第百二十六話 頼み方【アリシア】
まだだ・・・まだ足りない。
熱は上がり続けている。
それでも・・・それでも絶頂には程遠い。
戦場は今回で最後・・・もっと、もっと滾らせてくれ。
◆
「ぬるすぎるぞ!!」
目の前にいた二体のドラゴンは、私の剣で大地に沈んだ。
・・・こいつらでは満たされない。
「ぬるいですか・・・」
「今までのとは段違いに強いですよ?」
スコットとティララが呆れた声を出した。
「痛みが足りない・・・。これでは気持ちよくない」
「・・・」「・・・」
もっと力を振るいたい。
ニルスと戦っていた時のような絶頂感をくれる場所へ行かなければ・・・。
「あ・・・ニルス君たちだ」
離れた息子たちの姿が見えた。
誰かを助けにでも行っていたのだろうか。
◆
「ニルス、なにをしていたんだ?」
息子の服には斬られたような跡があった。
・・・直してあげたい。
「母さんありがとう」なんて言われたいな。
「面倒なのがいた。付いてきてほしい」
ニルスは親指の先を後ろへ向けた。
面倒・・・この子が手こずるような相手がこの戦場にいるのか?
「どんな奴だ?」
「背丈はアリシアと同じ・・・いや、少し低いか。銀髪の女」
女・・・敵はすべて人形と聞いていたが、どういうことだろう?
そういえば・・・ニルスは女に弱いのか?
ミランダには逆らったりしないし、ステラにはとても優しい。
この先にいる銀髪の女もやり辛いということか?
「待たせてる。とにかく付いてきて」
ニルスが駆け出した。
待ってくれている?
・・・行ってみよう。
◆
「あいつ」
私たちの視線の先には、美しい銀髪の女が佇んでいた。
・・・周りに敵も無く、邪魔も入りそうにない。
この場所で戦ってニルスが負けるか?
「何者だ?」
「ジナスの分身らしい。ちょっとやったけど疲れる・・・」
ニルスは顔を緩めた。
なるほど、勝てるだろうが戦いたくないということか。
この子にはまだあとがあるからな。
「・・・早かったな。その女一人でも、全員でかかってきても構わない」
女は抑揚の無い声で言った。
大した自信だ。
・・・いいじゃないか。
「あの子はカゲロウ。前回・・・結界を壊したのは彼女だ」
シロがニルスの背中から少しだけ顔を出した。
カゲロウか・・・精霊と戦うのは初めてだが胸が高鳴る。
・・・前回死んだ戦士たちへの弔いにもなるな。
「敵側で一番強い。オレが相手だと思った方がいいよ」
「一番・・・」
拳に力が入る・・・。
「その顔・・・いや、いいや」
ニルスが目を細めた。
顔?
「まあ・・・戦場だから仕方ない。ただ、テーゼではやめてほしい」
「なんの話だ?」
「話してる時間は無い。やってくれるの?」
「・・・やるさ」
ニルスが頼ってくれたわけだからな。
それに、泣きついてきたみたいでかわいい・・・。
「じゃ、頑張って。オレは向こうに戻る」
ニルスは素っ気なく振り返った。
なんだこの態度は・・・。
「ニルス、親に対してその頼み方は無いだろう。それにさっきからまたアリシアと呼んでいるな」
私はニルスの肩を掴んで止めた。
「は?何言って・・・」
「そんな言い方では戦いたくない。かわいく頼んでみてくれ」
たまにはこっちが試してもいいと思う。
さあ、また「母さん」と呼んでくれニルス。
それだけで私は戦える。
「・・・あいつを倒して・・・母さん」
「もう一度・・・」
「母さん・・・お願い・・・」
顔はよくないが・・・まあいいだろう。
「仕方ないな。母さんはお前からのお願いを断れないのを知っているだろう」
「そう・・・じゃあ頼むよ」
「任せてくれ」
こんなやり取りが心地いい。
・・・お前の母親に戻れてよかった。
「胎動の剣を預ける。結界を使ってくるかもしれない・・・あとで返してね」
ニルスが腰の剣を外した。
おそらく、一番多くの愛が込められたものだ。
