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Our Story  作者: NeRix
水の章 第三部
117/481

第百十二話 繋がる【ステラ】

 あなたは今何を考えているのかな?

幸せな顔をしているのかな?


 毎日、毎日・・・あなたを想いながら手を動かした。


 早く会いたい、あなたの元へ・・・。   



 「これで・・・かんせーい」

フラニーさんが針に繋がっていた糸を切った。

そう・・・これで完成だ。


 「きっと喜んでくれるわ」

「はい、ありがとうございます」

できあがったマントは、絹織物よりも繊細で滑らかな肌触りになった。

 それに柔らかくて、風によくなびきそう。

旅人っぽく灰色で染めたけど、気に入ってくれるかな?


 「今日はお祝いしましょうか」

フラニーさんは嬉しそうに笑ってくれた。

でも・・・それはできない。

 「すみません・・・すぐに帰りたいです。早く・・・会いたくて」

「あ・・・そうよね。うん、そうしなさい」

わかってくれたみたいだ。


 「荷物をうちに取りに行かないとね」

「あ・・・待ってください。お代を・・・」

二十日間もお世話になった。

先に支払っておかないと。


 「ああ・・・そうねえ、私は教えただけだから・・・二十日間と道具の貸し出し、合わせて五万くらいでいいかな」

・・・安すぎる。

ずっと付き添ってくれていたのにそれでいいわけない。


 「あの・・・泊めてもいただきました。宿代だけでその四倍くらいはかかるはずです」

「私も石鹸を貰った。あれって普通に買ったらかなり高いと思う。だから、本当はタダでもいいかなって思ってるの」

「あれは別に・・・」

「ノックスがね、毎晩擦り付けてくるようになったの。バニラに弟か妹ができるかも・・・」

フラニーさんは頬を染めて照れ笑いをした。

誘惑の香り・・・試してもらうために渡したけど、旦那さんといい夜を過ごせているみたい。


 「その分割引ってことにしましょ。・・・やっぱりそういうのがあるだけで違う」

「・・・羨ましいです。私は、今の状態では命を授かることができないので・・・これはニルスには秘密でお願いします。絶対に・・・」

「・・・わかった。・・・愛してもらうことはできるの?」

「それはできます」

まあ、そのつもりで香りを作ったからね。

 ニルスを受け止めることはできる。

というか、欲しい・・・。


 「でも、毎日使うのは良くないですからね。媚薬は、慣れさせてはダメなんです」

「ん・・・わかった」

フラニーさんは子どもみたいな顔になっていた。

それと・・・。

 「一応言っておきますが、ノックスさん以外を誘惑しないでくださいね。それをしたら恩人でも許しません」

「心配しないで。私はノックスがいいの」

「はい、見ていればわかります。だから一応なんです」

「・・・本当はあれが無くても求めてくれたらいいんだけどね。疲れてるからって・・・けっこう傷付くのよ」

毎日でも欲しいって感じだ。

そうだよね・・・私だって・・・。



 「では・・・お世話になりました」

フラニーさんの家に戻り、荷物をまとめ終わった。

あとは転移で帰るだけ・・・。


 「ステラ、女神様のこと・・・」

チルが心配そうな顔で寄ってきた。

 「大丈夫よ。安心して待ってて」

「うん・・・次は、ニルスとミランダも連れてきてね。おいしいお菓子あげるから」

「ありがとう。チルはいい子だから、ちゃんと連れてきてあげるね」

「・・・」

チルの口が曲がった。

みんなでまた・・・。


 「ステラさん、シー君に大好きだよとすぐに来てねって伝えてください」

バニラは明るい顔だ。

戦いが終われば必ずまた会える・・・誰よりも信じてくれている。

 「任せてちょうだい。・・・バニラの恋は必ず実るようにしてあげる」

「えへへ・・・お願いしますね」

シロはこの子の心を完全に奪っているみたいだ。

 まあ、私が口を出すことではないか。

・・・精霊と人間、どうなるか未来が楽しみね。


 「それと、毎晩お話ししてくれてありがとうございます。きのうまで言えませんでしたけど、聖女様ってもっと厳しくて堅い感じの人だと思ってました」

「ふふ、外に出なかった私も悪いわ」

バニラとはとっても仲良くなれた。

青い季節をめいっぱい楽しんでいる女の子・・・純粋でかわいい。

 

 「聖女様と生活ができたこと・・・とても貴重な経験だったと思います・・・」

ノックスさんも家にいた。

 ちょっと、げっそりしてる・・・。

お仕事を休んだのかな?

