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Our Story  作者: NeRix
風の章 第二部
156/481

第百四十八話 守ってくれる人【シロ】

 あとひと月で旅か・・・。

ルージュは初めてだから、僕が色々教えてあげないとね。


 宿の取り方、野宿のやり方、旅の心得・・・。

たくさん楽しい思いをさせてあげよう。


 でもまずはお祭りだよね。

今日は闘技大会を見て、明日はルージュとセレシュの二人とお買い物の予定だ。

最後の日は・・・お母さんと出かけようかな。



 「シリウスがこちらに戻ってくるのは聞いているか?」

王様が嬉しそうに笑った。

僕は闘技大会を見に来たんだけど・・・。


 『シロ様、こちらへ』

『え・・・』

『王がお呼びです。見かけたらお連れするようにと』

入り口で知らない人に捕まって、王様の観戦室に連れてこられた。

まあ、楽しいからいいけど。


 「うん、またみんなで遊ぼうねって話してたんだよ」

「そうか・・・それで、一つ頼みがあるのだ」

「シリウスのことならなんでも聞くよ」

大切な友達だからできることはなんでもしてあげたい。


 「シロたちが住んでいる家・・・シリウスも置いてもらうわけにはいかないだろうか?もちろん家賃は支払うつもりだ」

王様は深刻そうな顔をした。

なんだそんなことか・・・。

 「お部屋はいっぱい余ってるから大丈夫だよ。家主はミランダだけど、僕から言っておいてあげる」

「そうか・・・引き受けてくれてありがとう。迷惑をかけないようには言っておく」

王様はどこに住ませるかを真剣に考えたんだろうな。


 シリウスは、テーゼにある精霊学のアカデミーに通うって言っていた。

お城から通わせないのは、王族だってバレちゃうからだ。

けど、どこかで一人暮らしは心配・・・その時に商会なら安全だって思ってくれたってことだよね。

 たしかに変な人とか来ないし、いざとなったらハリスがいるからすぐに逃げることができる。

・・・シリウスが来たらベルを渡すように言っておこう。

 

 『もうニルスさんを呼んだら?見つからないのに・・・』

『色んなことをさせてあげようと思ったんだ。絶対無駄にはならないよ』

『ルージュとシロがいないのは寂しいな・・・』

シリウスは、話を聞いてがっかりしていた。

だから僕は・・・。

 『そしたら、旅に出たらここに来るようにするよ』

いいことを思いついた。

 『あ・・・それは嬉しいかも』

『それで、テーゼに戻ることをシリウスから教えてあげるの。そしたら早めに旅を切り上げて帰ろうってなるかも』

『そっか、言ってみるよ。ふふ、ありがとうシロ』

それか戻る頃に合わせて、一度テーゼに帰ってもいいよね。

それでもルージュが「まだ旅を続けたい」って思えばまた出ればいい。

だって、旅人は自由なんだから。


 「風の月に戻ってくるって言ってたけど、うちにはいつから住むことになるの?王様と一緒に闘技大会を見る約束をしたって教えてくれたよ」

ルージュの心配は特に無いから、こっちの話を進めよう。


 「そうだな・・・少しだけこの城で生活をしてもらう。なのでそちらに預けるのは凪の月の中ごろからだな。シリウスも、友との再会を色々と考えているようなのだ。・・・驚かせたいと言っていた」

「え・・・じゃあそれまではお城?・・・ゼメキスは大丈夫?」

心配なことがある。

またいじわるされないか・・・。


 「心配いらん。・・・西のメネ地方の開拓に力を入れたいらしい。なのでしばらく戻らんのだ」

開拓・・・少しはまともになったのかな?

 「まあ、夜会がある時は戻ってくるが、会っても一度か二度だろう」

「よかった。じゃあ、ゼメキスもいい子になったんだね」

「・・・わからない。大丈夫だとは思うがな」

王様の顔が曇った。

なにかあったのかな?


