただ意志を受け継いでいるだけ・・・。

ジナスと戦う日なんか本当に来るのかしら?


 だいたい王にしか顔は知られてない。

ジナスも私をどうにかする気は無いみたいだし、危なかったらすぐここに戻れる。だから、ちょっとくらい出かけても大丈夫だと思うんだけど・・・。


 あーあ、外に出たいなあ・・・誰か連れ出してくれないかな。

そしたら・・・男の人がいいな、恋に落ちるような連れ去り方を・・・。

 「あなたを攫いに来た」とか言われたら「私をここから連れ出して・・・」なんて言っちゃったりして・・・。

こんなのに憧れるくらい退屈だ。


 いつも考えるだけ・・・それを重ねてきた。

もうとても高く積み上がったけど、なんの意味もない願い。

あと何百年続くのかな・・・。



 「かかってこい!!!」

外から大きな声が聞こえた。

広場でヴィクターが戦っているみたいね。


 挑戦者なんて久しぶりだ。

もう二十年以上前だったかな?たしか『けっこう強かった』って言ってたわね。

 腕試しが目的で、世界のことを知っている人ではなかった。

ヴィクターに負けて帰っちゃったんだっけ・・・。まあ、会ってもそれだけだったけど・・・。


 あ、そういえばもう一人いた。

小さな女の子を連れた人・・・。あの子・・・全身に痛々しい痣があったわね・・・。

 治してあげたけど、今何してるんだろう・・・。

ヴィクターは『いい使い手』って言ってたけど、彼も待っていた人では無かった。


 「ニルス、もっと勢いよくぶつかりなさいよ!」

今度は女の子の声がした。

戦ってるのは「ニルス」って人みたいだ。

 「よし!押し返せ!!」 

必死に応援してるみたいだけど、恋人とかなのかな?・・・いいなあ。

ちょっと見てみよ・・・。



 窓からそーっと庭園を見下ろしてみた。

二階だし、たぶん気付かれないよね。


 「あれ・・・あの子・・・」

まず見えたのは、後ろで戦いを見守っている小さな男の子だった。

・・・知ってる。

 「・・・シロ?」

会ったことはない、だからこれは女神が私にくれた記憶だ。


 シロは・・・精霊の王・・・。

思った瞬間に鼓動が高鳴り出した。


 「・・・その日が来た?予感は・・・本当だったの・・・」

えー・・・どうしよう・・・来ちゃったけど・・・。

 そうだ・・・戦ってるニルスってどんな人?

音を立てないように窓を開けた。

ちょっと顔を出せば見えそうだ。


 「へえ・・・いいかも」

目に入った瞬間、心が揺れた。


 私と同じ髪色・・・けっこう珍しい。

かなり若い・・・かわいい。

真剣な眼差し・・・見つめられたい。

ヴィクターの攻撃を弾き返すくらい鍛えられた体・・・抱き寄せられたい。


 私を連れ出すのはあの人かもってことね。

・・・勝ってほしいな。



 「背中を取られたか・・・儂の負けじゃな」

長い攻防が終わり、ヴィクターが負けた。

・・・勝っちゃった。


 「やったー、これでステラに会えるんだね」

「あたしたちの応援が効いたわね」

あ!ぼーっとしてる暇なんて無い、会わないといけないのよね・・・。



 急いで部屋に戻って鏡の前に座った。

会いに来た人と話すのは何十年ぶりかな?

 ・・・髪の毛はほどこう。それに調香用の味気ない恰好・・・早く着替えないと。

 

