第182話 太陽の復活祭
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「取りあえず4階層までは増やす。1階層は海がいいんじゃない?鯨?あれを泳がせてもいいわね」
ルナ様は豪快な提案をするが、鯨が泳ぐって2階層ぶち抜きでは?
「海はいいわよ。生命サイクルが早くて」
まぁ海自体、ダンジョンで再現出来るなら生命サイクルは莫大なものになるだろうね。
「海水転移ぐらいはサービスするよ」
サン様が笑う。海が出来るとなると、以前知り合ったタコ娘のオクト・バスに監視員として声を掛けてもいいかもしれない。
「ではお二方お願いします」
「いいよ。ほい」
「次は僕だね。ほい」
えらくお気楽な言葉だった。まぁいいけど・・・
一度異次元の扉に戻ってマイダンジョンに入る。第3階層への階段は第2階層への階段の隣に併設されていたので即第3階層に・・・
「うわっ海だよ・・・」
白い砂浜。青い空。南国のそれである。
「さて」
コンソールパネルを呼び出す。
岩場とか難破船とかある。つまり、この階層には砂浜と海水しかないのだ。
「まるで水槽だね。ええっと、適当に岩場を設置して、海岸線にも岩場。難破船は・・・せっかくだから二隻。アマモの生えた岩もあるのか・・・え?ライブロックもあるのか?」
驚きである。ライブロックというのは海水水槽などによく入っている珊瑚の塊のようなもので、その中には蟹やゴカイなどの生物がいることが多い。つまり、そのような生物を取ってくる必要が無いということだ。まぁ、海だからある程度かもしれないが、まぁ、サン様が転移させた海水にも魚とかはいる訳で・・・
これも、じゃかぼこと入れていく。
あとはオクト・バスの意見を参考にしよう。
第4階層は最初の第1階層と同じでだだっ広い平原だった。広い。広過ぎ。
ただ、海と同じく草は・・・雑草だが、コンソールパネルにあった。
種を巻く必要が無いのは有り難い。
見るまに平原は草原になった。山羊を・・・いや牧場として運用するのもいいかも・・・
取りあえず設定だけして異世界に入る。
太陽の復活祭。ここで自分たちは強引な設定を王都にばらまいた。
太陽が死んで復活するまでの間、あの世から死んだ人たちが帰って来て街を徘徊するとした。
そして子供たちに「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」と徘徊させる。冒険者ギルドの見習いたちにはお化けのカッコをさせて徘徊させる。
一方、大人たちにはお菓子の詰め合わせを渡し、「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」と言った子供に渡すようにお願いする。
積極的に手伝ってくれる大人には「ぽんぽこタヌキ亭」で使える割引券をサービスだ。
そして日没から一時間後・・・オーガのコスプレをしたユウイチローや紅桃が金棒片手に「悪い子はいねぇか!」と言って子供たちを追い回す。
ギャン泣きする子供たち。ウケる大人たち。
厳かだった太陽の復活祭が「ぽんぽこタヌキ亭」を中心に賑やかに過ぎていく。
「ぽんぽこタヌキ亭」では、おでんが振る舞われていた。熱燗一本とおでんダネが三本で銀貨三枚。結構売れている。
「透明で辛口?」
男はしみじみとお猪口に注がれた酒を飲む。普段は果実酒やどぶろくを飲んでいるので、透明で辛口な酒というのは珍しかった。
「お、判ってるね!」
一升瓶を片手にオーガのコスプレをしたユウイチローが男の隣にドカッと座る。
「まぁ飲め」
懐からグラスを取り出し男の前に出すと、とくとくと酒をつぐ。
「辛いぞ?」
そう言って男に勧める。
「オーガキラーって酒だ。気に入ったら今度から頼んでくれ」
意味あり囁く。
「こりゃ旨い」
男は注がれた一杯を飲むと叫んだ。
ユウイチローは、辛口が好きそうな人間を見定めては宣伝するのであった。
「普段は売らないけどね」
宣伝しているユウイチローには悪いけど「ぽんぽこタヌキ亭」は居酒屋じゃないので・・・