「いいのか?」
「帰ったらルージュに見せる。鞘の装飾には絶っ・・・対に傷を付けるなよ」
「当然だ!」
そうか・・・宝石の色や並び、男の子らしくないとは思っていたが・・・だから『ルージュ』なんだな。
これがあれば、恐れるものは何も無い。
「スコット、ティララ、ニルスに付け!私一人でいい!」
勝利だけを考えるなら全員でかかればいいが、自分の欲望を優先した。
強い者はひとり占めしたい・・・。
「え、いいんですか?」
「やった・・・」
二人は嬉しそうな顔をした。
少しは遠慮しろ・・・。
「お前たちは、私よりニルスと一緒の方がいいのか?」
「考えすぎです。俺たちはあなたに憧れて戦士になったんですよ」
「そうですよ、アリシア隊で共に戦えたことは何よりも大切な時間でした」
まあいい・・・帰ったらじっくり聞こう。
きっと言えなかったことも多くあるだろう。
「今夜は・・・本音で話そうか。・・・行け!」
一人で残るのは他にも理由がある。
三人をここで待たせておくよりも、苦戦している隊の救援に行かせた方がいいからだ。
「僕・・・ここに残る。戦いを見ていたい」
シロがニルスの背中から下りた。
「わかった、アリシアを頼んだよ」
「うん」
「じゃあ・・・またあとでね」
ニルスたちはシロを残して戦場の中央へと走り出した。
また・・・必ずそうするさ。
「あの・・・お母さんが立ち向かう姿を見たい。もっと勇気を僕にちょうだい」
シロのかわいい目が私を見つめてくれた。
「ああ、見ていてくれ。シロの勇気が燃え盛るようにしてあげるよ」
小さい男の子もいい。
ニルス、ルージュ、シロ、戻ったら家族四人で一緒に寝るんだ・・・。
「随分待たせる・・・」
背中にカゲロウのぼやきが当たった。
話くらいは許せ・・・。
「シロ・・・鞘を持っていてくれ」
「わかった」
「やっと始められるか・・・」
「期待していたのか?待った甲斐があったな」
その礼はこれからしよう。
「待っていてよかった」と思ってくれるはずだ。
「お前を殺して、ジナス様が気に入っていたあの男ともう一度戦う・・・」
「ふ・・・もう勝つ気でいるのか?」
「・・・言葉はまやかしだ。お前たちの会話も、この会話も・・・今にわかる」
カゲロウが剣を構えた。
精霊らしいが、シロとはまったく違うんだな。
「お母さん・・・」
「大丈夫だよシロ」
この子は優しく、ぬくもりのある言葉を欲しがる。
あの女にそういう心は無いのだろうか?
「カゲロウ、暖かい言葉はそれだけで力になる。今から証明してやろう」
「・・・言葉が力に?」
「お前は愛を知らないのか?シロは知っているぞ」
手袋を指先にしっかり馴染ませ、息子の小さな頭を撫でた。
「・・・知らん」
「教えてやろう」
聖戦の剣を抜いた。
頭のてっぺんから足の爪先まで、滾った血が巡る。
「必要無い・・・」
「哀れな存在だ」
胎動の剣は逆手で左手に・・・絶好調だ。
『一緒に戦うよ、アリシア』
ケルト・・・ああ、より強く繋がろう。
◆
足が勝手に動いた。
精霊だろうと人形だろうと、熱くさせてくれればそれでいい。
「躱すか・・・いいぞ!」
初撃が風だけを斬った。
「うるさい女だ・・・」
左手の剣は結界と防御のために持ったが、攻めたい・・・もっと。
「剣だけに集中するな!!」
「・・・」
体ごとぶつかると、カゲロウの体勢が崩れた。
仕留めるまで油断はしない。
必ず連撃・・・スコット、ティララ、あの子やティムにも教えたこと・・・。
「甘く見ていた・・・強いな」
「お前も充分強い、心を入れ換えるなら鍛えてやる」
「・・・」
押せば足は勝手に動く、その無意識を狙って突いたが弾かれてしまった。
「いい腕だが、そんな使い方では武器がすぐに壊れるぞ」
「そうだな。だが、かわりなら辺りにいくらでも落ちているだろう・・・」
・・・戦士に向いているな。
