第百六十八話 神鳥の果実【ルージュ】
イナズマさん、チル、オーゼさん・・・三人ともニルス様のことはわからなかった。
精霊さんたちが知らないのに、これから会う神鳥やおじいちゃんがわかるとは思えない。
誰も知らなかったらどうしたらいいんだろう・・・。
◆
夜風が焚き火の炎を揺らしている。
野宿は初めてだけど、一人じゃないからたぶん大丈夫だ。
「こうやって・・・上目遣いでお願いすると大体言うこと聞いてくれるわ」
オーゼさんが、目を潤ませてわたしを見つめてきた。
かなり色っぽい・・・。
「それは・・・本当ですか?」
「嘘付く必要が無いわ。男はそんなに恐くないのよ」
こんなのアカデミーでは教わってないよ・・・。
神鳥の森まで二日はかかるみたいで、着くのは明日だ。
その間、オーゼさんはずっとわたしに男の人のことを教えてくれている。
大胆な姿は精霊だからってことで慣れてはきたけど、お話の内容は恥ずかしいものが多い。
「ほら、ルージュもやってみて」
「え・・・あの・・・そうだ、どうして移動に人形を使わないんですか?」
歩いて行こうって言いだしたのはオーゼさんだった。
まあ・・・これは話をずらすためだけど・・・。
「ルージュは少し気晴らしが必要だと思うの、張り詰めてるみたいだし」
「でもニルス様はすぐにでも・・・」
「構わない、風を浴びてなにも考えずに歩いた方がいい」
ニルス様はずっとオーゼさんの胸に挟まれている。
最初は抜け出そうとしてたけど、そのたびに戻されて諦めたみたいだ。
張り詰めてるか・・・そうなのかもしれない。
たしかに胸の辺りが少し苦しかった。
ニルス様もオーゼさんもわたしを気遣って・・・。
「どうだルージュ、焚き火を見てると落ち着くだろ?野宿で一番安らぐ時間だ」
「はい・・・なんだか眠くなってきました」
少しずつ心が緩んでいく・・・。
赤い炎が「大丈夫だよ」って言ってくれてるみたいだ。
「全部なんとかするから思い詰めなくていい。無理にとは言わないけど、ルージュには笑っていてほしいな」
「ニルス様・・・」
「そうよルージュ、それじゃ男の子も寄ってこないわ」
「オーゼさん・・・」
すぐには無理かもしれないけど、もっと楽に考えられるようにしていった方がいいのかもしれないな。
◆
「あ、森が見えましたよ」
朝から歩き出して、お昼よりずっと前に神鳥の森に着いた。
とても大きな森だ。最後に人間が足を踏み入れたのはいつなのか・・・あ、ニルス様たちかな・・・。
なんだかわたしなんかが入っていいのかなって気持ちになってくる。
女神様が安らぎに来るような場所だって聞いたし、用事が済んだらすぐに出て行った方がよさそうだ。
「川の方から来ると、シルのいる大樹まで近いんだ」
「ルージュ、疲れたら抱っこしてあげるからすぐに言うのよ?」
「大丈夫ですよ。これくらいなら疲れません」
「残念・・・」
オーゼさんの「残念」はどういう意味なんだろう?
テントの中でもべったりくっついてきてたし、ちょっと怖い・・・。
◆
森はかなり大きいけど、カクと一緒に走り回っていたおかげで全然平気だった。
「大樹はこっちです」「精霊さん、ごきげんよう」「なにかお手伝いしましょうか?」
オーゼさんがいるおかげで妖精たちもたくさん集まってくる。
迷うこともなさそう。
◆
「わあ、こんなに太くて大きいの初めて見ました・・・」
神鳥の住む大樹の根元にたどり着いた。
真下から見上げると、気が遠くなりそうなほど高い・・・。
「ニルス、なんかいやらしく聞こえない?」
「何言ってんだよ・・・」
なんの話だろ・・・二人にしかわからないことなのかな?