 「心配事があるの?」

「まだ言えんが・・・ツキヨが調べている。大きな金が動いているようなのだ」

「・・・疑ってるの?」

「・・・念の為だ。関わりがあるようなのだが・・・間違いであってほしい・・・」

ツキヨが調べているか・・・。

王族の間でも何かあれば動くんだな。


 「神の言霊で頭が痛いというのに・・・」

「そっちはなにも無いんだよね?」

「・・・そうだな、尻尾も見えない。そして、今の所要求も無い。杞憂ならそれでいいが、数が増えすぎている。大きな計画が進んでいて、ある日突然平穏を壊しに来る・・・不吉なことばかり考えてしまうのだ」

王様が恐い顔になった。

 たしかに今の所世の中はなにも変わりがない。

王様やメルダが気にしているようなことは起こらないような気もする。

だけど・・・。


 「大丈夫、必要なら僕も動くからね。もし、今を壊そうとしてくるんなら全員僕が捕まえてきてあげる」

「シロ・・・人間同士のことだから気にすることは無い。・・・ツキヨも手伝うことは無いのだ」

「僕は友達の未来が明るくなるようにしたいだけだよ。その中には王様もいるからね」

「・・・」

王様は微笑んでくれた。

 家族、友達、仲間が困ってたら助ける。

ニルスに教わったことだから間違ってないよね。


 「ふふ・・・わざわざ呼んですまなかったな。祭りを楽しんでくれ」

「うん、でも今は王様とお話ししたいな。えっとね・・・おばさんが、シリウスがいなくなると寂しいから、もう一人欲しいって言ってた。だからもっと会いに来てって」

実は「伝えておいて」って頼まれてたことだ。

そろそろ「授かれなくなるから」って焦っていた感じだったな。


 「隠し子を増やせと言っているのか・・・」

「あれ・・・作ろうとしてるよね?」

「・・・知っていたのか。そうなったら、その子とも仲良くしてもらうことはできるか?」

「もちろん」

なんか気分がいい。


 心配なことはたくさんあるだろうけど、明るい未来も同じくらいある。

僕もそのお手伝いができたらいいな。



 「もう暗くなっちゃったな・・・」

王様はそろそろ帰るみたいで、僕もそうすることにした。

訓練場の周りは静かになっていて、たくさんいた観客たちは賑やかな街に向かったみたいだ。


 「やっぱり優勝はお母さんだったな」

闘技大会は、王様の部屋で一緒に見ていた。

 これで個人の方は四回連続で雷神の優勝・・・。

ニルスが出てきたら変わるかな?


 「うーん・・・みんな一緒か」

お母さんとルージュの気配は酒場にあった。

 「じゃあ、ミランダもかな・・・」

シリウスのことを早く話したい。

明日は朝からルージュと一緒だから、他の事は今日中に終わらせないとね。


 「あれ・・・ニルスの所にいる・・・」

ミランダの気配は火山にあった。

行くんなら僕にも教えてほしかったな・・・。


 どうしよう、確認するのは戻ってきてからにするか?

・・・いや待てよ、ノアたちは家にいる。

そっちには話しておいて、あとから伝えてもらえばいいな。

うん、さっそく行ってみよう。



 家に着いた。

明かりもついている。


 「フラニーさんって綺麗な人だよね」

「ああ、たしかにそうかもね。あの歳にしてはって感じだけど」

「エスト、ちょっと失礼だよ。ああいうのがいいんじゃないか」

「人妻に何言ってんの・・・」

扉の向こうから、ノアとエストの話し声が聞こえた。

こんな時間まで何してたんだろ?

ミランダに色々頼まれてたのかな?