「強いが・・・お前が息子以上とは思えないな。母親を一人残し・・・冷酷でもある」
「かわいい息子だ。褒めてくれて嬉しいよ」
「母の死を望んでいる・・・そう言ったんだ」
カゲロウの剣が私の胸を切り裂いた。
ふふ・・・痛いな。
「あの子は私を信頼している。お前にはそういう存在がいないのか?」
「・・・ジナス様がそうだ」
「ムキになるな。言葉はまやかしなんだろう?」
「・・・」
カゲロウの構えが変わった。
今度は攻めてくるようだ。
◆
「どうした?熱くなってきたじゃないか!」
「・・・」
カゲロウの剣はニルスとよく似ていた。
冷たく、静かで、いつの間にか迫ってきている。
そしてなにより速い。
受け流し、反撃をしてもギリギリで避けて攻撃まで繋げてくる。
「ぐ・・・」
私の腹になにかがめり込んだ。
「あの男は脚をこう使っていたな・・・」
ああ、その通りだ。
同じことをしてくるとは思わなかったが・・・。
「まだ軽い!」
私が斬り上げた剣は、カゲロウの太ももに傷を付けた。
気持ちいい・・・こんなに強い者がいたんだな。
「ニルスと同じ動きだな・・・」
「ジナス様から頂いた戦い方の記憶・・・あの男のものが気に入っただけだ」
「アリシア!ニルスは一年前、ジナスに記憶をすべて見られている!」
シロが力強い声で教えてくれた。
私の人形を作ったとかいう時か・・・。
なら、問題無いじゃないか。
「・・・息子と同じ動きだとやりづらいのか?」
「また喋るようになったな」
「・・・お前に合わせているだけだ」
「ならもっと熱くなれ、その方が気持ちいいぞ」
一度守りに徹しよう。
・・・全部見せてほしい。
それを打ち崩すのがいいんだ。
◆
体に痛みが増えていく。
でも苦しいものではなく、心地がいいもの・・・。
今だけは、ステラの治癒を止めてほしいな。
「・・・治癒は厄介だな。一撃で殺さなければ動きは止まらないか・・・」
カゲロウが苛立ち始めた。
無感情かと思ったが、少しはあるようだ。
「そうだ、一撃で決めてみせろ」
「その顔・・・快楽に溺れているな。異常者・・・そういうものか」
「私をよく知っているようだな」
「・・・お前以外にも知っているだけだ」
誰の話だか・・・。
ただ・・・カゲロウの言う通りではある。
斬撃も打撃も、今の私にとっては快感でしかない。
おかしな体だとは思うが、気持ちいいんだから仕方ないだろう。
待てよ・・・元はといえば、女神がこんな体に作ったんじゃないか。
私はなにも悪くない・・・。
「そろそろ攻めてきたらどうだ?さっきの勢いはどうした?」
私の肩にカゲロウの剣が入り込んできた。
一人遊びのようで飽きてきたんだな。
「そうしよう。お前の力量はだいぶわかった」
「・・・勝てないと悟ったか?」
「逆だぞカゲロウ・・・」
私が教えた剣とあの子独自の動き・・・強いが、それでは私に勝てないよ。
「お前の速さはもう慣れた!!」
喉元への鋭い突きを流し、拳で顔を殴ってやった。
「ぐ・・・」
「これくらいニルスは躱すぞ!!」
聖戦の剣を振り抜いた。
いいぞ、勢いが付いてくる・・・。
カゲロウの胸元に大きな傷を付けたがまだ終わらない。
「これもだ。ニルスはここで距離を詰めてくる!!」
胎動の剣でカゲロウの剣を斬り上げ、無理矢理手放させた。
右手の聖戦の剣、今度は首を・・・。
「調子に乗るな!!」
剣がなにも無い場所で弾かれた。
・・・結界か、胎動の剣でやればよかったな。
「そうだ、使えるものは全部使え!」
「指図をするな・・・」
カゲロウは距離を取るために素早く後方へ跳んだ。
・・・仕切り直しか。
「アリシア、わかり辛いだろうけどカゲロウも消耗している。この場所では人間と同じように痛みや疲労があるんだ」
シロが教えてくれた。
そうは見えないが・・・もっと斬れということか?