「じゃあ、あなたたちはもう大丈夫よ。芽吹いている命に水を与えなさい」
「はい」「必要なら声をかけてください」「水を清めていただいてありがとうございます」
妖精たちはそれぞれの方向に飛び去って行った。
オーゼさんって優しいし、頼まれたら人間でもお手伝いしてあげたいって思うだろうな。
「シルはどこにいるの?」
「上の方だ。登るんだよ」
ニルス様がずっと上に目を向けた。
え・・・この木を・・・。
「私が運んでもいいけど・・・」
「いや、大丈夫だ。ルージュ、鍛錬だ」
「はい!頑張ります!」
木登りなんてしたことないんだけどな・・・。
◆
「はあ・・・はあ・・・」
ひたすら上だけを見て登った。
まだまだ先は長そうだ。
「大丈夫?」
オーゼさんはふよふよ浮いてて楽そう・・・。
「ルージュに合わせる。時間は気にするな」
ニルス様も柔らかい所にいていいな・・・。
でも、枝がたくさんあるから登りやすい。
あれ・・・下りる時はどうしよう?もう他の木はかなり下・・・。
落ちたら・・・死んじゃうよね・・・。
◆
てっぺんまでもうひと頑張りの所まで来た。
慣れてきたからか、周りの景色に意識を向けられるようになってきてる。
「あ・・・ニルス様、ここに斬られたみたいな跡がありますよ」
手元には、上の方から一直線に刃を入れたような跡が残っていた。
鳥の爪・・・いや違う、間違いなく刃物だ。
「それは・・・オレが付けたものだ」
「え・・・なんで木をこんなにしちゃったんですか?かわいそうですよ」
「シルと一緒に鳥の魔物と戦ったんだ・・・話しただろ?足場の枝を折られて落ちたんだよ。その時に剣を刺して落下を防いだ」
「・・・ここで?」
こんな高い場所で・・・足場は枝しかないよ?
それに落ちたら死んじゃうのに・・・すごいな。
「あの時はさすがに心臓が止まるかと思ったよ・・・」
「でも・・・大丈夫だったんですよね・・・」
「今ここにいるからな」
わたしは足場が無くなったら、気を失って終わりかもしれない。
ニルス様は笑いながら話してるけど、それくらい実力が違うんだ・・・。
待てよ・・・その時のニルス様って十六歳だよね?
今のわたしと三つしか違わないのに・・・どんな鍛え方してきたんだろ・・・。
◆
「そこがシルの巣穴だ」
「・・・何もいません。でも・・・卵が五つあります」
せっかく登ってきたのに神鳥はいなかった。
お出かけしてるのかな?
「この森はテーゼみたいに、東西南北・・・そして中央の五つに分けられている。その卵が次の長になるんだ」
「へえ、シルが預かってるんだ。責任重大ね」
「森の掟らしい。何百年もそうやってきたんだってさ」
わたしは生まれてまだ十三年しか経ってない。
それよりもずっと前から・・・。
遠い昔話を聞いてるみたいな気分だ。
「そのうち戻ると思う。ルージュ、ここからの景色をよく見ておくといい」
「はい・・・わあ・・・」
わたしは、初めててっぺんからの景色を見た。
「はあ・・・あんな遠くまで・・・」
「こういう景色が見れるのも旅のいい所だな」
「はい・・・」
寒くないのに身震いする。それくらい雄大な風景が視界いっぱいに広がっていた。
森の外には平原が見える。
・・・あんな何も無い所に自分の家を建てて暮らしてみたい。風と日差しを浴びながらお洗濯をして、外にテーブルと椅子を置いて・・・ずっと穏やかな気持ちでいられそうだ。
まだ街道も無い大自然の中で走り回ったら楽しいだろうな。
あ・・・夜になったら空いっぱいの星を飽きるまで見てから眠るのがいい・・・。
「あらルージュ、泣いてるの?」
オーゼさんの指がわたしのほっぺに触れた。
いつの間に・・・。
「いえ・・・すみません。なんでだろ・・・」
恥ずかしいな・・・でもなんでか涙が止まらない。
「涙で色付けて見たものはずっと残るんだ」
横からニルス様の優しい声がした。
「・・・涙で?」
「そう、そのままでよく見ておくといい」
「・・・旅って素敵ですね。心が洗われます」
「今起こっている問題は全部大丈夫だ。仲間もたくさんいるし、前向きに考えることだな」
少しずつ、少しずつ・・・ニルス様が張り詰めていたものを緩ませてくれた。
わたしは・・・。
『お前は焦らなくていいんだ。ニルスの言うことをよく聞き、仲良くなってほしい』
お母さん、わたしは力み過ぎてたのかな・・・。
◆
「あれ・・・女神様?」
突然背中から翼の音と声が聞こえた。
ゆっくり振り返ると、手の平に収まるくらいの小さな塊が不思議そうにこっちを見ている。
「シル、久しぶりだな」
「あ、ニルスだ!どうしたの?ずいぶん小さくなったね。コトノハみたいだよ」
「コトノハ・・・妖精か」
「うん、よく遊びに来る」
鳥・・・小さなフクロウが喋ってる・・・。
これがシル?