 「いえ、こちらこそお世話になりました。・・・それと、これからもフラニーさんの相手をしてあげてくださいね」

「あ・・・聞こえていましたか・・・。そうですね・・・なんだか夜になると、疲れていてもその気になってしまって・・・。ステラさんが来たくらいから・・・色気が強いというか」

「そ、そうですか・・・」

・・・私のせいだ。


 「じゃあねステラ」

フラニーさんはノックスさんと正反対でとっても元気だ。

活力が漲ってるって感じね。

 「私の所感ではあるけど・・・ニルスはたぶん奥手よ。ミランダにも手を出してなかったみたいだし」

「ふふ、そうでしょうね」

「でも・・・一度あなたの味を覚えたら変わると思う」

私の味か・・・。


 「おいしいって言ってもらえるようにします。では、ありがとうございました」

「うん、戦場が終わったらまた来てね。石鹸・・・無くなっちゃうだろうし」

「あはは・・・はい」

いい人だったな・・・また来る時は服を仕立ててもらおう。

そう・・・また・・・。


 

 テーゼに戻ってきた。

二十日ぶり・・・当たり前だけど、家の中に大きく変わったところは無いみたいだ。


 「さて、帰ってきたはいいけど・・・」

まだ昼間だ。

 ニルスたちは訓練場かな?

気配が無い・・・。


 