精霊だからか、出血が無いせいでわからん・・・。
「カゲロウ、痛いのか?」
「・・・だから戦える」
「そうか、いい顔になってきているぞ。闘争心が出てきたようだな」
「・・・くだらん」
カゲロウは鋭い目で私を睨んでいる。
なるほど、まだ全部見せてくれてはいなかったんだな。
「これ以上は斬らせない・・・」
「やってみろ」
「もう・・・息子には会えないぞ・・・」
カゲロウの目に一瞬だけ寂しさが見えた。
情?そういうものを感じる・・・。
「心配するな。このあとすぐにまた会う」
「・・・」
カゲロウが一歩で距離を詰めてきた。
これはニルスもよくやっていたな。
あの子はここから腹を蹴り、躱された時のために剣を振り被っている。
私はいつも・・・自分から足を受けにいき、押し返していたな。
「な・・・」
カゲロウも同じだった。
やはり一年前ではここまでか。
「どうした?あの子のは、もっと重かったぞ!!!!」
「・・・」
叫びを使うとカゲロウの動きが止まった。
「私の力は知っていたはずだ!構えておけ!!」
首を掴み持ち上げ、大地に叩きつけた。
記憶だけ、研鑽はそれほどしていなかったんだな。
・・・敵でなければ本当に鍛えてやりたいくらいだ。
◆
「消すのは惜しいが、容赦はしない」
倒れたカゲロウの胸に聖戦の剣を突き刺した。
「致し方ないだろう・・・」
ここまでされても、痛みで顔を歪ませないのか・・・。
「お前の無表情こそ不気味だ」
「疲労、痛み、不安、焦り・・・戦闘中に出すものではない・・・」
「その通りではあるが、決着のあとは別だ」
「そう・・・決着だ。もう一度か二度だ・・・その剣を突き立てればいい」
声も無感情だ。それなのに・・・少しだけ心が揺れる。
とても気持ちよくしてくれたカゲロウに、情が移ってしまったのだろうか?
「一度か二度・・・そのあとお前はどうなるんだ?」
「知ってどうする・・・ジナス様に還るだけだ。一瞬の光も無い・・・そう、無だな」
死と同じということなのだろうか?
戦場で戦ってきた相手はみんな人形・・・。
カゲロウは私が初めて命を絶つ者となる・・・。
「・・・なにもしないなら見逃してやる」
「それは・・・情というものか?無理な相談だ」
わかっていた上で聞いた。
ジナスの分身ならば他に選択肢は無いだろう。
だが、消してはいけない・・・そんな気がする。
「・・・結界は張らないのか?」
「・・・左手の剣は記憶にある。結界ごと斬れるのだろう?」
「そうだ」
「・・・それに私もジナス様と同じ考えだ。戦いの場に・・・あんなものは必要無い。さっきは・・・思わずだな」
思わず・・・やはりそういう感情があるんじゃないか。
カゲロウには心がある。
結界を出したのは消えたくないからだ。
そう思っている者に終わりを与える・・・私にできるのか?
この女には邪悪なものを感じない。
ここにいるのはジナスの命令で、自分の意思では無いのだろう。
だから・・・揺さぶられる・・・。
「お前はとても強い・・・よくやったぞ・・・」
カゲロウが私を称えてくれた。
何を思ったのだろう?
