第184話 綺麗なキャン玉
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「あんざい先生。居酒屋がやりたいです!」
異世界での正月も終わり一気に通常モードになった時セラタが土下座をしてまで頼み込んで来た。
「誰があんざい先生か」
取りあえず突っ込む。
「正月の居酒屋が評判良かったの?」
「酒の提供が良かったです」
どうやら酔いどれ麦から作ったビールとウィスキーと焼酎の三種類が意外と受けたようだ。
まぁこちらの酒は甘酒のようなものが主流だからこれらの酒が新鮮だったのだろうけどね。
因みに酔いどれ麦の麦藁に水を通すとビールに、麦藁を煮ると焼酎に、酔いどれ麦の実を粉にして水に溶かして寝かすとウィスキーになるようだ。まぁ、酔いどれ麦の原産地ですら水を通す飲み方しかしていないようでウィスキーも焼酎も出回っていないようだけどね・・・
「週末にのみ提供するならやっていいよ。ただし酔いどれ麦から生産された分だけ、日本の酒は提供しない」
「量が少なすぎませんか?」
「人手があれば増えるでしょ」
「まぁ、そうですけど・・・そうだ、東京に行く機会はありませんか?」
「東京?」
「武蔵野ダンジョンに莫逆の友がいるのです」
「莫逆の友?また古い言い方だね」
「栗鼠人で忍者の風魔小太郎です」
待て待て待て。お前、隆慶一郎版だったのか?
「お館さまがテイムしたら、こっちに引っ張ってこれる」
誰がお館さまだ。
「東京・・・行けたら行くよ」
こう言ったが、セラタの希望はあっさりと成就することになる。
「政府からの指名依頼ですか?」
開拓者ギルドの受付からもたらされた言葉。
「Qドラ権様は上級の薬師レベルを取得してましたよね?」
受付は確認するように聞いてくる。まぁ、テイマーの次にくるぐらいは育てている職業だね。
「いつでも個人事業主としてやって行けるレベルではあります」
薬師としての資格も政府から免許を貰っている。そうした方がギルドでもポーションの買い取り額が上がるからね。
「実は皇居ダンジョンに薬師として潜って貰いたいのです」
「国占ダンジョン、ですか?」
国占というのは国というか宮内庁が占有しているダンジョンで、宮内庁が許可しないと一般人は立ち入る事が出来ないダンジョンだ。
噂によると宮内庁職員とやんごとなき人しか入れない上級ダンジョン。
動物型モンスターが中心でボスはトクガワ。
何でも15種類のモンスターの一部が混ざったキメラらしい。そのうち狸のイエヤス、犬のツナヨシ、象のヨシムネ、天狗のヨシノブが主体となったキメラは当たりのドロップが期待出来るらしい。
「えぇ。国占です」
まぁ場所が場所だけにホイホイと一般人は入れないよね。
「なぜ薬師なんです?」
「トクガワがドロップする睾丸で精力剤をドロップしたその場で作って欲しいのです」
一瞬、女子高校生になんてモノをと思ったれけど、薬師としての腕を見込んで、このような仕事を依頼してくるのだと思うと開拓者ギルドって凄いなと思う。
「皇居ダンジョンのマップと出現モンスターのデータをメールでください」
「参加ですね?送っておきます」
「日にちの期限は?」
「出来れば1月中に・・・」
意外と長期である。
これは数があればあるほど喜ばれるパターンかな?
「ダンジョン牡蠣、歩く草、魔獣スッポン、トクガワの睾丸これらを粉にして魔力水で溶いて、これを濾したモノを瓶詰め。ポーションにすると出来る・・・か」
開拓者ギルドからトクガワの睾丸を使った精力剤のレシピが来た。うん。他の材料を使った精力剤のレシピと変わらないね。
取りあえずダンジョン牡蠣、歩く草、魔獣スッポンの粉になったモノを買い込む。あとはスリコギとすり鉢は新しいものを用意する。モンスターのモノだとはいえキャン玉だもんね。まぁ直接採取するモノではなくドロップアイテムだから汚いとか綺麗とか関係ないか。
綺麗なキャン玉・・・ツボに入った。