 みんなの部屋を周ってみたけど誰もいなかった。

「おかえり」が欲しかったけど、戻ってきた時間が良くなかったわね・・・。


 「おお、ステラ様。お戻りになられたのですね。おかえりなさいませ」

談話室に戻った時、ヴィクターが入ってきた。

まさに今帰ってきたって感じだ。


 「ただいまヴィクター、あなたは訓練場じゃなかったのね」

「たまには休みを貰い、庭の手入れをしなければなりません。子どもたちが楽しみにしている石鹸も、シロ殿と交代で見ております」

「じゃあ今日はお休みなんだね。どこ行って・・・まさか娼館とか?」

「あるはずがないでしょう・・・。紅茶が切れていたので買ってきただけです」

冗談なのに・・・。

真面目に答えないでほしかったな。


 「ステラ様、ニルス殿とアリシア殿ですが・・・」

ヴィクターは前触れもなく話そうとしてきた。

 「待ちなさい。自分で聞く」

「ふふ・・・そうですか。では儂からは何も言いません」

ニコニコしちゃって。

・・・いい方向に動きはあったみたいね。



 「あなたと二人きりになるのは、スナフを出てから少なくなったわね」

「そうですね」

ヴィクターが紅茶を淹れてくれた。

色々やりたかったけど、少しお話をしてからでもいい。


 「ニルス殿たちとの出逢いから、ステラ様はよく笑っていらっしゃいますね。儂と話す時以上です」

「そうかもしれないわね。座ってちょうだい」

「問答ですか?」

「いえ、お礼を言いたいの。ヴィクター、ありがとう」

この戦いに来てくれたのがあなたで良かった。

今までの騎士の中で一番柔らかい。


 「・・・ステラ様、私はあなたの考えを尊重しています。なので・・・あまり口を出したくはないのですが・・・」

ヴィクターが優しい顔のまま私の目を見つめた。

・・・真面目な話ってことかな。


 「口を出したいことがあるの?」

「戦士全員の治癒と支援・・・本気ですか?」

「冗談でした・・・なんて言うと思ってる?」

ヴィクターからこの話をしてくるとは思わなかったな。


 「・・・やめろって言いたいの?」

「はい。仲間を愛しているのならやめていただきたい」

「その言い方嫌いよ。ニルス、ミランダ、シロ、あなたも・・・愛しているに決まってるじゃない」

「ならば考え直していただきたい。それ以外の作戦をなんとか考えましょう。・・・儂はあなたの幸せも守りたいのです」

皺の奥にある目が潤んでいた。

 気持ちはちゃんと伝わってるよ。

・・・でもねヴィクター、私だってニルスの幸せを守りたいの。


 「・・・ニルスは、目に見える人はみんな助けてあげたいんだって」

「わかっております・・・だからあの青年は悩みが多い」

知ってるんじゃない・・・。

 「私たち仲間・・・共に戦う人たち・・・千人よ?ちょっと荷が重いんじゃないかしら」

「・・・一人では無理でしょうね」

「だから・・・戦士たちは私が持つ。愛しているからそうしたい・・・でも、そのあとはよろしくね。・・・私は考えを変えるつもりはありません」

「・・・承知しました。騎士の役目ですから」

わかってるよヴィクター、だからそんな悲しい顔しないでよ・・・。


 「もうこの話はいたしません。お許しください」

「怒ってないよ。それよりこれを見て、私が作ったの」

私はできあがったマントをテーブルに広げた。

沈んだ空気は入れ換えないとね。


 「ほう・・・これが太陽蜘蛛の・・・ニルス殿に似合うでしょうね」

「でしょ?炎、氷、風、色々試したけどこの状態よ」

「この薄さで鉄壁の守り・・・素晴らしい外套です」

「刺突と打撃には弱いけどね・・・」

「心配いりませんよ。ニルス殿はそう簡単に貰いませんから」

話してたら早く見せたくなってきた。

そうだ・・・どうやって渡そう・・・。


 「ねえヴィクター、やることを増やして悪いんだけど・・・」

思い付いたっていうより、そうしたいって心が命じた。

 「仰ってください」

「今夜は・・・ニルスと二人きりにしてほしいな」

「容易いことです。ではこれから訓練場に行き、シロ殿とミランダ殿にも伝えましょう」

ヴィクターが立ち上がった。

なによ、嬉しそうな顔しちゃって・・・。


 「ありがとうヴィクター」

もういないけどね・・・。


 宵の月がもうすぐ終わる。

あとは明けの月、紬の月、種の月、そして殖の月に戦場・・・。

もう半分・・・半年なんてあっという間だ。


 「そうだ、シーツを取り換えないと」

色々準備をしないといけない。

 戻ったあなたは、きっとお腹を空かせてる。

夕食の支度をして・・・体を洗っておいて・・・。


 