悔いが残っている・・・そんな顔だ。
「まるで我が子を褒めるような言い方だな・・・」
頭に浮かんだままを言葉にした。
今のカゲロウを見て、ニルスを褒めた時の自分と重なったからだ。
「そうか・・・これで合っているのか・・・」
カゲロウの目から雫が一粒だけ流れた。
たったそれだけのことなのに、勝利への意志がまた揺らぐ・・・。
「合って?・・・なんの話だ?」
「お前が知る必要は無い・・・」
「教えて・・・くれないのか?」
体が動かない。
戦士たちの仇なのに・・・やらなければ勝ちは無いのに・・・。
「早くやれ・・・」
「アリシア、惑わされないで!」
シロの声でもダメそうだ。
やれるのか・・・私に・・・。
「・・・仕方のない女だ。・・・ニルス、お前の息子が出てこなければ、私には別な役目があった」
カゲロウの表情が戻った。
「別な・・・それはなんだ?」
「ルージュ・・・あいつの妹・・・お前の娘でもあったな。殺しに・・・」
聞き終わる前に頭を貫いた・・・。
「たしかに・・・お前に情けはいらなかったようだ。あの子たちのためなら、私はなんだってできる・・・」
カゲロウの体は朝霧のように散った。
ジナスに還ったということか・・・。
ためらった私が、迷いを振り切れるようにしてくれた・・・。
せっかくいい戦いができたのに、後味が悪いな・・・。
◆
私はよく晴れた空を見つめていた。
体の熱は残っているのに、なぜ動けないのか・・・。
「カゲロウは何を思っていたんだろうな・・・」
やりきれない思いをシロに問いかけてみた。
わかるはずがない・・・でも、なにか言ってほしい。
「すまないシロ・・・なぜか切ないんだ・・・」
「なにも気にしなくていい。今やらなくても、ジナスを倒せば彼女も終わっていた。それに消さなければアリシアが殺されていたかもしれない」
シロが大人びた声で慰めてくれた。
いずれにしろ消えていたか・・・。
そうだな、気にしていても仕方がない。
「・・・待たせたなシロ」
私は振り返り、息子を抱き上げた。
勝てたのは、この子がずっと見守ってくれていたおかげでもある。
「強かった?」
「ああ、今までの戦場で一番だったよ」
「まだ終わってないよ。体も熱いままだね」
「わかっているよ。熱が冷めないうちに行こうか」
ニルスの顔が見たい、胎動の剣も返さなければならない。
「なんだか、アリシアは死ななそうだね」
「お母さん・・・だろ?」
「まだ慣れてないから許して」
シロが今度は子どもっぽく笑った。
こういう所もニルスと似ているな。
「まあ、死なないのは本当だ。手を繋ぐ約束は必ず守る。・・・勇気はどうだ?」
「たくさんもらった。でも、約束は守ってほしい」
「すまない、いじわるしただけだ。大丈夫と言われてもそうするつもりだったよ」
「ありがとう、お母さん」
シロは照れ隠しなのか、また私の背中にしがみついた。
よし、私も救援に向かおう。
◆
「話したっけ?僕にも分身がいるんだ」
走る私の耳元でシロが囁いた。
楽しそうな声だ。
「憶えているよ、女の子だったな」
「カゲロウみたいに感情を抑えるようにはしてないんだ。それに僕より背が高いの。そのせいかはわからないけど、お姉ちゃんみたいなこと言ってくるんだ」
ということはメピルも私の子になるということか・・・。
今のところ息子が二人、娘も二人・・・いいじゃないか。
『俺にその気はねーよ。それにあいつと家族なんてごめんだな』
息子はもう一人くらい増えるかもしれないが・・・戻ったらまた聞いてみるか。
今はそれよりも・・・。
「母さんもメピルに会ってみたい」
「ごめんね・・・メピルは精霊の城からは出られないんだ」
「そうか・・・ならこっちから会いに行こう。仲良くしたいんだ」
「うん、一緒に行こうね」
戦場が無くなっても先の楽しみがたくさんある。
そういえば、闘技大会が開かれるんだったな。
強い者と戦える機会はまだあるようだ。
・・・うん、ニルスにも絶対に出てもらおう。
自信は無いが、母さんもかわいく頼めば・・・きっと聞いてくれるはずだ。
今のところ、私に絶頂をくれるのはあの子だけだからな。




