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ダンジョンのある日常~とあるテイマーかく戦えり~  作者: 那田野狐
ダンジョンのある日常

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第43話 夜襲!

「さて、これからのミッションだが、小学校砦に魔法の一発でも叩き込んで、相手の出足を挫くこと。相手が夜襲を計画していたのならこれを妨害すること。この二点。ま、こちらの夜襲が成功すれば向こうがこちらを夜襲することはないだろう」


 まあ、こちらが夜襲したら、向こうは次の夜襲を警戒して攻め来ないという予想は間違ってないだろう。

 厄介があるとすれば、お互いの夜襲部隊による不意の遭遇戦だろう。

 こちらは遭遇戦も視野に入れているのが心強い。


「時間合わせ。20:00まで5・4・3・2・1・0出るぞ」


 田中さんの合図と共に第三砦だった場所から小学校のある方へと歩き出す10人とテイムモンスターの6体。

 テイムモンスターは疾風、チビ、ペンタントちゃん。それとJ隊の人の一人が使役する三頭のジャーマンシェパードっぽい犬。

 テイムモンスターを扇状に展開させて、少し駆け足で小学校に向かう。


『α。敵確認出来ず』


『β。敵確認出来ず』


『γ。警備中らしいゴブリンの小隊を確認。どうしましょう?』


「γ。現状維持」


『γ。了解』


「通信状態は良好ですね?」


 暗に自分は要らなかったという意味を込めて聞く。


「今は・・・な。だが、だからといって準備を怠っていいという事もないぞ?」


 確かに田中さんのいう通りである。すみませんと小さな声で謝っておく。


「先に進みましょう」


 促されるように歩き出す。やがて、小学校砦を照らす松明が見えて来る。


「砦を落とされて引きこもりましたか・・・」


 4眼式の軍用暗視ゴーグルで小学校砦を覗いていた田中さんがぼそりと呟く。

 ちなみに自分も双眼鏡タイプの暗視ゴーグルを装着しているので目の前の光景は見えている。


「では、早速行動を起こしましょう」


 田中さんが合図を送る。ダンジョンの中ではファイヤーボールは爆発するのに火薬は爆発しないんだよね。


「攻撃は二分後。四発打ち込め・・・目標は定めなくていい」


 田中さんから指示が伝達される。


 二分後、小学校砦に向かって四発の火球が打ち込まれる。

 ドンドンと破裂音が鳴り響き、砦が騒がしくなる。


「よし。撤収」


 戦果を確認する事なく撤収の命令を出す田中さん。

 攻撃したということが重要で、被害を与える事が目的ではないということか・・・


「グギャ!」


 小学校砦から、皮鎧を着たゴブリンよりも一回り体格の良いホブゴブリンが金棒を片手に飛び降りてくる。

 続いてショートソードを持ったソードゴブリンが四匹飛び降りてくる。


「クロスボウで迎撃!」


 背負っていたクロスボウを構えて射撃を開始するJ隊の人たち。


「ギャッ!」


 降りて来たときに崩れた態勢を立て直すことなくゴブリンたちが悲鳴を上げる。


「グッ!」


 ホブゴブリンが飛んでくる矢を腕で受ける。根性あるな!


「後続は?」


「ありません!」


「よし。あのホブゴブリンのパーティー仕留めるぞ!」


「疾風!チビ!ペンタントちゃん!ゴブリン一匹仕留めるよ!」


 一番外側にいる一匹のゴブリンを指差し三人に指示を飛ばす。


「にゃー!」


 チビが持っていた盾をゴブリンの腹に叩き込む。


「わんぉ!」


 疾風が槍でくの字になったゴブリンの頭を叩く。


「ダークサンダー!」


 ペンタントちゃんの指先から黒い閃光が走る。

 ゴブリンはビクンと体を震わせると魔石を落として塵に還る。


「よし。撤収!」


 田中さんの命令に従って小学校砦から離れる。


「あのホブゴブリン・・・厄介そうです」


「ただの脳筋の可能性もありますが、まあ基本10匹程度のゴブリンを指揮するような個体ですので今度会うときは厄介でしょうね」


 田中さんは苦笑いをする。なんと言うか田中さん何時も苦笑いしている・・・多分いろいろと苦労しているのだろうな。


「あ、これゴブリンの魔石です。確かドロップは頭割りでしたよね」


 先ほど拾ったゴブリンの魔石を渡す。


「ああ、そうだね頭割りにするのは大事だ」


 田中さんの苦笑いが笑顔に変わる。うん。笑顔の方がいいよね。

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