 「ミランダの匂いがしない・・・」

寝室のベッドの香りを確かめた。

ここ何日かは一人で寝ていたみたいで、シーツにはニルスの気配しか無い。


 「もう大丈夫ってことなのかな?」

それなら・・・なおさらいい。

ヴィクターに頼んでおいてよかった。


 ・・・もうちょっとだけあなたの香りに包まれていよう。


 色付く朝・・・幸福を呼ぶような香りとして作ったもの。

それを使ったニルスはとても魅力的になる。

 あなたの汗とか・・・そういうのが混ざって素敵な香りに変わるんだろうね。

ああ・・・直接嗅ぎたい・・・。


 「あれ・・・」

私の目から流れた雫がシーツを濡らした。

 ・・・なんでだろう。

幸せなのに・・・悲しくないのに・・・ちょっとだけ辛い。



 涙が全然止まらない・・・。

落ちる一粒一粒が「このままじゃダメだよ」って言っているように感じる。


 いいよ・・・話だけは聞くから、夕方までには枯れてね。

・・・どうせシーツは取り換えるんだから。



 「やっと枯れてくれたわね・・・」

夕方前、思いはすべて流れ切った。

気持ちも落ち着いたし、おいしい夕食を作って待っていよう。



 夕方の鐘が鳴った。

やっぱり晩鐘が鳴ってからかな・・・。


 「ステラ!どこにいるの!」

扉が開いた音と共に、あなたの愛を感じた。

そんなに離れてないのに、ずっと恋しかった声・・・。


 「ニルス、こっちだよ。早く来て」

「談話室か。・・・開けていい?」

なんだか恥ずかしくて出迎えられない・・・。

だから、あなたから来てほしい。



 「ふふ、おかえりステラ」

扉が開かれた。

 「あ・・・ただいまニルス・・・」

姿を見た瞬間に、私の体が勝手に動いた。

恥ずかしかったはずなんだけどな・・・。


 「ニルス・・・もっとぎゅっとして」

「ステラ、ずっと会いたかったよ・・・」

「本当に・・・ん・・・」

ニルスの唇が私の声を止めた。

・・・本当だ、ずっと会いたいって思ってくれてたんだね。


 時が止まったみたい・・・。

周りの音が消えて二人だけの世界ができた。


 ずっと願っていた瞬間・・・。

目は閉じているけど、たくさんの色が見えて・・・それが私の胸を焦がていく。



 「・・・まだ夜には早いよ。お腹も減ってるんじゃない?」

「あ、ああ・・・そうだね。一緒に食べよう」

二人で食堂に入った。

そういえば、ヴィクターはみんなになんて伝えたのかな?


 「ミランダたちは?一緒に帰ってくるものだと思ったけど」

「なんか・・・みんな今日はアリシアの所に泊まるって言ってたんだ。ステラが帰ってきたっていうのに・・・」

「二人きりは嫌だった?」

「そういうわけじゃない。・・・嬉しいよ」

気が利く人たち・・・だから大好きだ。 


 「ありがとう。・・・ねえニルス、約束・・・憶えてる?」

本当は楽しくお喋りをしながら夕食にしたかった。

 「アリシアには勝てた?」

でもまずはどうなっているのかを聞かないとね。

ニルスの心に迷いがあれば、今夜は寄り添うだけにしよう。


 「勝ったよ。そしてもう・・・大丈夫」

ニルスは穏やかに笑った。

・・・それだけじゃわからないよ。

 「詳しく教えてほしいな」

「ん・・・ちゃんと・・・母さんだったよ。もう揺らがない」

ニルスがはにかんでいる。

恥ずかしいのか・・・まあいい。


 ニルスから感じていた迷いは消えているから、母親を疑うことはもう無いんだろう。


 「アリシアはステラに感謝していたよ」

「ふーん・・・私はちょっと叱っただけだよ」

「それも含めてだと思う」

あのおバカさんに感謝されてもな・・・。

 

