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捨てステータス【幸運値】が高いだけのザコとして追放された剣士、レアイベントをすべて発生させて無双する  作者: 森田季節


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5/30

5 トレーニングでBランクに

 高負荷トレーニングの名前は伊達じゃなかった。


 参加者は山中に連れてこられて、そこで数日間のキャンプ生活を強いられる。


 食事はそのへんに出没するシカやイノシシを自分たちで狩って行う。幸い、塩は運営側が用意してくれている。



 その山中で、Bランクの剣士やほかの職業の冒険者からガチのスパルタ指導を受ける。


 今回の監督官のトップは稀少なAランク冒険者だった。


「君たちはよく危険も顧みず、このトレーニングに参加した。ワシも気を抜かずに全力で指導するとしよう」



 俺たちの前に立っているのは、Aランク剣士のバンティス。

 見た目は白髪で中高年だが、その腕は何もなまっていない。

 隣国の州の一つに独立国家を作った上級魔族を斬って捨て、反乱を鎮めた実績もある。


 元の「ゲーレジェ」内ですでに存在しているネームドキャラの一人である。



 現在ではもっぱら指導者側に回っているという話だったが、こういうところに顔を出していたのか。



「まずは30分間、参加者同士で稽古をやってくれ。休憩するのも、座り込むのも禁止だ」



 悲鳴が何人かから上がった。



 30分、剣を振り続けるなんて体力がもつとは思えない。


「心配いらん。さすがに肉を切れる剣だと死んでしまうからな。木刀をこちらで用意してある。それで30分戦い続けてくれ」



 肉が切れないにしたって、どのみち大変だ。疲れすぎて死ぬんじゃないか……。

 30分ぶっ通しで魔物と戦い続けるなんてことは経験したことはないぞ。






 その30分は地獄だった。

【幸運値】が高ければ苦痛を感じないなんてわけもなく、俺はボロボロになった。


 全身アザだらけだ。

 体の至る所が紫や青になっていると思う……。




 わずかな休憩時間の後は筋トレをやらされた。

 それから、食事用の野生動物の狩りをやらされた。何も獲れなかった場合、断食状態で翌日のトレーニングを迎えることになる。それだけは避けたいので、参加者みんなで必死にイノシシを捕まえた。




「あぁ……もうダメだ……」

 夜の食事をしたら、テントの中で泥のように眠った。寝たというより気絶したというほうが近い。



 冒険者を3年やってきたが、間違いなくこれまでで一番きつい。

 真面目にやってるつもりではあったが、まだまだ全力とは言えなかったのか……?







 2日目は、Aランク冒険者のバンティスが自分の鎧の腹の部分をばんばん叩いて言った。

 それと、ゲーム中に呼び捨てで呼んでいたので、心の中では「バンティス」と敬称略でいかせてもらう。敬意を払ってないわけではない。



「一人ずつ、木刀を持ってワシを全力で倒しに来い。最初の3分はこっちは手を出さん。それまでに一撃を加えられたらそちらの勝ちだ」



 シンプルな内容だが、はっきり言って緊張する。


 この世界ではCランク冒険者で問題なくメシが食えて、Bランク冒険者は達人、Aランク冒険者は伝説、その上のSランクは設定はあるが実在してるかよくわからないという次元だ。


 つまりAランク冒険者と手合わせする時点で奇跡に近い。



 5人目が俺の番だった。



 それまでの奴は全員、3分間、バンティスにかすらせることもできず、3分経った直後にバンティスが軽く振った剣で吹き飛ばされていた。


「君の名前はアルクか。さあ、全力でかかって来い」

「よろしくお願いします!」


 全力も何も、Aランク冒険者相手に手加減ができるほどの技術なんてEランク冒険者にはない。

 当たればラッキーってところだ。




 で、そのラッキーが本当に起きた。



 俺はほとんど闇雲に剣を振るった。



 突然、手が妙に軽くなった気がした。



 木刀が手からすっぽ抜けていた。



 それがバンティスのトレーニング用の薄い鎧に直撃していた。



「ぶ、ぶふっ!」



 バンティスが声を上げた。


 もしや俺はとんでもないことをしてしまったのか……? 偶然とはいえ、バンティスに一撃を加えてしまった……。

 反則としてボコボコにされたりしないよな……? そんなことをされて、冗談抜きで死ぬぞ……。



 だが――


 すぐに大きな声でバンティスが笑いだした。


「そうか、そうか! たしかに剣を投げてはいけないとは言ってなかったな! 面白い男だ。冒険者ならば極限状態も才覚で乗り切らねばならんからな!」


「あっ……いえ、今のはたんに手が滑っただけで……」


 握り慣れてない木刀だから、手から抜けてしまったのだ。

 それにしても無様な話だ。戦場で武器を落としたら死ぬかもしれないのだから、冒険者失格と言われてもしょうがない。



 だが、バンティスは俺を叱るようなことは何も言わなかった。


「与えられたルールの中で君は勝った。何も問題はない。名前を覚えておこう」


「あ、ありがとうございます!」


 Aランク冒険者に名前を覚えられる――下っ端の冒険者としてこれほど光栄なことはない。


 事実、俺を露骨にうらやんでる連中が何人もいた。


「あれ、完全な偶然だよな。すっぽ抜けただけだろ……」

「俺もバンティスさんに名前覚えてもらいたかったぜ……」


 うらやむのも当然だ。これは実力とは言い難いのだから。



 それを聞いていたバンティスがたしなめる顔になった。


「偶然でもよいだろう? それに、偶然や運が一切介在しない戦闘などこの世にはない。あまりにも不運であれば、ワシもほかのAランク冒険者たちもどこかで落命していたはずだ」


 不平を言っていた連中が恥ずかしそうに黙る。


 まったくその言葉が正論だったからだ。


 ところで、これが運だとすると、やっぱり【幸運値】の影響ということなんだろうか?





◇◆◇◆◇





 そのあと、俺はバンティスに直々に稽古をつけてもらった。

 変な発想をする奴と思われた影響だ。



 稽古の最中には運など関係ない。そこで高めるのは運じゃなくて、実力だ。俺はとにかく全力でやった。



 激しい打ち合いの中でも、バンティスは世間話のように会話をしてくる。



「しばらく高負荷トレーニングの監督官をやることになっておってな。アルク、よかったら、次も来るといい」

「は、はいっ!」



 まさかバンティスのほうから指名されるとは思わなかった。これは運だけでは説明がつかないな。


 なにせステータス上は俺は平凡どころか平凡未満の剣士なのだ。


「あの……俺の水準で、そんなに見るようなところがありますか……?」

「う~む、まあ、勘だな。今の君はたいしたことないが、一気に伸びる可能性がある」








 そして、合計3回、俺は高負荷トレーニングを受講した。

 バンティスに徹底して鍛えられた。

 動きだけでなく、剣の技もいくつも教えられた。



 で、3回目のトレーニングが終わった後のステータスがこれだ。




=====

アルク レベル19 冒険者ランクB

HP 107/107

MP 0/0

攻撃 118

防御 136

敏捷 131

知力  47

精神  19

容姿  35

幸運値999


スキル

超刺突・薙ぎ払い・這い上り斬り・みね殴り・一刀両断

=====



 レベルの変化は16から19とたった3上がっただけなのに――

 ランクがEからBになっている。ステータスもBランク相当になっている。


次回は昼12時台頃を予定しています。しばらく昼と夜の1日2回更新を続ける予定です。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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