 「お仕事お疲れ様」

僕は二人のいる談話室に入った。

・・・書類の整理をしていたみたいだ。


 「あれ・・・酒場に行かなかったの?」

「えっとね、お願いがあってきたんだ」

とりあえず話しちゃおう。



 「で・・・凪の月からここに住ませたいの」

シリウスのことを話した。

もちろん、王族だってことは秘密だ。


 「シロ宛てに届く手紙の子だよね?お母さんはうちのお客さんだし、ミランダさんも知ってる子なら大丈夫じゃない?」

「本当?」

「思ったんだけどさ、聖女様が目覚めたらみんなで旅に出るんでしょ?だからわたしたちが決めていいんじゃないかな」

言われてみればそうだったな。

・・・二人に頼んで正解だった。


 「じゃあ二人とも反対しない?」

「うん」

「構わないかな」

「ありがとう」

やった、あとで王様に教えに行こう。


 「そうだ、おうちの当番も任せていいからね」

普通の子として接してほしいし、おうちの決まりだからそうした方がいいよね。

 「まあ、それはやってもらうけど・・・その子ってお仕事手伝ったりしてくれるかな?」

「どうかな・・・でも礼儀正しいし、住まわせてもらうわけだからきっと自分からお手伝いしてくれるよ」

「助かるな・・・シロの友達だし、いい奴そうだ」

「ていうか、シロはいい子としか遊ばないしね」

ノアとエストは「楽しみ」って感じだ。


 いい印象を持ってもらえて嬉しいな。

・・・もっと教えてあげたくなってきた。


 「うん、とってもいい子だよ。王子の中で一番優しいって王様が言ってたもん」

「え・・・王子?」

「・・・王様?」

談話室の空気が変わった。

あ・・・やばい、思わず言ってしまった・・・。

 「違う・・・今の・・・なんでもないからね・・・」

「・・・」「・・・」

二人の顔が険しくなっていく。

これ・・・ごまかせない?