 「ニルスか・・・」

髪の毛はすぐに整った。

早く会いたいけど、しっかり準備しとかないと・・・。



 「ステラ様、入りますよ」

ヴィクターが扉を叩いた。

ああ来ちゃった。顔を作って・・・。


 「入りなさい」

「失礼します」

「・・・あら?」

部屋に入ってきたのはヴィクターだけだった。

 「さっきの三人は?」

「ご覧になっていましたか。別室で待たせています」

く・・・急いで準備しなくてよかったのか。


 「たぶん・・・いえ、待っていた者たちね?」

「話も聞こえていたのですか?」

「いいえ、一緒にいた白い髪の男の子は精霊の王。女神がくれた記憶にあったの」

「なるほど・・・。はい、待っていた者たちです。女神様と会ってきたと言っていました」

ヴィクターの目が潤んでいる。

私よりも待ちわびていたって感じだ。

 「会ってきた・・・。女神はどこにいるの?」

「まだ聞いていません。ですが、なにもできない状態ではあるのでしょう」

そうだよね、動けるなら私は解放されてるだろうし。


 「そうだ・・・強かったの?」

この人ももうおじいちゃん、でも歴代の騎士で一番強いと思う。

まあ負けたのは歳のせいもあるわね。

 「ええ、とても・・・素晴らしい青年です」

「嬉しそうね」

「儂の代で来てくれて感謝していますよ。ただ、あと五年早めてほしかったです・・・」

十二代目の騎士は高揚しているみたいだ。

たしかに今までの人たちも代替わりの時は残念がっていたっけ・・・。


 「さあ行きましょう。絶世の美女を連れてくると伝えています」

「・・・そうなんだ」

あんまりそういうことしないでほしいわね・・・。



 「こちらです」

「失礼いたします」

私だけでは広すぎる屋敷・・・。

 「・・・」「・・・」「・・・」

いくつもある空き部屋の一つで三人は待っていた。

 「初めまして、ステラです」

「・・・」「・・・」「・・・」

三人とも立ち上がってくれたけど誰も口を開かない。

なんか気まずいわね・・・。


 「まず、あなたたちのお名前を教えていただけますか?」

まあいい、よく考えたらシロ以外は年下だし緊張することもないか。

 「あの・・・あたしはミランダ・スプリングといいます・・・」

赤毛の女の子が背筋を伸ばした。

 ミランダ・・・明るそうな子だ。ちょっと違いはあるけど、同じ女だしいい話し相手になりそう。体形は・・・私よりも女らしい・・・。

 「あの・・・なにか?」

「いえ・・・ごめんなさい。若い女性と会うのは久しぶりでしたので」

冷静に、冷静に・・・。


 「僕は・・・」

「あなたのことは知っていますよ。シロ・・・精霊の王ですね?」

「え・・・会ったことないよ」

「女神から記憶を貰っています」

精霊の王だけあって、ジナスを除けば一番強い力を持っている。

ただ、見た目と同じで子どもっぽいところもあるみたいだ。

 「なら話は早い、ここに来たのは・・・」

「こら、ニルスがまだでしょ?」

シロがミランダに止められた。

 「あ・・・ごめんなさい」

王様なのに人間の女の子に叱られてしゅんとしてる。・・・かわいいわね。

 

 「あの・・・ニルス・クラインといいます。あなたに・・・協力をお願いしにきました」

ニルスの声で、また鼓動が高鳴った。

風・・・あなた?

 「協力・・・何を望みますか?」

「あ・・・あの・・・えっと・・・」

「・・・緊張しているのですか?」

「えっと・・・」

ニルスの頬が赤くなっている。

さっきの戦いで見た青年は、いつの間にか幼ささえ見える顔になっていた。


 「いや・・・よくわかりません・・・」

俯いちゃった・・・。なにかしたかな?

 「ちょっとニルスどうしたのよ?」

「水をもらいたい・・・」

「すまなかった。客人に何も出していなかったな」

「いえ・・・ありがとうございます」

ヴィクターがグラスに水を注ぐと、ニルスはすぐに飲み干した。

動く喉仏が色っぽいな・・・。


 「はあ・・・失礼しました」

「構いませんよ、では本題に入りましょう。協力とはジナスのことですね?」

「はい、女神からあなたを頼れと。共に来ていただきたい」

いよいよか・・・外に出られる。

戦いに行くわけだけど、私の心は踊っていた。

 「女神とはどこで会ったのですか?」

「戦場の・・・ずっと下に封印されていたようです」

「なるほど・・・ありがとうございます」

でも、そう見られないように・・・。


 「とても長い年月でした。私が待っていたのはあなたたちだったようですね」

私はニルスだけを見た。

女神のことよりもあなたが気になるのはどうしてだろう・・・。


 「・・・協力していただけるのですね?」

「ええ、共に行きましょう。ヴィクター、支度はどのくらいでできますか?」

「明日の朝には出発できます」

早いな・・・まあいいか。

 「ではニルス殿たちのお部屋をご用意します。今夜はそちらでくつろぐといい」

「え、ちょっと待っておじいちゃん。僕たち詳しいことなんにも話してないよ」

シロがあたふたしはじめた。

 詳しいことって言われてもな・・・。

精霊を集めればジナスが来るだろうから、そこで弱らせてここに転移で運ぶ・・・そういう作戦だよね?

 ニルスの剣、不思議な感じがするから精霊鉱みたいだし、もう準備はできているんじゃないのかな?


 「あなたたちに付いていくことは決まっています。共に戦えばいいのでしょう?」

「そ、そうだけど・・・。まずテーゼに行くんだ、戦士になって戦場に出る」

「戦場に・・・わかりました。どのような計画を立てているのかは、支度の後に聞きましょう。では、一旦失礼しますね」

なんだっていい・・・。

 「うん、待ってる。僕、もっとお喋りしたい」

シロが微笑んでくれた。

・・・早く終わらせなきゃ、私だってお喋りしたいよ。



 部屋に戻って衣装棚を開けた。

全部は無理だから・・・。


 「どうしよう。服は何を持っていこうかな・・・」

まさか迎えに来るのがあんなに若い子たちだとは思わなかった。

 でも嬉しい、やっと外に出られる。

戦場に出るってことは、明日すぐに戦うとかじゃないんだよね。


 「・・・ニルス・クラインといいます」

・・・真似しちゃった。

 早くあなたと仲良くなりたい、一目見て気になるなんて人間と会わなさ過ぎたからかな?

