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捨てステータス【幸運値】が高いだけのザコとして追放された剣士、レアイベントをすべて発生させて無双する  作者: 森田季節


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28/30

28 命中率70%? じゃあ当たるわけないだろ

 観客の拍手が周囲から起こる。

 俺は全方位に一度ずつ礼をする。王族や貴族にあまり失礼なことはできない。



 そして最後に俺が入って来た入り口のあたりに立っていたポポロに顔を向ける。



 俺の勝利を一番待ち望んでくれていた相手だ。




「ちゃんと勝ったぞ。祈っててくれてありがとうな」



「私はアルクさんに仕える身ですので」



 またポポロはクールな無表情に戻っていた。



 ここで泣いて抱き着いてきてくれたりしないんだな。そんなことされたらマジで惚れてしまってややこしいことになるけど。それで相手を好きにならないんだったら、それはそれでおかしいと思うぞ。





「さっき、熱心に祈っててくれてたの、見てるからな」

「メイドとして当然の責務を果たしただけです」



 少しポポロは得意そうだった。



「アルクさん、実力で勝ち上がりましたね。素晴らしかったですよ」

「よかった。運以外何も持ってない奴って思われたらショックだからな」

「『運も実力のうち』という言葉があるようですから、大丈夫ですよ。あと、アルクさんが運だと思っても私は実力として評価します」




 こう言ってもらえると、やっぱりうれしいもんだな。




「控え室に戻ってゆっくり休む。もう一回ぐらい呼ばれる確率が高いからな」


 宮廷御前試合に一人何試合が割り当てられるかは取り組みを決められる王次第だ。

 なので、不運な奴は時間の都合で一試合も出られないことすらあるらしい。まあ、通常一試合か二試合といったところで、勝者同士をぶつけるということをやりがちだとか。



 なので、勝者になった俺はほかの勝者と戦う可能性が高い。








◇◆◇◆◇








 俺の読みは当たった。

 次の試合は剣士ではなくて魔法使いの男だった。



「Bランク魔法使いのカウトンです。爆魔砲で吹き飛ばさせてもらいますよ」



 自信ありげにカウトンが笑った。




 観客席から「これじゃ、勝負にならないな」という声がした。

 別にその貴族が見る目がないわけじゃない。



 宮廷御前試合に魔法使いが呼ばれることは少ない。

 接近しないと戦えない相手に魔法で攻撃すると、あっさり勝てることが多いからだ。




 つまり、下馬評でカウトンが勝つだろうと思われるのは当たり前なのだ。







 もっとも、俺はこの試合、全然負ける気がしなかった。



 爆魔砲は威力の強い攻撃魔法だが――「ゲーレジェ」内の命中率は70%。




 これが野球の打率なら驚異的な数字だけど、なぜかゲームだと「全然当たらない」とか「外したら終わりの時に使うな」と言われる。70%というのはそういう数字だ。




 その70%で、俺の【幸運値】を超えて当てられるとは思えなかった。




 ドラが鳴る。


 試合開始とともに俺は突っ込む。



 カウトンが爆魔砲の詠唱を行う。さほど長い詠唱ではない。



 ――ヒュンッ!



 ほぼ火球だろうというようなものが俺の横をかすめた。




「ちっ! 外したか!」



 カウトンが嫌そうな顔をした。



「残念だったな。1発目はハズレだ」




「くっ! ならば、もう一度!」



 再び、カウトンがあわてて詠唱を始める。2発目を当てればそれでいいという考えだろう。







 その時、俺の前にマヒア女神様が立っているのが見えた。

 おそらく、俺にしか見えない姿だろう。




「おめでとうございます」



 えっ? 何がおめでとうなんですか? 思いっきり戦闘中なんですけど……。




「あなたもわかっているでしょう? この程度の確率のものが当たるわけがないだろうって。そうですよ。当たるわけがありません」



 ふふふっと女神様が笑う。




「そもそも二度連続で外したら勝てないような戦い方なんて愚かすぎます。それでは戦闘を繰り返したら、必ずそのうち敗北してしまいますよ。そういう無理を続けた報いが相手には訪れるだけです」




 あっ、そうだ、言い忘れてた。

 ポポロが入城できた件、ありがとうございました。



「そうやって、お礼を言えるのは立派ですね。傲慢な人間からは運は逃げていきますから。傲慢な人はついつい運も自分の実力だと考えがちです。運で勝った要素が多いのに努力した結果だと信じ込む。すると、運は去るんです。でも、アルクさんは心配なさそうですね」





 そこで女神様は消えた。







 ちょうど火球が目の前に迫っていた。





 逆に言えば、横にそれるのはその時点でわかった。




 ――ヒュンッ!




 俺の横をかすめるだけで終わった。観客席の真下の壁にぶつかって、観客からちょっとした悲鳴が上がる。




 2度連続で失敗する確率――9%のほうを引いたな。





 二度も外せば、もう俺はカウトンの眼前に立つことができている。




「くそっ! 幸運な奴め!」

「そのとおりだよ! で、運を味方にできなかったお前の負けだ」




 連続して2度外すと負ける奴と戦えば、そりゃどこかで負けることになるさ。




 木刀に力を加えずに、軽くカウトンの頭を叩いた。

 もちろんケガなんて起きない威力だ。



「ま、負けました……」


 カウトンがドラに鳴る前に負けを認めた。



 すぐにドラが鳴った。剣の間合いに入られた時点で魔法使いに勝ち目はない。



 不思議なもので本来は不利な魔法使いとの戦闘のほうがずっと楽だった。


 まあ、剣士同士での対決にも勝ったし、運だけの奴とは思われないだろう。


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