 「シロ・・・預かる子ってどこの子?わたし興味あるな・・・」

「・・・普通の子」

「ご両親は?預かるなら僕たちも挨拶しないといけない・・・」

「・・・僕が間に入るからだいじょ・・・あ・・・」

僕の体が押さえつけられた。

 「白状なさい」

「うう・・・秘密なんだよ・・・」

「認めたわね?」

「嘘は堂々とつかないとダメだよシロ」

話すしか・・・ないのか。



 「王に隠し子って噂は本当だったのか・・・」

「他にもいそう・・・」

二人にシリウスのことをすべて話した。

いずれ知られてしまったかもしれないし、きっとこれでよかったんだ・・・。


 「絶対に内緒だからね。もし誰かに漏れて、シリウスが危険な目に遭ったら二人は捕まっちゃうかも・・・」

「本当にここに住ませていいの?・・・ねえノア」

「うーん・・・」

「そんなに心配しないで。シリウスはとってもいい子なんだ。色々勉強もしてるし、頭もいいよ。それにハリスのベルを持たせるからなにか起こっても大丈夫」

王様に約束しちゃったから、なんとか説得しなければいけない。

二人が認めてくれれば何も問題は無いはずだ。



 「大事なことだけど、王子様って扱いはしなくていいのね?」

「うん、普通の子として接してほしい」

「じゃあ、ちょっとお昼買ってきてとか頼んでいいの?」

たくさん説明した。

そのおかげか、二人の反応が前向きになってきている。


 「むしろシリウスから買ってこようかって聞いてくると思う。だから・・・お願いします」

これでダメだったら、どうお願いしたらいいかな・・・。


 「・・・まあ、僕らが正体を漏らさなければいいわけだよね」

「そうだね、それにまだ会ってもいないし・・・」

「えっと・・・いいってこと?」

「とりあえず・・・ていうかやっぱりここはミランダさんの家だから・・・あの人がいいって言えば・・・」

やった、ミランダなら絶対大丈夫だ。

「シリウスならいいに決まってんじゃん」とか言ってくれそうだもんね。


 「はあ・・・なんか疲れたな。・・・エスト、露店通り行って飲まない?」

「うんいいよ。ねえねえ、明日も一緒にお祭り見に行かない?南区の広場で、男を女にしてくれるとこがあるんだって」

「なにそれ・・・まあ、見るくらいならいいか。ついでに賭けのお金を貰ってこよう」

「ふふふ・・・決まりね」

二人とも肩の力が抜けている。

たぶん大丈夫だな。


 「じゃあ、僕はお母さんの所に帰るよ」

「うん、またねシロ」

「おやすみなさーい」

酒場には行けなかったけど、いい感じにまとまったからよしとしよう。

まあ、こんなにかかるはずじゃなかったんだけど・・・。


 でも、今日の分は明日楽しめばいいよね。

たくさん露店も出てるし、旅芸人も来てる。

ルージュたちと一日中遊ばないと・・・。



 外は夜なのに明るかった。


 「お祭りの時はいつもこうだな・・・」

この時期は、テーゼから夜が無くなる。

どこに行っても光の魔法で照らされていて、朝になるまで消えることは無い。


 でも夜が来るところもある。

雷神の土地・・・あそこは変わりない。


 ルージュたちの気配は・・・やっぱりもう帰ってるみたいだ。

僕も急ごう。

明るいと飛べないから不便だな・・・。



 「おっ、はっけーん」

まだ遠いけど、家の近くにお母さんが見えた。

・・・誰かと一緒にいるみたいだ。


 「え・・・」

お母さんが一緒にいた誰かを殴り飛ばした。

 「なんだ・・・」

殴ったお母さんも倒れた。


 なにか・・・あったのか・・・。

僕は走るのをやめて飛んだ。

嫌な予感が体中にまとわりついている・・・。



 最速で飛んで、すぐにお母さんの近くに下りた。

目の前には、異様な気配の人間・・・。


 「離れろ!!」

僕は倒れているお母さんを背に叫んだ。


 ・・・まったく状況がわからない。

この人は誰?・・・男?

帽子を深く被っているから顔がわからない。


 「・・・風の魔法か?」

声は男・・・。

 「誰だお前は!お母さんに何をした!」

「子どもは一人・・・ではなかったのか」

なんだこの人・・・かなり危ない雰囲気だ。

 

 「シロ・・・」

背中にお母さんの絞り出すような声が当たった。

事情はあとでいい・・・。

 「大丈夫・・・任せて」

周りの空気を冷やし、男の足を凍らせた。

お姉ちゃんでも、ニルスでも、テッドおじさんでも逃げられないだろう・・・。


 「氷・・・」

「それで終わりじゃない・・・」

つららを五百作り、男の逃げ道を塞いだ。

 考えてる暇なんか無い。

こいつにお母さんがなにかされた・・・それだけで戦う必要がある。


 「強い冷気・・・幼いがすさまじい素質があるようですね。娘は・・・無理か」

「娘・・・ルージュにもなにかしたのか!!」

「まだですよ・・・」

男の体から黒いもやのようなものが噴き出した。

なんだこれ・・・いや、なんであろうと関係無い。


 「君の魔法が僕を上回ることは無い。・・・一歩でも動いたら命をもらう。・・・何者か言え」

「・・・この黒煙は破れません」

「答えろ!!貫くぞ!!!」

「テーゼの子どもは、随分血の気が多いようですね・・・」

男が張った結界のようなものは、黒くて分厚い煙となって渦巻いていた。

よくわからないけど・・・まやかしだ。


 「質問に答えろ!!話す気が無いならこのまま捕らえる!!」

「どちらも嫌なので失礼します。雷神の娘は戦えないようなので、機会があればまた来ることにしましょう」

「逃げられると思ってるのか!!!」

僕は男を殺すつもりでつららを飛ばした。

足は凍らせている。これで・・・。


 「え・・・なんだ・・・」

黒煙が、意思を持っているかのように僕のつららを飲み込んでいった。

・・・食べられてるみたい・・・あれはまやかしじゃない?