「そっちは誰?シロとミランダじゃないね」
「紹介するよ。こっちがオーゼ、精霊だ。で、そっちがルージュ、オレの・・・弟子だな」
「オーゼよ。初めて会ったわね」
「あ、あの・・・わたしルージュ、よろしくね」
神鳥の姿は「楽しみにしてて」って教えてもらえなかった。
まさかこんなにかわいいなんて・・・。
「ルージュは・・・女神様みたいだね」
「え・・・そ、そんなことないよ・・・」
「ねえ、嘴撫でて」
「うん・・・」
わたしはシルの嘴をそっと撫でた。
・・・気持ちよさそうだ。
◆
「なにか知ってればと思って来たんだ」
ニルス様がシルに身体のことを話した。
「ふーん・・・本当の姿に戻るには、それをした精霊に頼めばいいんじゃないかな」
シルはニルス様と並んで喋っている。
同じくらいの大きさ・・・かわいすぎる・・・。
「・・・そいつはもういないんだ。魔物を作っていた悪い奴だったからオレが消してしまった」
「そうなんだ・・・女神様は?」
「境界で手いっぱいだろ?」
「そうか・・・うーん・・・」
シルが唸り始めた。
やっぱり神鳥でもどうしたらいいかわからないのか・・・。
あとはおじいちゃんだけだ。
色んな昔話を知っていたけど、こういうのはどうなんだろう?
◆
「・・・ちょっと待ってて」
シルはしばらく唸ったあとに巣穴へ入っていった。
・・・中でゴソゴソしてる。
◆
「これをニルスにあげる」
「・・・これは?」
シルが引っ張り出してきたのは、大きい葉っぱの包みだった。
自分でやったのか、細い蔓で縛られている。
「誰か開いてあげて」
「わたしがやります」
「うん、おねがい」
「よいしょ・・・なにこれ?」
葉っぱを開けると、中にはわたしの指先くらいの小さな実が六つ入っていた。
シルのおやつかな?
「これは神鳥の果実、五十年に一つ実るんだ。ニルス、食べてみて」
「五十年って・・・食べて大丈夫か?」
「自分を取り戻す力があるって女神様が言ってた。毎回じゃないけど、安らぎに来た時に食べてたんだ。もしかしたらって思ったんだけど」
「女神が・・・わかった、試してみるよ」
ニルス様は子どもみたいな顔で笑って、一粒を持ち上げた。
これで・・・あれ?
「ま、待ってください。もし元に戻れたら服が破れてしまいます。脱いでください!」
ニルス様が元に戻るのは嬉しいし心強い。
でもせっかく作ったから取っておきたい。
「わかったよ・・・こんなところで裸になるなんて」
「そっちは見ないようにしています」
わたしは後ろを向いた。
小さい時のは見ちゃったけど、さすがに大人の裸はね・・・。
「ニルス、早く食べてみて」
オーゼさんの声が聞こえた。
どうなるんだろう?