 ・・・というか、一緒にテーゼへ行くのよね?明日からもたくさんお喋りできるなんて・・・。

それなら・・・できれば普段の感じで接していきたいな。


 あ・・・勝手に盛り上がっちゃったけど、ミランダって子との関係はどうなんだろ?もし恋人とかだったら・・・。

 ・・・少しずつ探るか。距離を詰めようとすれば気配があるはず。その感じで見極めればいい。



 「さて・・・こんなもんかしらね」

支度が整った。

 着替え、調合書、香りの材料・・・なるべく少なくしたけど、それでも大きな鞄二つ。まあ、ヴィクターなら運んでくれるかな。

ふふ、戦いじゃなくて旅行気分だ。


 「もう・・・いいよね」

私は急いで三人の部屋へ向かった。

とりあえずしばらく一緒に行動を共にするわけだから、三人と仲良くなっておかないとね。

 戦場に出るんなら出るで別に構わない。知りたいのはどんな人たちなのかってことだ。



 「シロ、このお菓子は甘くておいしい。食べてみるといいよ」

「・・・わあ本当だ。あ、ミランダ二つも取った」

「どうぞって出されたんだから残すと失礼よ」

扉の向こうから楽しそうな声が聞こえてきた。

やっぱり仲良しなんだ・・・いいなあ。

 

 「なんか緊張してるニルスって新鮮だったわね。アリシア様に似てるかどうか考えてたんじゃないのー」

アリシア・・・誰かしら?

 「別に・・・」

「本当に絶世の美女だったね」

「うん・・・綺麗な人だったから緊張したんだ・・・」

綺麗な人・・・ふふ、嬉しいな。それに男の子って感じでいい。

・・・よし、入っちゃえ。


 「お待たせしました」

「あ、ステラだ。待ってたよ」

「ごめんなさい、支度に時間がかかりました」

「気にしないで。あ・・・はい、どうぞ」

シロは私のために椅子を持ってきてくれた。

・・・なんていい子なのかしら。

 

 「あまり緊張なさらないでくださいね。私も仲良くなりたいのです」

「え、じゃあ聖女様とかじゃなくてステラって呼んでいいの?」

ミランダがかわいく笑った。

 「ぜひそうしてほしいわ。私もミランダと呼びたい」

「いいよ。その方が気が楽かな」

一気に距離を詰められる子なのね。

・・・少しだけミランダを見習おうかな。


 「あなたのこともニルスと呼んでいいですか?」

私はニルスを見つめた。

 「あ・・・はい、二人と同じように呼んでください」

ニルスは私を見て不器用な微笑みを浮かべた。

気になるけど、さっきほどの緊張は無いみたいだ。

 「ヴィクターは強かったですか?」

「はい、とても強かったです。老人とは思えない動きでした」

「ふふ、歴代で一番強いのですよ」

「そうなんですか・・・勝ててよかった」

うーん・・・自分もそうだけど、丁寧な話し方に距離を感じる。


 「まあ負けても別な作戦があったんだけどね」

「別な?」

「うん、けっこう危ない作戦なんだ。ふふふ・・・ニルス教えてあげなよ。あんたが考えたんだから」

ミランダはもう普通に話してくれる。

ニルスも普段の感じになってほしいな。

 「聞きたいです。ニルス、教えてください」

「・・・真夜中に忍び込んで、強引に連れ出そうと思いました」

「聖女誘拐大作戦ってね」

嘘・・・。

 「えー、そっちの方がよかったな・・・あ・・・」

「・・・」「・・・」「・・・」

三人が私を見た。

・・・気を抜いちゃったわね。


 「ステラ・・・なんかかわいいね。変に堅い話し方より、今みたいな方がいいんじゃない?」

ミランダが私の二の腕をつついてきた。

 「え・・・そう・・・かな?」

「そうだよ。ニルスもそういう女の子の方が好きだと思うし」

「あはは・・・そうなんだ・・・」

あれ・・・恋人って気配じゃない?


 「・・・ミランダ、ステラが困ってる。オレたちよりずっと年上だし、あんまり付き合わせるのは悪いよ」

ニルスはちょっと困った顔をしていた。

そっか、そういうこと考えてのね。

 「ううん。私はもっとあなたたちと仲良くなりたいの。ニルスも普通に話してよ」

私は立ち上がってニルスに近付いた。


 「その方がいいと思う。だって二人とも僕に丁寧な言葉遣いしないよね?」

シロも私の味方みたいだ。

 「いや、シロは・・・」

「ニルスは私と仲良くなりたくないの?」

「ん・・・わかったよ・・・ステラ」

私に見つめられたニルスはさっきと同じように頬を染めた。


 「よろしくねニルス。・・・はい、握手」

「・・・うん」

繋いだ手はとても暖かくて、それだけで心が満たされた気がした。


 とても素敵な予感がする。

勝手に作られて、役目のためにずっと待たされて退屈してたけど、こんな気持ちになれただけで女神に感謝しなきゃね。

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