 「無駄です・・・これはすべて飲み込む・・・。世界に導きの灯を・・・」

声が遠ざかっていく・・・。

動いた?足は確実に凍らせたのに・・・。


 いや、そんな場合じゃない!

追わなきゃ・・・あいつは逃がしちゃダメだ!


 「シロ・・・時間が無い・・・」

お母さんの声で、僕の体が止まった。

黒煙が大通りの方へと消えていく。

く・・・まずはこっちだ。



 「いったいなにがあったの?」

倒れていたお母さんを抱き上げた。

流れがおかしい・・・毒か?


 「知らない男だった・・・呪いを・・・かけたと言っていた。死の呪いだと・・・」

死の呪い?いや・・・そんなはずはない!

 「お母さんに呪いは効かない・・・イナズマの輝石を持ってるでしょ?」

「ルージュに・・・きのう渡した・・・旅先で・・・危険な目に遭わないように・・・」

「きのう・・・そんな・・・」

「右手の甲・・・円ができた時、私は死ぬらしい・・・」

その手には、たしかになにかが浮かび上がっている。

 円を描くとしたら・・・今は四分の一くらいか。

かなり早いぞ・・・。


 「もう時間が無い・・・シロに頼みがあるんだ」

お母さんの気配が弱々しい。

解呪・・・ダメだ。この状態じゃ間に合うかわからない・・・。


 「シロ・・・ルージュが・・・家にいるんだ」

お母さんは必死な顔をしていた。

 「ルージュ・・・」

「あいつは、あの子も殺すと言っていた。・・・もう私では守れない・・・連れて、一緒にニルスの所へ行ってほしい・・・頼む・・・」

ルージュも襲われる恐れがある・・・。


 「二人家族・・・調べたと言っていた。奴は・・・ニルスの存在を知らない・・・」

「わかった・・・大丈夫、お母さんも助けるから・・・」

流れる前に何とかしないと・・・なにか・・・。


 「シロ・・・愛しているよ・・・」

お母さんは、手を震わせながら僕に触れてきた。

 「なに・・・言ってるの?」

「メピルにも・・・ニルスとルージュにも・・・ティムにも・・・伝えてほしい・・・」

「ダメだよ・・・自分で言わなきゃ・・・」

おかしくなってしまいそうだ。

 なんでこんなことになってる?

お母さんとルージュは・・・なんで狙われたの?


 「死に方は・・・選べないようだ。いや・・・これは・・・家族を一度でもめちゃくちゃにしてしまった罰なんだろう・・・」

「そんな罰なんてない!!安心して、僕が助けるから・・・」

そうだ・・・僕が・・・。


 『シロも私の子どもだと思っているからだ』

僕もお母さんだと思っている。

 『シロ・・・ニルスやルージュと同じように、お前も愛しているよ』

僕も愛している・・・。

 『シロはもう・・・ニルスのようになれているよ』

だから・・・死なせない!


 「ルージュはニルスに守ってもらうね。お母さんは・・・僕が必ず助けてあげるから」

「シロ・・・また、不安な顔をしているな・・・」

「そんなことないよ・・・」

本当は泣き出したいくらい不安だ。

でも、今弱いところを見せるわけにはいかない・・・。


 「すまない・・・本当は・・・抱いてあげたいがもうできない・・・」

「大丈夫だよ・・・」

「ニルスたちに相談するんだ・・・一人で考えずに・・・みんなで・・・」

「うん・・・」

僕はお母さんを抱きしめた。


 「美しき体、澄んだ魂、愛おしい心、穢れなき記憶・・・忌まわしき呪いと共に、氷の棺で眠れ・・・」

「・・・」

お母さんの体が氷に包まれた。


 これで死は防げる・・・。

でも油断はできない。



 「夜遅くにごめんね・・・」

僕は鞄からハリスのベルを取り出して、何度も振った。

お願い・・・早く来て・・・君にしか頼めない。


 信頼できる人・・・必ず守ってくれる人・・・。

早くルージュをニルスの元へ・・・。

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