見たいけど・・・。
◆
「ルージュ、鞄を開けるよ」
雲の流れを追っていると、上の方から声が聞こえた。
ということは・・・。
「着替える・・・」
「戻ったんですね!」
「まだ向くな・・・」
背中の鞄が揺れた。
中に手を入れてるんだ・・・小さいままじゃできないこと・・・。
「ニルス・・・手伝ってあげようか?」
「いらない・・・」
衣擦れの音が聞こえてきた。
よかった・・・。
◆
「・・・ルージュ、いいぞ」
「はい・・・あ!」
振り返ると、頼れる師匠がニコニコしながら立っていた。
「やりましたね!これで解決です。どうなるかと思いましたよ」
「ああ、そうだな。・・・ありがとうシル。助かったよ」
この姿だと安心感が違う。
なにも心配いらないって気持ちだ。
「よかったね。果実はあと五つだから、大事に使わないとダメだよ」
「え?」「は?」
シルは何を言ってるのかな?
もう元に戻ったんだけど・・・。
「たぶん、明日の今頃くらいまでだと思うから」
「そうね・・・そのくらいね。こんなものあったんだ・・・」
え・・・オーゼさんまで。
「どういうことだ?」
「ニルスはそれ以上保てないみたいだよ。だから、大事に使ってね」
保てない?
「また・・・小さくなってしまうのか?」
「ごめんね・・・本当は女神様しか食べちゃいけないものなんだ。大きすぎる力だから、ニルスの身体では収めきれないんだよ。だから・・・一時的になってしまう。それに、元の状態ともちょっと違うんだ」
「そうか・・・」
そんな・・・もう大丈夫だって思ったのに・・・。
「なら・・・これは貰えないよ」
「いいんだ、女神様も許してくれると思う。それに困ったら力になるって約束したからね」
「シル・・・ありがとう、大事に使うよ」
ニルス様はシルの嘴を優しく撫でた。
そうだよね・・・シルは力になってくれたんだから、がっかりするんじゃなくって感謝しなければいけない。
ニルス様はそれがわかっているんだ・・・。
「あとね、森のみんなもニルスへの恩をちゃんと憶えてる・・・」
シルが高い声で一度だけ鳴いた。
◆
「わあ・・・」
「こんなにいたのか・・・」
神鳥の呼びかけに、森中の木から鳥たちが現れ、わたしたちのいる所に集まってきた。
ここにいるみんながニルス様に感謝してるのか・・・。
「みんな、ニルスが困ってるんだ。小さくなった身体を元に戻す方法を探してきて」
シルが命じると何百もいる鳥たちが一斉に鳴き、色んな方向へすごい速さで飛び立っていった。
こんな光景を見れるのはもう無さそうだ・・・。
「鳥や獣しか知らないこともあると思う」
「シル・・・」
「みんなも力になりたいんだよ」
「・・・」
ニルス様の目が潤んでいる。
こんなに協力してもらったら、わたしなら声を出して泣いちゃうだろうな。
「なるほどね・・・シル、鳥たちの情報は私に伝えてほしい。ニルスの居場所がわかるからすぐに教えられるわ」
「わかった。オーゼはどこにいるの?」
「大体川にいる。ここから南に大きなのがあるでしょ?」
「ああ・・・うん、知ってる」
大陸のちょうど真ん中にいるから鳥たちも集まりやすい。
なんだか希望が見えてきたかも。
「それと・・・できればでいいんだけど」
シルは遠慮した感じでニルス様の肩に乗った。
なんとなくわかる、あれはお願いをしたいって感じだ。
「どうした?なんでも言ってくれ」
「・・・ずっと遠くだけど、人間が森の木をたくさん伐って運んでるんだって。それでここに流れてきたのもいっぱいいるんだ」
「・・・そうか、開拓に使っているんだろうな」
「この森は・・・触れないでってお願いできないかな?」
わたしは胸を押さえていた。
人間の暮らしが良くなっていくと、シルたちにとって困ることもでてくるのか・・・。