 「そうだ・・・ルージュはお兄ちゃんと再会できたの?」

母親とどうなったかよりも、こっちの方が重要だ。

 「まだ・・・。戦いが終わったら会いに行くことにしたんだ。なにも背負ってない状態がいい」

「それでいいの?」

「うん、誰も戦う必要が無くなったら・・・そうしたいんだ」

そうか・・・ルージュは特別なのね。

・・・これだけは仕方ないな。



 私はニルスのためだけに作った夕食を並べた。

ここからはずっと幸せな時間にしたい。


 「外では雪が降ってたんだ」

「キビナは毎日大雪だったよ。でもみんな元気なの」

二人きりの夕食だけど、たくさんお話ができて楽しい。

 「市場の有名人だったって聞いたよ」

「え・・・ああ、余りものを全部買い占めてたからね」

「救世主だって・・・ふふ、また来ないかなーって言ってたよ」

「あはは、また行くけどね」

もっと・・・あなたの声が聞きたい。


 「私がいない間、おうちのことは大丈夫だった?」

「ほとんどオレとシロだね。オレが炊事、シロが掃除と洗濯」

「ええと・・・ミランダは?」

「・・・家主だから」

・・・そうなんだ。

 「ヴィクターは?」

「本当は洗濯をやってもらうはずだったんだけど・・・」

「だけど?」

「ミランダの下着を戦いの時と同じくらい真剣な目で見てたんだ。そしたらミランダが、おじいちゃんは庭以外何もしないでって」

昼間の真面目な感じと差がありすぎる。

困ったおじいちゃん・・・。


 ああ・・・なんかいいな。

何気ない会話なのに、心が触れ合おうと近付いている気がする。

だから・・・今日は特別な夜になる・・・。


 「そうだ、今日はミランダがいないから私が体を洗ってあげる」

「え・・・」

「恥ずかしがらなくて大丈夫よ。私は目隠しでもできるから」

そうしたい、ちゃんと綺麗にしないとね・・・。



 ニルスの体を洗い終わった。


 「どうだったニルス、私も洗い屋さんになれる?」

「なれるよ。見られないのは助かる」

せっかく広いお風呂だから、本当は一緒に裸になって入りたかった。

まあ・・・それはその内ね。



 「じゃあ・・・私も洗い終わったら寝室に行くから待っててね」

私はニルスと入れ替わりで浴室に入った。


 「ゆっくりでいいからね」

「うん」

さすがに食事前に香りを付けるわけにはいかないと思って、体を洗うのはやめておいた。

 ニルスへの効き目はどのくらいなのかな?

・・・求めてくれるのかな?



 「お待たせ」

ニルスの待つ寝室に入った。

でも、まだベッドには入らない。

先に・・・。


 「まずは・・・ご注文いただいていた旅人の外套でございます。十七歳・・・ちょっと過ぎちゃったけどね」

このために離れてたんだから、今渡すしかないよね。


 「わあ・・・」

ニルスの顔がぱっと明るくなった。

そんなに楽しみにしてくれてたんだ・・・嬉しいな。


 「これがあの糸・・・触ったことない質感・・・」

「羽織ってみようよ」

ニルスの肩にマントをかけてあげた。

うーん・・・やっぱり似合うな。

 「・・・いい感じだ。それにステラが包んでくれてるみたいで・・・なんかドキドキする」

ニルスの顔が赤くなっている。

つまり・・・効果が出てきた。


 誘惑の香りは本能に呼びかけるけど、理性が強ければ意味が無い。

だからそれを少しずつ剥がしてあげないとダメだ。


 「当たり前だよ。私の想い・・・ちゃんと込めたんだから。恥ずかしがらないでもっとドキドキして」

ニルスの胸を撫でた。

・・・体温が高い。

 「なんだろう・・・体が火照ってる感じがする・・・」

「大変・・・熱でもあるのかしら。お試しはこれくらいにして、早くベッドに入りましょ」

「え・・・あ・・・うん」

もう少しね・・・。


 

 二人でベッドに入った。

けど、ニルスは私ではなく壁の方を向いている。

 ・・・強情ね、覆いかぶさってきてもいいのに。

あ・・・明るいからかな?


 「もう暗くしてもいい?」

「うん・・・」

私たちは暗闇に包まれた。

 あ・・・雨戸を閉め忘れたかも。

でもいいか。今夜は月明かりが無い、雪が降っているから・・・。


 「静かだね・・・」

「誰もいないから・・・」

「私がいるよ」

「二人きりだ・・・」

気配も無く静かに降る雪はよく積もる。

 感情も同じだと思う。

現に私は、降り積もった自分の気持ちに埋もれてしまいそうだ。


 さて・・・もう素直なニルスになったかな?


 「ニルス・・・こっちを向いてほしいな」

「・・・」

ニルスは振り向いたと同時に抱きしめてくれた。

 「そう・・・ぎゅーっとして」

「苦しく・・・ない?」

とっても優しい抱擁・・・苦しいわけがない。


 「ニルス・・・もっと・・・近付いて」

「もうくっついてる・・・」

「それでも・・・もっと・・・」

「どうしたら・・・いいの?」

吐息交じりの声だ。

ニルスの体は、さっきよりも熱くなっている・・・。


 「もっと近付く方法があるの・・・」

「もっと・・・」

「うん・・・知ってる?」

「なんとなく・・・わかる。繋がるってこと・・・」

もう言葉はそんなにいらない。

あとは唇が触れ合えばいいだけだ・・・。


 「ステラ・・・」

「大丈夫・・・あなたの思うようにして・・・」

「オレの・・・」

「私も・・・そうするから・・・」

情熱で温度の上がった唇が重なった。


 夜はまだ長い。

あなたが私の味を覚えるまで繋がっていよう・・・。

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