なんか・・・切ないな。
「シル、安心していいよ。人間の王に伝えて手を出さないようにしてもらう。・・・ここは女神も訪れる場所だもんな」
「ありがとう、まだ・・・大丈夫だとは思うけど」
「オレもこの森が好きなんだ。必ず守るよ」
わたしもここは好きだ。
なんだか自然と一つになれる気がするから・・・。
「それと・・・色々片付いたらまた来るよ」
「うん、待ってるね」
「わたしも・・・また来るね」
「ふふ・・・気持ちいい・・・」
また嘴を撫でると、シルは体を震わせて喜んでくれた。
連れて帰りたい・・・。
◆
「さて・・・下りるか・・・」
シルはオーゼさんのことを鳥たちに伝えるために飛び立った。
わたしたちは・・・来た道を戻らなければならない。
「けっこう時間がかかりそうですね・・・」
高い、それに太陽が西にある・・・夜になっちゃうな。
そういえば・・・朝からなんにも食べてない・・・。
「ルージュ、よく頑張って登ったな」
「これくらい平気ですよ。早く行きましょう」
「そうだな・・・ご褒美だ」
ニルス様はわたしを抱えて跳んだ。
「え・・・きゃああああああああ!!!!!!」
突然のことに悲鳴が勝手に口から出る。
「あはは、かわいい悲鳴だな」
「え・・・あ・・・」
目を開けると、ずいぶん下まで落ちていた。
どうやって・・・。
「わ、わ、わ・・・」
「もうすぐだ」
ニルス様は上手に枝を使って、音も立てずに下りていた。
すごい・・・シルのいたところで戦ったっていうのは本当なんだ。
それに、抱かれてるわたしに衝撃が無い・・・。
「あの・・・わたしもこんなことできるようになれますか?」
「・・・たぶん」
・・・できるってことだよね?
◆
空の色が変わる前に地面に立つことができた。
というか・・・一瞬に近かったな。
「ありがとうオーゼ、一緒に来てくれて助かったよ」
「ううん、ルージュがいたから楽しかったわ」
「あの・・・色々教えていただいてありがとうございます」
オーゼさんは、この二日間で男の人のことをたくさん教えてくれた。
でも・・・普通に話せるかって聞かれたらまだ自信は無い。
「ルージュ、全員に当てはまらないこともあるからな」
まあ・・・ニルス様にならできるかな。
「わかってますよ・・・ニルス様」
「・・・上目遣いをやめろ」
おお、赤くなってる。
やっぱりオーゼさんの知識は本当なんだ。
でも・・・試せる人はニルス様だけ・・・。
◆
「今度はカモ・・・いやアヒルか」
「ガチョウよニルス、似てるけど違うの。ゆっくり飛ばすけど、夜明け前にはスナフに着くはずよ」
オーゼさんが鳥を出してくれた。
わたしにも違いがわからないな・・・。
「ルージュ、オレの前に乗って」
「はい、じゃあニルス様が支えてくれるんですね?」
「そうだよ。疲れたなら眠ってもいい。食事は・・・飛びながらだし、果物で繫ごう」
「はい」
また空の旅、次の目的地はスナフだ。
「鳥たちだから・・・どうでもいい情報もけっこうあると思う。良さそうなのがあれば、シロと相談してからあなたたちに伝えることにするわ。でも・・・私にもまた会いに来てね」
「はい、必ずそうします」
「約束よ・・・」
オーゼさんは最後にわたしを抱いてくれた。
少しひんやりだけど、それが心地いい。
「じゃあ行くか。・・・果実は慎重に使う。また小さくなったらルージュが持っていてくれ」
ニルス様はわたしをしっかりと支えてくれた。
「はい、任せてください」
ふふふ、頼りにされてる感じがする。
だけど・・・明日には元に戻っちゃうから、今の内にたくさん甘えておこう。
どうでもいい話 15
小さくなる、ガチョウに乗って旅をする。
名前を「ニルス」に決めた時から入れたかったエピソードでした。




